54 / 55
拾って 3
~白崎side~
ちーは一度眠りにつくと、ほとんど動かないことが多い。
僕はというと、寝返りが多いようで。
「鈴と一緒に寝ると、追い出されることばっか」
「じゃあ、一緒に寝なきゃいいのに」
「そこを何とか説き伏せて一緒に寝るのが俺の狙い」
「あのねぇ」
「でも、そう簡単に一緒に寝てくんないケドネー」
ちーのベッドのすぐ下に布団を敷き、僕がそこに寝ることが多いんだ。それは黒木先輩んちで寝た時の配置に似ててさ。
ここんちではベッドに、ちー。布団に僕。先輩との時は、ベッドに僕だったからな。
夜中に布団からはみ出したり転がり出たりする僕に、寝つきが遅いちーはいつもその光景を観察してから寝るとか言う。
「今日は僕の方が、ちーの観察だな」
病人だしね。ちゃんと見ていなきゃ、と思いつつ。
「お腹空いてきちゃったな」
ちーの寝息が繰り返し聞こえる部屋の中に、ぐりゅりゅるー…くきゅーーー…と僕の腹の虫の大合唱が響く。
元々ちーの親は遅くなるって言ってたもんな。彼の分だけでも食事の準備がされているのかもしれない。
「たしか、冷凍ものの麺類は多めにストックしてるって言ってたよね。…手をつけたらダメかな」
いまだ口角を上げたままで眠る彼を横目に、静かに立ち上がる。念のために、ポケットにスマホを入れてからね。
そっとそーっと物音も足音も立てないように、と歩く。
ドアも最小限の音だけで、閉めれば音がするかもと…開けっぱなしていく。
階段を降り、リビングへ。
「…あ。やっぱりあった」
彼の両親の仕事は遅く終わることが多く、あらかじめ食事の準備をしていく時がある。
ちーからと、おばさん本人から。何度か手伝っていきなさいなって、一緒にキッチンに立ったことがあって。
その時に小鳥遊家の親子関係や食事についてのあれやこれやを、なんでか憶えておきなさいなという前置きつきで聞かされたともいう。
その後に数回…何度か準備されているものを二人で分けて食べて、足りなきゃカップ麺を食べたりもしたっけな。
食べてる途中で帰宅したおばさんに、食べててくれりゃなんでもいいのよって言われた。
「タイミングよすぎ。…ふうん。冷凍うどんね。お出汁だけ作ってあるから、冷凍のまま煮ちゃってね…か。これなら、僕でも作ってあげられるかも」
冷凍庫を開けると、うどんだけでも思ったよりある。これなら僕一人がオマケで食べちゃっても、大丈夫かな?
「一旦、火にかけておこうかな。温めておけば、ちーが食べたいって言ったらすぐに出してあげられるよね」
元栓を開き、鍋を火にかけて…っと。それから、アレも使わせてもらおう。
勝手知ったるなんとやらで、牛乳と紅茶のティーバッグと小皿を準備して。
あとはお湯と…牛乳をレンチンしなきゃ。
久しぶりに作ったミルクティーは、思ってたよりも薄い感じだ。蒸らし時間間違えたっけ? なんて思いながら、あったかいうちにすすり飲む。
以前と同じ味で作れなかったことが、思いのほかショックだ。どうして…? と悔しくて寂しくて、残りをグイッと一気に半分まで飲む。体がポカポカしてきた。
程なくして、うどんのお出汁が湯気をたてはじめる。
キッチンで立ったまま、残りのミルクティーを飲みつつ鍋を見張るようにして突っ立っていると。
「り…ん」
ガラガラの声で僕を呼ぶ、ちーが現れた。
「な…っ、何やってんの? 大丈夫? 起きたんなら、メッセージ送ってくれたらいいのに」
ポケットからスマホを取り出して、ホラと見せる。
よほど慌てたのか、スマホを見せたら「あー…」とかすれた声で呟いてから、ダイニングテーブルのとこのイスに、ドカッと腰を下ろした。
「まだ体だるいんでしょ? よく階段から落っこちなかったね」
「だ、って…り、んが」
熱のせいで潤んでるのか、本当に泣きそうになってるのか。上目遣いで見てくる目が、鈍く光った。
「お腹は空いてないかい? ちー。今日は冷凍うどん煮てって、メモにあったよ。今、お出汁を温めてる最中なんだけど」
説明をしながら、指先をガス台の方へ向ける。
「食べられそう?」
「…ん」
「一人前? それとも半分くらい?」
冷蔵庫から水を出して、グラスに注ぐと彼の前に置いてやる。
「んー…、半分で、月見がいい」
「そっか、月見ね。じゃあ、一玉煮て、僕と半分こにしよう」
