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アレだよ、アレ。…って、なんだっけ。
いろいろそわそわ
しおりを挟むカムイさんがホーンラビットの格好のまま、腕を組めていないのに組んだようにして胸を張り。
そのカムイさんの眼下には、跪いたライラがいてさ。
「え? ライラ?」
そりゃ驚くよね、自分が喚んだ精霊がこんな風に跪く姿なんて、そうそうないんだろうし。
どっちかっていうと、さっきの話じゃないけど誰かに傅くとかじゃなく自由さが売りみたいな彼女だから。
「カ、ムイ?」
俺も目の前で繰り広げられている謎の光景に、戸惑いを隠せない。
「二人とも、すこしの間…見守りましょう」
なのに、なぜかジャンさんだけは冷静で。
サリーくんと互いに視線を彷徨わせつつも、目が合った瞬間にうなずいて。
何が始まるのか一切わからないけど、カムイさんにまかせて見守ることにした。
「今でも、俺の喚びかけに応えるよな? アイツらは」
カムイさんがそう問いかけると、ライラは「大丈夫かと」とずっと頭を下げたままでそう返した。
「……じゃ、俺が召喚すっか。ライラ、簡易版でいいから召喚の準備しろ。アイツらの好きなものも準備しておいてやらねぇとな」
と言ったかと思うと、いきなり俺の方を向いて「酒あるか、酒」と聞いてくる。
「種類にこだわらないなら、多少はインベントリに入れてあるけど」
「じゃ、それをよこせ。アイツらの種族は、なんせ酒が好きでな」
俺が知っているノームって、小さいおっさんぽいけど、もうちょっと大きいのかな。もしかして。
ライラが描いている簡易版だという召喚陣らしいもののサイズが、意外と広いというか大きい。ライラは小さな体であっちこっち飛び回りながら、一生懸命描いている。
「供物置く場所、そっちに線ひいて流せ」
「はいっ」
カムイさんはそう命じながら、おもむろにアペルを取り出してかじりつく。
「…悪ぃけどよ、もうちょっとだけ待ってろな。コッチに喚んだら、さっきの話…通してやっから」
最後の芯の部分まで食べきったかと思ったら、今度は『人化』を唱えて人の姿になった。
その姿を見たライラが固まって、口に両手をあてて泣きだした。
「あー…。泣くな、いちいち。まだやること終わってねえだろ」
コクコクとうなずき、ライラは召喚陣を描き進めていった。
「これにて完了です。本当に簡易版でよろしかったのですか?」
ライラが何か不安があるのか、カムイさんに問いかけた。
「まだそこまで戻ってねえんだよ、いろいろ。それにアイツら相手なら、これで十分だ。…さて、やるぞ。ライラ。先にお前の血を捧げろ」
その言葉にギョッとした。
「「え? ちょ」」
サリーくんとほぼ同時に、手が出そうになった。ちょっと待って! と。
そこを腕を出して止めてきたのは、やっぱりジャンさん。笑みを浮かべているのが、妙に怖い。
「アペル、酒」
「あ、う…うん」
カムイさんに示された場所に、出せるだけお酒を出していく。
日本酒にワインを数本ずつと、ビールも数本。
「これくらいでも大丈夫かな」
「十分だろ」
と、カムイさんと話している間にライラが小さな指先から血をにじませて、召喚陣に赤いシミを作っていた。
「じゃ、お前はサリーんとこに戻ってろ。後は俺の仕事だ」
「…では」
ライラは軽く頭を下げてから、ふわっと飛んでサリーくんの肩へ乗っかった。
サリーくんは何も聞かず、言わず。ライラの頭を指先で、何度か撫でてあげていた。
「さーて…っと。久々だから、上手くいくかどうか……」
カムイさんが自前のナイフを手にして、指先に軽くあてる。するとプツッとかすかに音がして、カムイさんの指先に丸く血がにじみ出した。
さっきのサリーくんがやった方法じゃないんだな。精霊魔法っていうのとは何か違うのか、カムイさんだから…なのか。
ゴクッと生唾を飲み込み、その瞬間を待つ。
するとカムイさんが血を垂らしただろう場所が、髪色と似た光を帯び始めた。
最初は小さな毛玉みたいな光だったそれが、すこし大きくなって数も増えていく。
それが増えてきた頃合いに、カムイさんの口からさっきのサリーくんのように呪文か何かのような聞き取りにくい小さな声が聞こえだす。
なんて言ってるのかはわからないけれど、これまでの流れでいけばノームを召喚するための呪文や祝詞みたいなもんだよね。多分。
カムイさんは召喚陣に向かって手のひらを向けた状態でそれを呟いてて、言い終わったかのようなタイミングに舌でカンッと高めの音をたてた。
舌打ちとはすこし違うそれに反応して、召喚陣の文様がぶわっと光り出す。
『……来い、古き友人ども。俺の名はカムイ。お前らの主たる喚びかけに応えろ』
この言葉だけはハッキリと聞こえた。
(主? あるじ…あるじ? どういうことだ?)
