それ、どんなチケット?~売られたチケットは、50%オフでした~

ハル*

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考えても仕方のないこと


それからしばらくの間、俺は魔法やスキルの使い方を確かめるが如く、塔を出て森へ行き、使用用途を探した。

魚は上手く捌けなかったけど、切れ味だけはいいナイフを使った魚を焼いたり、森の奥で見つけた鉱石から調理器具をいくつか作ってみたり。

フライパン代わりにしては深いものが出来たので、ほぼ鍋の扱いだ。

透明な蓋があればと思いはしたが、さすがにそれを作ることは出来ず。

薄い木を組み合わせてみたり、一枚板を丸く加工できずに六角形の板になったのにツマミっぽいのをつけたり。

魔石ってのに火の属性の魔法を付与した物を使えば、元の世界のIHコンロっぽく使えそうだと気づいてからは、森の中で料理する回数も減っていった。

「さすがに電子レンジと同じ仕組みは難しいな」

便利なものには、たくさんの人々の知識と経験と知恵と他にもいろいろありそうだ。

きっとそう簡単には作れず、いくつもの失敗を積み重ねて長く愛されるレンジの仕組みが出来上がったんだろうな。

自分で何かを作ろうと思った時に、その仕組みを知っているかいないかでかなり差があった。

コンロっぽいものを作った時には、火加減なんて存在をすっかり忘れてて大変なことになったっけな。

強火で一気に火を通そうとして、まわりは真っ黒&中身は半生の焼き魚が出来上がった。

小さめの魔石を3つほどコンロの真ん中に填めこみ、強・中・弱の火加減で、何個の魔石を使うかという仕組みにした。

強火だと、三つとも使う仕組みだ。

どうやって火加減を調整しようかと俺が悩んでいたら、スノウがめんどくさそうにガーッと焼いちまえばいいのにと文句を言い。イイ感じに魚が焼けた時には、俺よりも喜んで美味そうに食っていた。

森にあるものを素材とし、家具に食器、服、薬草も見つけたので調剤のスキルがあったことで薬も作り。

魔法やスキルを使うたびに、とっくにレベルは∞のはずなのに、レベルが上がった時のような効果音が耳元で鳴る時がある。

四角い箱状の物が出て、某ゲームのコインの音がいつまでも鳴り続けたあの時の箱はというと、ここでの貨幣の一部だったよう。

といっても、クソ神が言っていた仕組みに絡んでくる方の貨幣。

俺がこの場所で生きているだけで支払われると言っていたもの。それを回収する方法があの時にはなく、後になってそれを発動できたものだから、貯まりに貯まっていたそれがいつまでもいつまでもチャリンチャリンと鳴っていたようだった。

それだけの額の回収が叶ったということだ。

(アレはマジで脳に響きそうな音だったな)

せめてボリューム調節が出来たらよかったのにと、今更思ったりする。

俺がここで生きていたら勝手に貯まっていくんだとしても、どの程度生きていたらあのアホみたいな金額まで貯まるのかを知りたいもんだ。

「しょう油が欲しいな、しょう油」

魚を食べながら、思わず愚痴が出た。

人間、何か一つ満たされると、やっぱりもっとと思うんだなと痛感。

「しょ、ゆ? なんだ、それ」

「あー…大豆って豆から作られた、透明な茶色の液体。調味料」

言って理解できるのか不明だが、わかる範囲内で説明をする。

「変態魔女んとこで、見かけたことねぇな」

「変態魔女におかしな借りは作らなくっていいからな」

「えー…でもよ、欲しいんだろ? しょゆ」

「しょう油、な。欲しいけど、なくても生きられる。だったらいらない。いつか自力でどうにかする」

なんて話をしながら、幾日も過ごし。

頭の端っこで、あと数日もしないうちにアザーがやって来そうだなと思いながら、窓から遠くを眺め。

「どうした? 森に行くのか?」

アザーが来る前に、この場所を出られるのなら出ようと心に決めていた。

行くとするならば、スノウを見送ってから。アザーとは会わせたくない。

スノウのスキルで、最近の俺は髪色を変えている。スノウが出かける直前に、スノウなら分かるだろう髪色に変えてもらう。

「何も起きず、バレないことを祈っているよ。スノウ」

「おう。まあ、間違って人の姿になっても、服はちゃんと着てる仕様にしてくれたからな。お前がさ。だから、なんとか逃げるわ。変態魔女によほどな魔法でも使われない限り、人の姿の時ならそれなりに対応できなくもない…と思ってるから」

本当に? という目でスノウを見れば、「ホントなのになー」と目尻を下げる。

「どっちにしろ、何かあっても俺はその場にいられないはずだから、どうにかして戻っておいでね」

「魔女んとこ行ったついでで、なんか美味そうなもんも手に入れてくる」

(買ってくるとか、じゃないんだな。相も変わらずで)

いい奴なんだか悪い奴なんだか、いまだにわからない。

じゃあなと手を振り、小さくなっていく彼を見送る。

同時に試せばいいんだろうけど、そうすると家財道具その他諸々も持って出ようと思っていたので、さすがにスノウにバレそうでやめた。

この場所から出られたなら、塔には戻るか戻らないか。

そこの結論もまだ出せずにいる。

前回のスノウは十日ほどだったと思う。今回もそれくらいと予想をして、試しに出られないかやってみて、出られたら往復で十日前後で戻ってみよう。

その時にスノウがいれば、塔にだけ縛られた毎日じゃなく、一緒にどこかに行かないかと聞いてみようか。

「スノウは元々自由だったんだし、他に行きたい場所があるとも思えないしな。退屈だからいかないって言ったりしてな」

彼が返してきそうな言葉を想像しては、胸がチクリと痛くなり。

「とにかく、決行日は明日にしよう。明日、この場所から外に出られないか…試そう」

自然と手がこぶしを握る。

手の中にはジワリと汗が浮かび、奥歯をギュッと噛んでいた。

あの日から今日まで、スノウと過ごしながら時には前に話があった通りで魔法を教わったりもし。

使えるカードは一枚でも多い方がいいに越したことはない。

∞マークが出ていようが、宝の持ち腐れにしてしまえば無駄なだけ。

自分だけで試すのならば、スノウに心配もかけなきゃ迷惑もかけずにすむ。

定期的に愚者の塔を見守っているアザーにだって、目の前で事を起こすよりはいいはずだ。

(そもそもで、アザーの顔を見たらどんな顔をしていいのかわからんしな)

本人の意図か、彼の主の意図か。何もわからないのならば、安易に決めつけたくはない。

彼のなら、なんで? と思う。雇い主のなら、その意図を知ってて? とも思う。

本当なら直接彼に聞きたいことがあるのに、「聞いて、それで?」とも思う俺がいる。

どっちに転がっても、きっと何一つスッキリなどしない。

そう思える気持ちがわずかにでもあるのなら、今はまだ顔を合わすべきじゃない。

(このままじゃ、ただ、感情的になっておしまいだ)

すっかりその姿が見えなくなったスノウへ、ボソッと「無事に戻れよ」と聞こえもしないのに呟き。

踵を返して、塔へと戻っていく。

スノウは出かけた。あの変態魔女のところへ。

「また独り、か」

言ってもどうしようもない現状を確かめるように呟き、足を速めた。

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