「…ん。冷凍庫、ネギある」
「じゃ、使わせてもらおうかな。ちーも入れるよね?」
「うん」
返事を聞いてからガス台の方へ戻ると、そろそろうどんを入れてもよさそうな頃合いだ。
冷凍庫からうどんとネギを出して、準備を進めていく。
「丼、あっちの食器棚…下の方」
ガラガラの声なのに、食器の位置を把握しきれていない僕のために説明してくれる。
(ほんと、バカなんだから)
そう思うけど、本音じゃない。いい意味での、バカだ。いつも優しいバカばっかり、僕に与えてくれる。
冷凍うどんを温めたお出汁にドブンと沈めると、クツクツいっていた鍋が一瞬静かになる。
「ちょっとだけ待ってて。カーティガン持ってくる」
「ん。…ごめん、鈴」
本当に申し訳なさそうに項垂れている彼の肩に手をポンとしてから、すこし汗で湿ってる頭を撫でて。
「なんで謝ってるのかわかんないんだけど?」
最後に頭を一度だけポンとして、二階へと駆けていく。
うどんが煮えてしまう前に、急いで戻ろう。
「のど、ガラガラだからさ。いつもみたいに一味入れちゃダメ。禁止ね」
「えー…汗かけるからいいじゃん」
「ダーメ。元・保健委員の言うことは聞きなさい。…いい?」
「ふわーい」
出来上がったうどんをすすりつつ、返事をよこす彼。うどんのあたたかさのせいか、熱のせいか。頬がほんのりピンクに染まっている。
「さっき触ったらさ、汗かいたみたいで髪が湿ってるよ? また着替えた方がいいんじゃない?」
「思った、それ。結構汗かいてるから、食べてまた寝たら熱下がる気がする」
ダルくなきゃ、シャワー浴びてきたら? って言いたいとこだけど、危なっかしい感じだから言わない。
「美味しいね、うどん」
「…ん」
お出汁の中でグチャグチャになって混ざっている玉子を、お出汁ごとゴクゴク飲んでいく彼の姿にホッとする。
「半分こだったけど、完食できてよかったね」
「ん。上行ったらさ、また着替えの準備頼んでもいいか?」
「いいよ、もちろんやるよ。やってもいいなら、さっきの分も合わせて洗濯でもしちゃう?」
「はは…っ。してほしいとこだけど、母親の洗濯物もあるだろうし。やめとくよ。そのかわりにさ」
そう言いかけて、グラスの水を一気に飲み干してからまだ赤い顔のままで笑顔で告げる。
「俺がいつか一人暮らしした時に、同じようなことで困ってたら来てくんない? 今度は洗濯もお願いできるし」
いつのことかまだ分からない、未来のお願いを。
「一人暮らしかー。なんか、想像つかないな。朝ごはん食べないでギリギリまで寝て、適当に買っておいた菓子パンでもくわえながら出てきそう」
「なんだ、それ。一人暮らしするようになったら、自炊するって。出来なきゃ、鈴に協力してもらう」
「そこまで料理らしい料理出来ないよ? 僕だって」
「なんか作ったことないの?」
不意にそう聞かれて思い出したのは、あの雨の日の親子丼。すき焼きのタレで作ってたっけ。
「まったく作ったことがない訳じゃないけど、まだ一人で最初から最後までは要領が悪い方かも」
「…ふぅん」
「ま、それはそれとしてさ。ちー」
姿勢悪く座ってたわけじゃないけど、ちょっとだけ座り直すようにして彼の方へと真っ直ぐに体を向けて。
「助けに行くから、ちゃんとね。一人暮らししてる頃にだって、一緒にいるんじゃない? 僕たちなら」
と、さっきされた質問への答えを返す。
「…あ」
答えを返すまでに別の会話に入ったから、返事がないって不安にさせてたかもしれない。
眉がキュッと寄って、口が歪んで。
「…ん」
子どもが泣くのを堪えているみたいな表情になった彼が、それだけ呟いてうつむいてしまった。
テーブルを挟んだままで腰を上げ、彼の方へと腕を伸ばしたら。
「僕が一人暮らしした時には、逆に助けに来てね?」
と言いながら、汗で湿ったままの彼の頭をそっと撫でる。
学校で見る彼の姿は、どっちかというと頼りになって、どこか大人びた顔をする時もあるのに。
「……そこは一緒に暮らそう、っていうもんじゃねえの? 鈴」
小さな小さな男の子みたいに見える時がある、僕と二人きり限定で。
「…ふふ。それも楽しそうだよね」
「そう思ってんなら、お前の隣…もしも空いたら予約しといてくれ」
小さな男の子のようでも、僕とちーの関係と、僕と先輩との関係を忘れてはいなくって。