そうしてもう一度、舌を鳴らすカムイさん。
その音に呼応したようなタイミングで、召喚陣にポンッという感じで小さなおじさんっぽいのが数人現れた。
(これがノーム!)
数えてみると5人ほどいるかな、長いひげを蓄えて耳がとがっているかなり高齢っぽい精霊? 妖精? どっちなんだ、これ。
「おーう、久しぶりだな。元気そうだな」
カムイさんがニヤリと意地悪そうに笑みを浮かべると、一番前にいたノームが盛大なため息をついた。
「あなた様は、ほんっ…とうに! 変わりませんなぁ。いきなり喚びつけるのはどうかと」
「なんだ、忙しかったのか」
「……酒盛りの最中でしたので、我らにとっては大事な時でした。…まあ、今に始まったことじゃありませんが、相当振りに声がかかったかと思えばこんな場所に…ですか」
よく見れば、小さな木で出来たコップを手にしてるのばかりだ。宴会の最中だったのか。
「まあ、そういうな。ホラ、あっちにも酒を用意している。異世界の酒だ。好きに飲んでもいいぞ」
「…酒だ! 見たことのない酒だ!」
「飲むぞ!」
「俺が先だ」
「なんだと?」
「俺の分も残してくれよー」
急に賑やかになったな、ここが。
「お前ら、飲みながらでいいから、ちょっと聞け」
カムイさんがおもむろに話題を振る。
「ここ、お前らの手のやつらが、どっかいじくってるか? 掘られたくないもんあったら言っとけ。言わなきゃ、好きに掘るぞ」
ザックリすぎる説明がカムイさんから彼らへと伝えられる。
「ちょ…っと! カムイ! そんなんじゃ状況とか何もわかんないよ? もうちょっとなんかないの?」
思わず止めに入った俺。
そんな俺に構うことなく、酒盛りをしはじめたノームの面々が「ならば…」とカムイさんへといくつかの素材の話をしていく。
その中で、まったく触れられたくない物と量を制限した上なら多少の採掘は可能な物にと交渉してくれるカムイさん。
わずかに聞こえていた最初の話だと、あげられた五種類の素材はまったく採掘不可だったのに。
思ったよりも折れてくれた感じだから、後ででも送れそうなら追加でお酒をあげたいなと思った。
酒盛りをしつつ、カムイさんと久々に会ったというノームの面々は、どんどん口が滑らかになっていく。
「今回は何回目ですか、カムイさま」
「あー…教えねえ」
「あの方は、カムイさまの従者ですか」
「あー…いや、違う。お前らには関係ねえから、黙っとけ」
「カムイさま、今回はいつ頃あちらにお戻りで」
「まだ先の話だ」
「我らの言い方で先の話ということは、少なく見積もっても100年は先の話という…」
「…はあ、いいから黙って飲め。で、さっきの話について、他の奴らにも周知しとけ。いいか? それと、あの場所はこっちで細工させてもらう。ただし、俺らだけが入れるようにはしておく。話をしたように、約束は守る。必要以上の量は採掘しない。……いいか? 飲んでても、必ず伝えろ」
「こちらは約束さえ守っていただければ、酒もいただきましたし、なんでもいいです。はっはっは。この茶色の瓶に入った透明な酒は、格別に美味いな」
ノームの一人が掲げたのは、日本酒だ。
「カムイ。もうちょっと出す? 日本酒を気に入ってくれたみたいだし。こっちのワガママも聞いてもらうことだし」
「アペルがいいなら、出してやってくれ」
「……あの、これ…よかったら追加で飲みませんか?」
「「「「「おおぉおおおお!!!」」」」」
すっごく喜んでくれてる。
「じゃ、好きに飲んで飲み終わったら帰れ。それか、それを持って帰れ」
カムイさんが彼らにそう話しかけると、全員が互いを見合ってからうなずいて「美味い酒は皆と分けあった方が美味い」と言って、召喚陣の方に自主的に乗っかって。
「では」
とだけ告げて、ご機嫌な様子でどこかの国の歌っぽいのを唄いながら消えてしまった。
