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いわゆる、他人事ってやつ 8 ♯ルート:Sf
しおりを挟むカルナークのそばで、さっき脳内に浮かんでいた表面張力で目いっぱいなグラスを思い出していた。
限界は近いと自覚していた時に、教会の人たちに呼び出されて更に負荷がかかって。
そこに外部魔力とかいうので、あたしのアレもコレもがあふれそうだって言われた瞬間、トプリと水が一滴そこにこぼれた気がした。
誰かを助けるためにこの場所に来て、こんなに苦しくてツラいのに、そこを経て浄化をするのか…。はぁ。
あたしが今後の召喚に関して考えていることを、ジークとアレックスは把握してくれた。
シファルと話をした内容でもあるから、あたしが一人で動くより情報も早いだろうし、人手が増えた分いわゆる分担作業が出来そう。
イコール、あたしだけに負担がかからないのは、実は大変ありがたい状態。
こんな状態になるまで一人で抱え込んで、結果、みんなを巻き込むことになった。
だったら、最初から頼っていたらよかったんだよね。
(誰かに甘えるとか愚痴るとか、得意じゃなかったもん)
ふぅ…とため息をこぼしつつ、これまでの自分を恥じる。
会って間もない相手を信用も信頼もすぐには無理だとしても、もうすこし言葉を交わそうとしたら相手を知ることだって出来たはず。
それから逃げた格好になったから、結果はコレだ。
元いた世界よりは頑張れているとしても、所詮相手が異性で、自分の中で苦手な同性じゃないからまだましだっただけの話。多分ね。
「陽向? ……話せるか?」
カルナークからの声かけに、「すこしなら」とだけ返す。
ベッドのそばで跪き、カルナークがあたしの手を取った。
「もしもの話。陽向の余分な魔力をどこかにやれる手立てが見つかったら、俺が陽向の魔力を操作して移行するってのをやってもいいか?」
どういうことかと首をかしげると、カルナークが説明を続けてくれた。
「魔力を移すか、もしくは…譲渡? かな。そういうことが可能だった場合な? キッカケは俺の身勝手な考えからだったけど、訓練にも有効だった俺の魔力が混ざっているひなの魔力ってものがあって。訓練の最中も、ひなの魔力を持ち上げたり体内で動かしたりしてきただろう? それを同じように使えないかと思って」
と、そこまで話してから、握っていた手を強く握りなおして。
「今のひなの体じゃ、その操作自体が負担がかかり過ぎになりそうで、逆に危険なことになるんじゃないかって俺は思ったんだ。もしも協力していいなら、俺以上の適任者はないって思った」
説明を受けつつ、その状態を想像していく。
まぁ、確かにそれが可能なら目の前の彼以上の適任者はいなさそうだ。
「俺だって、陽向の力に…なりたいんだ」
彼はいつも一生懸命だ。時々暑苦しいとか、すこしうるさいとか、こっちの都合を考えてくれないとかいろいろ思ったことはあったけど! ありはしたけど、本当に素直すぎただけなんだよね。
「そ…なった、ら」
息があがってきて、キツイや。
「お願い…する」
頭がジクジクしてきて、ツラい。
「わかった!」
これで万が一、この後に気を失った後にその手立てがあったら彼に任せられる。
「そうな、れば…い、な」
「そういうスキル持ちがいたらいいんだけどな。それかそういうアイテムが」
カルナークと意識もうろうとしつつも話をしていたら、意外な人物が怪訝な顔つきで部屋に入ってきた。
「……入るぞ」
「ナーヴ?」
カルナークが彼を呼ぶと、ナーヴくんが手のひらで制して「動くな」とだけ言う。
さっきカルナークと話をしたソファーの場所まで歩いていき、手ぶらだったはずの彼の場所からなにかガラスっぽい音がカチャカチャと音を立てている。
カルナークと視線を合わせて、ナーヴくんの動きを待つ。
動くなって言われていたし、元々あたしは彼に会えないことになっていたはずだから。シファル曰く、だけど。
しばらくその音がして、その後はソファーのあたりで淡く光るものがあって。
状況が見えないから、なんだろうと覗きに行きたくてソワソワする。
体調よくないくせに、おかしなところで野次馬みたいな精神が働きそうになるなんて。
そんな呑気さがあるならば、きっとあたしはまだ大丈夫だ。…多分。
「……カルナーク、来い」
ナーヴくんの声がして、カルナークが急いでソファーの方へと向かう。
何やら説明を受けているようだなと、胸の奥の重たさを吐き出すように息を吐く。
頭の痛さに顔をしかめていると、ジークとアレックスがやってきた。その後を追うようにシファルが入ってくる。
「シファルから話は聞いた。俺の鑑定でそこまでは把握しきれなかったから、後手になってごめんね。……辛そうだね、ひな」
「果物をすってもらってきた。…食えそうか? 陽向」
二人が来ただけで、頼りになるお兄ちゃんっぽい。安心感あるなぁ。
「あー…」
黙って口を開けると、アレックスが嬉しそうに器を手に近寄ってきた。
「どれどれ」
強面の顔がふにゃりと笑顔になってて、どこか楽しそう。
なんだろう、口に入ってきた果物。リンゴよりも梨っぽいな。
「…ふふ」
体中ツラすぎるのに、なんで笑えちゃってるのかな。あたし。
「もう一口いるか?」
「……あー」
「そっか。よし、食べろ」
「もご…っ」
「あ、入れ過ぎたか。すまない」
「んーん」
大丈夫だと、首を振って見せた。
「がさつだな、俺は」
そういいながら、口角についたままのすりおろした果物を拭ってくれた。
視線を左右に動かし、部屋の中を見渡す。
(久々の全員集合だ)
食事の時間ですら、ナーヴくんが一緒になったことはない。いつも別だった。
ささいなことなのに、なんだか嬉しくなる。
「…あー」
笑いながら口を再び開けると、アレックスが嬉しそうにまた食べさせてくれる。
「ふふ…」
笑っちゃう。
こんな状況なのに、笑えてしまう。
「美味し…」
笑ったまま、あたしは意識を失う。
意識を飛ばす瞬間、またナーヴくんに弱い聖女って思わせちゃうなって申し訳なく思った。
そして、浄化の前に迷惑かけちゃってるなとも思って、聞こえるはずがないのに彼に謝っていた。
ごめんね、って。
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