(頭もいいし、性格もいいし。…傷つくって何度も言ってるのに、僕の一番の理解者であろうとしてくれちゃうし)
こんな彼に、僕は何が出来るだろう。
彼が伝えてくれる気持ちを同じようには返せないとしても、それでもそばにいたいと言い続けてくれる彼に。
「…………ちー。あのさ」
元々やれることが少ない僕に、出来ること。今日限定で、だけど。
(この選択肢がどう転ぶのかなんて未来はわからないけれど、こんな彼に…)
たとえ僕が今からやることが、驕ったことだと誰かに非難されてしまうとしても。
「今日、ちーが嫌じゃなきゃ…そばにいてもいい? そのために、先輩に一本だけメールするけどさ」
「え? だって…元々一位取ったらメールって話…してた……よな」
不思議そうに確かめてくる彼に、うんとうなずいてから告げた。
「今日は、ちーのことだけにする。先輩に送るはずのメールは、別日にって送るつもり。元々打ち上げのことがあるから、3日は猶予くれてたんだ。だからさ、今日はこのあと…ちーだけの僕でいよっかなーって」
あまり重くならないようにと、最後の言葉だけ口調を変える。
「だ……って」
今までだってきっと、何回も僕の背を押しては言いたいことやりたいことを飲みこんでくれたんだろ?
驕りでもなんでもなく、告白をして以降の彼の表情を見てきて知らないふりばっかじゃ…。
「僕は僕なりにちーを大事にしてきたつもり…なだけで、いっぱいいっぱい…傷つけてきた。今日は…がんばったで賞、あげなきゃ…でしょ?」
報われない恋がツラいのを、知らないわけじゃない。
それでも、ちーのツラさはちーにしかわからないから、知ったかぶりをするつもりもないんだ。
「今日は、ずっとこのままちーのそばにいる。早く元気になったら、早く僕とたくさん話せるよ? したいことがあったら、つきあうし。……って、やっぱ、そういうのって…本当は…」
酷いことを重ねてるような罪悪感もある。
本当はどうすれば正解なのか、わかんないんだ。
恋愛での好きの気持ちを返せられれば、一番正解だって知ってても出来ないから。
「…ッッ、ゲ」
「?」
言葉に詰まったような返事に、首をかしげる。
「ゲーム! ゲームがいい」
そう言いながら、また子どもっぽい顔つきになって、僕の手を掴んだ。
まるでしがみつくように、ギュッと。
僕の手をしっかり掴むその手に、僕の手を重ねて二度ほどトントンと上下させてから。
「元気にならなきゃ出来ないねー。いつもなら勝てる勝負も、今日は僕にも勝てるチャンスが回ってくる?」
わざと煽るように囁いてみれば。
「じょ、冗談だろ? 鈴に一度だって勝たせるもんかよ」
「そこまで弱くないよ、僕。っていうか、ゲームしないよって最初に言ってたのに…それ出してくる? ったく、もう」
「…よく言うぜ、めちゃくちゃ下手くそじゃん」
「はは…っ」
「ふ…、ははは。ケホケホッ」
咳きこんだ彼に、そっと水を差し出して。
「じゃ、とりあえず二階に戻って、着替えちゃおう。その後、洗い物しにここに戻るからさ。僕がいないと寝れないとか言わないでね?」
ここに来る前とは違って、今度はちゃんと僕の動きを伝えておく。不安にさせないように、と。
「ん。わかったよ、鈴」
新しく水を小さなペットボトルで一本持ち、一緒に二階へ上がる。
着替えをし、洗濯物を手に一階へ戻ってくる僕。
あらかじめ話してあったからか、着替えをすませた後にはすんなりベッドにもぐりこんだ彼。
キッチンで洗い物をすませてから、小さく数回深呼吸。
「先輩…。ちゃんと読んでくれるといいな」
ちーのためにと時間をもらいたくて、正直に状況をスマホに打ち込んでいく。
『――なので、本当は今日送るつもりだったんですけど、元々3日待つって言ってもらえていたので、期間内に。必ず送ります。だから、待っていてもらえませんか?』
と。
紙飛行機のマークをタップするのに、こんなにドキドキしたことないんじゃないかな。
「…ふーっっ」
願いながら、そっと人差し指でタップする。
(先輩が今日、あの後どんな風に過ごすか知らないから、今日中にでも返信が来ればいい。そうだといいな)
その期待をいい意味で裏切るように、短い返信がすぐさま届く。
『待ってる』
たった四文字だった。