「賑やかな人たちなんだね、ノームって」
俺が知ってる知識じゃ、寡黙な職人っぽかったのにな。あと、三角帽子かぶってたり。
「基本的に飲んでばかりだからな。ノームって言い方になっちゃあいるが、単なる山住まいの小人って扱いだからな。やたら長生きする」
「山住まいの小人」
「あとは、ただの酔っぱらいか」
「酔っぱらい」
カムイさんにかかると、そういう言い方になっちゃうのか。
「でも、精霊か妖精の類なんでしょ? すごい人たちなんじゃないの?」
とか言いながらも、内心はこう思っていた。
そのすごいだろう人たちを、かんたんに来いと喚びつけたカムイさんはもっとすごい人なんじゃ? って。
「まー、ただ長生きしてるだけの奴らだ。石や鍛冶関係での知識が豊富な」
「扱いひどくない? カムイ」
思わずツッコまずにはいられない。
「いーんだって。俺の昔馴染みなんだからよ」
そんな言い方で片付けちゃってもいいの?
「えー…って言ってそうな顔すんな、アペル。それとサリー。お前もな。…ジャンは、後からいろいろ言ってきそうだけどな」
なんてカムイさんが言うと、ジャンさんが「…ふふ」とまた微笑みを浮かべていた。…怖い。
「さーて、さっき採掘に関しては話をすませた。とっとと採掘して、あの穴の仕掛けをどうにかして帰るぞ。…いろいろ話すことあんだから」
「まあ、それはそうだけどさ」
ノームが来ていた時間があっという間すぎるのと、カムイさんの彼らへの扱いが軽すぎて消化しきれないや。
「じゃ、姿戻すぞ? 『人化解除』…っと。……よし、まずはコッチだ。アペル」
ホーンラビットの姿に戻ったカムイさんは、言葉通りにさっさと採掘をすませるべく最初の素材へ向かって跳ねていった。
その後ろを追って、順に掘っていく。
掘っていくたびに、マップの方に素材があった場所として登録していく。
掘ってほしくない、掘っても戻してほしいものが他の石と一緒に採掘してしまった場合。それもマッピングの方で赤く印をつけておく。
いわゆる攻略本みたいな感じだな。
「よっし。じゃあ、この辺で昼飯食って、一息ついたら帰るか」
「そうしようか。じゃあ、ご飯の準備するね。カムイはまた人化するの?」
「飯の時はな」
「わかったよ」
「おう」
作っておいたテーブルに、人数分のイス。
「ライラにも食事あげてもいいの? それとも食べるものは、違う?」
準備をしながらサリーくんに聞くと、大丈夫だという。
「サリとカムイさまがいいって言うなら、一緒に食べてもいいわ」
さっきのことがあったからか、カムイのことをさま付けで呼ぶライラ。ライラから話を聞きたいところではあるけど、その前に本人からの話が最優先だろうな。
カムイから話を聞いた後に、また会うような機会が訪れたらライラから何か話を聞くことが出来たらとは思うけど。
「アペルが持ってくる飯は美味いもんしかねえぞ。アッチに戻った時の話のネタに、食ってけ」
ライラの顔がパァッと明るくなる。すごく嬉しそう。
今日持ってきた、あのベタなおにぎりランチだけど……。
「可愛い女の子に喜んでもらえるメニューじゃない気がしてきた」
唐揚げやタコさんウインナーは、まだイケそうな気がするけど。
「このサイズで、結構食いしん坊なんだよねー。ライラって」
ポソッとサリーくんがライラのことを言うと、ポカポカって感じでライラに叩かれ出した。サリーくん…女の子のそういう話はしない方がいいのに。
「ごめん…いたっ、ごめんって、ライラ。…でも、いつも美味しそうに食べるライラの顔、可愛いんだもん。…ほーら、そんな顔してないでさ。一緒に食べよ? いつもみたいに、あーんする?」
(…あ。また、謎のサリーくんだ。なんだろう、俺が知ってるサリーくんじゃない感じで、モヤッとする)
