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1日の始まり。
しおりを挟む私は佐南 ゆいです。この名前に文句はありません。だって苗字も恥ずかしくないですし、名前はひらがなで可愛らしいじゃないですか。
どうして、そんなに私の名前を否定するんですか?私は気に入ってるのでいいですけど。貴方はどこの誰なんですか、あんまりしつこいと大人にいいますから。
私の目の前には知らない男の人。大柄とも言えない成人男性。ずーっと私の名前にいちゃもんつけてくるんです。一体この人はなんなんでしょうか。
近所の公園のベンチに座り、静かに私は目の前に立っているこの人の話を聞いていました。
でも、もう無理です。
「飽きちゃいました。」
目を瞑って集中すると、すーっと意識が戻ってきます。離脱成功です。
今日の夢はつまらなくて最悪でした。
枕元を手探りで見つけたスマホで時間を確認すると、5時55分。準備をするのには少し早い。でも早く起きたから、テレビをつけて情報番組を見よう。そんな気分です。
テレビでは夜中に起きた事件を報道しています。殺人事件だそうです。人通りはあまり無い道で、若い女性が刺されていた、という内容です。彼女は、夜の仕事をしている人だそうで。そんな時間に出歩くのは致し方ないですね。仕事帰りに刺された、そんなところですかね。可哀想というか、なんとも言えません。
夜に出歩かないで正解です。夢の中で自分の好きなことをした方がよっぽどいいじゃないですか。殺されたって、夢ですから。目覚めれば何も変わらない朝が来ます。
わざわざ危険に身をていして、自分の快楽を得なくてもいいでしょう。
でもきっと、彼女なりの理由があるんでしょうね。ただ快楽を求める他にも。
ただ、そんなことを思っていると、あっという間に6時30分を過ぎました。
「そろそろ支度でもしますか…」
重たい腰を上げて、洗面所に向かう。鏡を見ると、目の下にクマはなく、肌の調子が良いわけでもなく、平凡な自分の顔が写っている。眉毛はキリッとしてて、目は普通の大きさだろう。まったく人に羨まれるような顔ではない。可愛い顔だったら、どれくらい今の人生と違ったのか、検証してみたい。
蛇口から冷たい水が流れ出す。髪を邪魔にならないように結って、パシャパシャと顔を洗う。夏だったら気持ちいいが、冬だとさすがにキツイ。
朝ごはんどうしようか。
適当に顔を洗って朝ごはんのことを考える。母は仕事で滅多に家に帰ってこない。だから、朝ごはんは自分でどうにかしなければならない。朝ごはんに限らず、弁当もだし晩ごはんもであるが、既に慣れてしまって、メニューがマンネリ化してしまったのが現状である。
「卵焼きでいっか」
卵焼きをとりあえず作ろうと思います。昨日の20時から放送されていたドラマに出ていたイケメンが卵焼きを作っていました。イケメンが作った卵焼きはドノーマルな作り方で、特別美味しくなる要素はないです、が、卵焼きを食べたヒロインの女の子が幸せな顔で食べてたんです。それを思い出しました。きっとイケメンが作ったから美味しいんですよ。
「あ、焦げすぎ?」
ちょっと黒すぎたかな?まぁ食べるの自分だし。香ばしくなったと思えばいいでしょう。
自分のことは自分でしますし、それには誰も文句はいいません。責任は全て自分にあります。そうやって生きれば、辛くないです。責めるのは自分一人で充分なんです。
失敗した卵焼きをお弁当箱に詰めて、あとは冷凍食品を詰めてと、余った卵焼きで朝ごはんにしよう。
白いご飯と、卵焼き…味噌汁はインスタントでいっか。お湯を沸かして、アサリのインスタント。いい感じの朝ごはんじゃないでしょうか。
特に映ない朝ごはんだけど、私にとっては色のついた朝ごはんです。
「いただきます。」
私しかいないこの家で、食べ物に感謝し、そして自分の勤めを果たす。今日はどんな出来事があるだろうか、楽しみだ。
「ごちそうさまでした。」
今日の私の活力。食器を洗って自分の準備もしよう。もう一度洗面所に戻る。鏡を見て、つぶやく。
「どうしよもないよねw」
歯を磨いて、顔はもう一度洗っておこう。
スッキリとした頭で部屋に戻り、制服に着替える。髪をとかして、一つに結う。軽く制服を払い準備万端だ。
今日も素敵な1日になりますように。
ローファーを履いて、玄関のドアノブに手をかける。
「いってきます。」
別に誰もいないけど、一応言っておく。
ドアの向こうは快晴。いい天気である。
きっといい日だ。
ガチャンとドアを閉める。鍵をかけて。
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