その四文字が表示されたスマホを、胸にギュッと抱く。
(ごめん…ちー。こんなメッセージだけで、胸がざわつくんだ。先輩が送ってくれたってだけで…)
こんな時なのに、一瞬で気持ちが先輩へと引き戻されてしまう。
(ごめんなさい…。こんな僕を好きだって言ってくれてるのに…傷つけてばかりなのに…また新しい傷を増やすかもしれない選択をして…ごめん…ちー)
ちーが離れてくれないからじゃなく、今はきっと僕からも離れられなくなっている部分もあるような気がしてる。
保険をかけるとか、そういう狡いことじゃない…って自分に言い聞かせてきたけど、やっぱりズルいだけじゃないか。僕って奴は。
「もう二度と置いてかれるのが嫌だからって、どっかで思ってるんだ」
ポロ…っと涙がこぼれる。
泣いていいはずないのに、ちーに対して不誠実なのに。
「先輩にも、誠実じゃないかも…だよね。きっと」
ただ、誰かを好きになる。
それが恋の定義だったならよかったのに。
――ちーとかわした、あの話を思い出す。
もしも僕が捨て猫だったら、拾ってくれるかどうかの話。
彼は拾って、大事に飼ってくれるって答えた。
ちーのそばは、きっとずっと居心地がいいだろうな。可愛がってくれる。たくさん大好きって言ってくれそう。それから…。
「…んなこと想像したって、どうしようもないじゃん」
なんて独り言を呟いて、胸に抱きっぱなしだったスマホを見下ろす。
(……先輩なら?)
いつもなら、考えたことをすぐに伝えるなんて出来ない。どっちかといえば熟考しちゃう方だから。臆病でもあるしね。
なのに、どうしちゃったんだろう。
『一つだけ、質問です。僕が猫で、捨てられていたら…どうしますか? 先輩は。返信は次回の時にでも、聞かせてください』
後先考えず、ちーにした質問と同じことを問いかけた。
「拾って…くれない、よね。こんな…僕じゃ」
涙をこぶしでぬぐって、重たい胸の中を吐き出すように長く長く息を吐いた。
「…ズズ…ッ。はぁ、そろそろ二階に戻らなきゃな」
宙ぶらりんな僕なんて、そのうち行き場がなくなるんだろうななんて自虐めいたことを考えながら、階段を静かに上がっていく。
眠るちーを起こさないようにと、息をひそめながら。
ちーの部屋に戻ると、彼の呼吸音と雨の音だけが聞こえている。
「………ゲーム、か」
元気になったら、ゲームをやりたいと言っていた彼。
ただそれだけのことでも、いつも嬉しそうに遊んでいる。下手くそな僕に付き合っていたら、なかなかクリアー出来ないことも多いのにさ。
(今日のこの後は、ちーのための時間にするって自分で決めたんだろ?)
自分で自分のしている事がわからなくなってしまう。
(それでも…それでも……)
静かに音を立てないように、ちーが普段ゲーム機を片づけている棚へと近づいて。
(たしかこっちにつなげていたよな。それから…)
なんとなくで思い出しながら、ゲーム機をつなげて画面の音を消して。
キャラクターがレースするゲームを起動させ、コントローラーを握る。
(すこしは手ごたえがなきゃ…)
雨音と寝息に、コントローラーの操作音を混ぜて。
「ん…? あれ? どうしても8位より上になれないんだけど。…なんで?」
やってもやっても上位に入賞出来ない時間を、ただ過ごしていた。
あなたにおすすめの小説
処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる
猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。
しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。
当然そんな未来は回避したい。
原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。
さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……?
平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。
ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。