「も、もうっ! 本当に怒ってるんだからね? あーんは…しても、いいわよ? サリがしたかったらね! あたしはどっちでもいいんだから」
「そっかぁ。じゃあ、どれからにしようかな。あ、甘い玉子焼きの方にしようかな。…はい、あーんして? ライラ」
「あ…あーん」
(なんだろう。すごく食事しにくいような気がしなくもない)
カップルシートに割り込んでいる気になる。うーん。
というか今更だけど、ライラのことを召喚しっぱなしにしてるけど、二人の体には負担ってないのかな。大丈夫かな。
精霊魔法ってものの仕組みとか、何一つ知識としてわかってないから。
(心配だな、二人とも)
仲良さげに弁当を食べ進める二人を横目に、何も聞けないまま自分もウインナーを口に放り込んだ。
「ジャン。唐揚げ、どっちの方が口にあいました?」
ふと視線を感じた先にいたジャンさんに、弁当のことで話を振ってみる。
「思っていたよりも、塩唐揚げがいい感じですね。もうちょっと味気ないかと思っていたんですが」
「そ? よかったー」
カムイさんも俺の横でバクバクと、結構な勢いで食べている。あの姿で召喚したりしたから、さすがに消費が早かったのかもな。
「カムイ。コッチのも食べていいよ」
「んー? あ、ああ。思ったよりも腹減ってたみたいだな。食っても食っても、足りねえ」
「じゃあ、採掘も終わったことだし、持ってきた弁当食べ終わったら帰る? 向こうに行けば、もっと量があって腹に溜まるもの出せると思うよ」
一応泊まりも視野に入れて準備はしてあったけど、今回の状況や話の流れでいけばその方がよさそう。
「ジャンは、どう思う?」
でも、念のためでみんなの意見も聞いて…っと。
「いいんじゃないですかねー。アペルが結界を張りながら採掘しているのはわかるんですけど、なんだかんだ言いながらも思ったよりも埃っぽくて。あのお風呂に入りたくなってます」
そう言われてみれば、たしかに埃っぽいかも。
「風呂か。…うん、たしかに俺も入りたい」
「またお風呂で美味しいお酒も飲みたいですね。……今日は、話の方が優先なので、のんびり…はまた後日としても」
ジャンさんからも改めて言われてみて、やっぱりそうだよねと思う。
あいまいで、ずっと心に引っかかるものを抱えたままでなんて過ごせないや。
「ササッとシャワー浴びて、話をして。その後にでものんびりお湯に浸かればいいですね」
「…ええ、そうしましょう。…あ、たまに背中を流してあげましょうか。どうにも早い者勝ちに勝てないもので、アペルの背中を流したことがないんですよ」
「あれ? そうだっけ? じゃ、頼もうかな」
「もちろんです。じゃあ、逆に流してもらってもいいです?」
「え? 何言ってんの? もちろんいいに決まってるよ」
家に帰ってからの約束をいくつかして、一緒に弁当の残りに口をつけて。
「じゃあ、予定よりは早いけど…帰ろうか」
帰る準備を始める俺。
「あ、それじゃライラもこの辺で帰しちゃいますね」
召喚した相手だという感じのない、なんというか軽い感じで帰しちゃいますとかいうサリーくん。
「いつもよりは、一緒にいられたね? ライラ。なるべく早めにまた喚ぶから。今日は…帰ろうか、ね?」
話し方自体もなんだけど、声のトーンがいつもよりも甘いんだよね。声優好きっぽいけど、声のトーンをあえて変える練習でもしてたのかな? ってくらいに、いつもとは違うや。
それとも単に、ライラと一緒の時だけはこの声のみ? 二人の状況を観察していたけど、よくわかんない。
「…はあ。帰りたくないけど…今日はここで帰らなきゃマズそうだものね。…わかった、帰るわ。また今度早めに召喚してくれるでしょ?」
「もちろん」
「待ってるから」
「わかったよ。…じゃあ、お土産に俺の魔力…すこしだけ持ってって?」
と言ったかと思えば、召喚をする時に見えた光と同じ色の物を指先にのせてから、彼女の胸元あたりに押し出した。
それを彼女が両腕で抱きかかえるようにしてから、顔を何度かこすりつけてニコニコしていた。
「またね、サリ。……それでは、失礼させていただきます。カムイさま」
サリーくんとカムイさんにだけ挨拶をして、一瞬で消えていなくなったライラ。
「さあ…て、帰りますか」
ググググーッとスローモーションっぽく、ゆっくりと背筋を伸ばすサリーくん。
「体は大丈夫? あんなに長いこと召喚してても、体に負担はない? 俺、精霊魔法について知識ないからさ。心配してたんだ」
駆け寄って服を握って軽く引っ張った。すると、サリーくんが欠伸をして浮かんだ涙をこぶしで擦りながら、大丈夫と言った。
「正直助かったけど、無理も無茶もしないでね? あと、精霊魔法について…そのうち教えてくれる? 何も知らないで使ってもらうの、嫌だ」
「情報の共有ね」
サリーくんがそう口にしてきたけど、それだけじゃない。
俺はゆるく首を振って、こう言った。
「ううん。だけじゃなく、サリーのこと…もっと知りたいから」
さっき提案があったけど、本当に俺たちはそれぞれのことについて知らなさすぎる。気持ち一つだけで仲間になったのは、決して悪いことじゃないけど。それでも、やっぱりそれだけじゃダメだ。
「お互いを知らなきゃ、互いに支えたい時も甘えたい時も、動き出していいのかわかんないって…ダメな気がして」
俺よりも背の高いサリーくんを真っ直ぐ見上げて、正直に気持ちを打ち明ける。
サリーくんはそんな俺から目をそらすことなく、ジーッと見つめてから大きな口を開けてプハッと笑う。
「ん。わかったっす。アペルに関してだけ情報がガバガバ過ぎなんで、俺の方の情報もガバガバとまで行かなくても知ってもらうんでね。…知ったら、もっと俺にも甘えてくれるようになったらいいなー」
なんてサリーくんが言うんだけど、俺は正直なところ「何言ってんの?」なんだ。
「本人的には、かなり甘えてるのになー」
ってこと。
「ふ…クックックッ…、アレで?」
「???? うん、アレで」
よくわからないままに、言葉を繰り返した俺に。
「まだまだ足りませんよ? アペルは」
ジャンさんの手が肩に乗っかって、ポンポンと数回叩かれた。
「なんか俺が残念な人っぽく思えてきたんだけど、気のせい?」
とか言い返せば「どうでしょう」とごまかすジャンさん。
俺たちのその様子を黙って見ていたカムイさんが、「はいはい」と手を叩く。
「さ。話はしまいにして、後片付けすませたら帰んぞ」
「はい」
「了解っす」
「…うー」
「…おい、アペル。なんだ、うー…って」
「何でもないよ」
「なんでもなくないだろ」
「出ちゃっただけだから、気にしないでよ」
「気になんだよ」
納得いかない気持ちが、変な声で出ちゃっただけなんだから、そこを拾わないでほしい。むしろスルーしていいのに。
「ほら、帰るんでしょ? はいはい…後片付け、後片付け…っと」
開けた穴の後の諸々の確認と、出入りしてきた時の穴の片付けもして…っと。
「今度は別の場所に、普通に移動手段使って旅行らしくどこか行こうね」
洞窟の外に出てから、いつかの約束をして。
「じゃあ、帰るよー」
俺たちの家へ、転移した。
この後は、どれくらいの時間がかかるかわからないけれど、みんなを知るために時間を使うんだ。
(互いに知るために時間を使うなんて、元の世界じゃ出来ずに終わってしまったからな)
今までとは違う時間の使い方に、すこしだけそわそわしている自分をくすぐったく思いはじめていた。
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