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第3話 クソったれな神
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「君が今回の子だね。ようこそ、僕のところに」
状況を飲み込む間もなく、何処からともなく声が聞こえてきた。前から聞こえるようで後ろからも聞こえるその声の主を探すために周囲を見回すが青空と雲しか視界には映らない。
「こっちだよ、こっち」
今度は確かに声のした方を向く。すると隆起した雲が人の形を取り、白一色から色を付けていく。数秒と立たない内に煌びやかな銀髪に緑色に輝く眼、雲と同系色をベースとした衣服を着つつも後光が差したかのように光に包まれたヒトがそこにあらわれた。
「あなたが……神様ですか?」
「いかにも。僕が神さ。もっと崇めてくれても良いんだよ? 寄付とか信仰とか……ま、10歳の子どもには難しいか」
「は、はぁ」
「まぁいいや。さーて、君に合いそうな魔法を探してあげるからねー」
そう言って神様は振り向き雲に実った色鮮やかな木の実のようなモノを選別し始める。言葉通りならアレが魔法の元的なモノなんだろう。良く見れば周囲にも白色透明の木の実のようなものが雲にぶらさがっている。まるでアダムとイブの禁断の果実みたいだな。
「そうだ神様、一つ質問してもよろしいですか?」
自分が自分でないような感覚、知らない単語が次々と浮かんでくる状況。記憶があやふやである今の自分の状態を解決する方法を知っているかもしれない。
「んー、何だい? あ、そこら辺の白い木のみには触らないでよ。目茶目茶情報詰まってて、君たちには毒だから」
「こわ……わかりました、触れないでおきます。それで質問なんですけど、何か自分が自分でないような……認識のズレや知らない単語が浮かんでくる状況に今自分がいるんです。神様は解決法をご存じありませんか?」
「……うーん。もしかして記憶もあやふやな感じなのかな?」
「そうです! やはりこの状態をご存じなんですね?」
「うん、ある程度は知ってるとも。……今度のは失敗か」
失敗? 何を言ってるんだ?
そう聞こうとした時には既に足は雲の上から離れ、身体は宙に浮いていた。
「悪いんだけどこのまま落ちぶれてくれ。お前みたいなのは邪魔なんだ」
神が手を下ろすと、身体は浮遊を止め地の底へと落ちていく。
「あーあ、時間の無駄だった。また次を探さないとなー」
「ちょ、待って‼‼」
落ち行く視界には宙に浮かぶ雲しか捉えれらず、掴もうとしても空を切るばかり。それでも無我夢中で振り回した腕が何かを掴む。
その何かを確認する前に意識は途絶えた。
「ッ‼」
暗黒を落ちる恐怖から現実世界へと意識が浮上し、目が開いた。正直そのまま死んでしまうかもと考えていたが、流石に大丈夫だったらしい。
「お疲れコート」
「神様に粗相はしなかった?」
「た、多分……」
神に愛想つかされ、突き落とされた。なんて言えるわけもなく両親に引きつった笑いを返す。
愛想つかすと言っても元々愛されてすらないだろうが。
「お疲れ様でした。ではこちらの水晶に手を当ててください」
「これでどんな魔法をいただいたかわかりますので。えーとコート様は……む?」
「どうかしましたか神官様。コートの魔法になにか?」
「い、いえ。水晶の調子が悪いようでして……もう一度お願いできますかな、コート様」
「わかりました」
神官の指示の元、再度水晶に手をかざす。神官に焦りの表情が見えるのは自分の気のせいだろうか。
もしかしたら自分と神との邂逅の一部始終を知っているのかも。神官のスタンスとしては難しいのかもしれないが、まぁ如何に対応が最悪だったからとは言え魔法を授与しないなんてことはないだろう。せいぜいグレードが低い魔法の授与、曲がりなりにも神ならばそんな神の風上にもおけないことはしないだろうさ。
「……」
「……あのー、どんな魔法なんでしょう。ランクとかグレードの高い魔法は期待していないので、気にせず言ってもらって大丈夫です」
「……そうですか。わかりました。では落ち着いてお聞きください。コート様、貴方の魔法は──────『ありません』。一生に一度のこの儀にて、何も授与されなかったのです」
そんなことはなかった。寛容な方とかいう触れ込みが嘘のようである。
料理の火起こし程度の生活を補助する魔法位は貰えるものだと思っていたものだから、そこそこショックだ。まぁ、ないものねだりしても仕方ない。
大人しく帰ろうとする自分とは対照的に、神官に異議申し立てを行ったのは儀を行った本人ではない両親だった。
「まさか! コートが魔法を授与されないなんてわけがない!」
「神官様‼ もう一度確認してくださいませ! コートが魔法無しだなんて……そんな」
「既に2度確認いたしました。そして今もう一度。それでも結果は変わりません」
何か周りの雰囲気が重い。お通夜にでも来たかのような暗さだ。
どうやら自分が思っていた以上に深刻な状況らしい。これもまた認識のズレなのだろうか。焦り、声を荒げる両親の姿を見てどこからともなく不安が押し寄せてくる。
「大丈夫だよお父様、お母様! 魔法の適性がなくったって仕事はできるよ!」
「コート……」
何でこんなに必死になってるのかはわからない。身体の震えと両親と思しき2人の血の退いた表情が不安を加速させる。
「一先ずお帰りを。ご家族でお話することがたくさんあるでしょう」
「……そうだな」
「……帰りましょうか」
話す話題があるからと帰らされた神託の儀。
屋敷に3人で帰ったこの日から、両親と話す機会は与えられなかった。
状況を飲み込む間もなく、何処からともなく声が聞こえてきた。前から聞こえるようで後ろからも聞こえるその声の主を探すために周囲を見回すが青空と雲しか視界には映らない。
「こっちだよ、こっち」
今度は確かに声のした方を向く。すると隆起した雲が人の形を取り、白一色から色を付けていく。数秒と立たない内に煌びやかな銀髪に緑色に輝く眼、雲と同系色をベースとした衣服を着つつも後光が差したかのように光に包まれたヒトがそこにあらわれた。
「あなたが……神様ですか?」
「いかにも。僕が神さ。もっと崇めてくれても良いんだよ? 寄付とか信仰とか……ま、10歳の子どもには難しいか」
「は、はぁ」
「まぁいいや。さーて、君に合いそうな魔法を探してあげるからねー」
そう言って神様は振り向き雲に実った色鮮やかな木の実のようなモノを選別し始める。言葉通りならアレが魔法の元的なモノなんだろう。良く見れば周囲にも白色透明の木の実のようなものが雲にぶらさがっている。まるでアダムとイブの禁断の果実みたいだな。
「そうだ神様、一つ質問してもよろしいですか?」
自分が自分でないような感覚、知らない単語が次々と浮かんでくる状況。記憶があやふやである今の自分の状態を解決する方法を知っているかもしれない。
「んー、何だい? あ、そこら辺の白い木のみには触らないでよ。目茶目茶情報詰まってて、君たちには毒だから」
「こわ……わかりました、触れないでおきます。それで質問なんですけど、何か自分が自分でないような……認識のズレや知らない単語が浮かんでくる状況に今自分がいるんです。神様は解決法をご存じありませんか?」
「……うーん。もしかして記憶もあやふやな感じなのかな?」
「そうです! やはりこの状態をご存じなんですね?」
「うん、ある程度は知ってるとも。……今度のは失敗か」
失敗? 何を言ってるんだ?
そう聞こうとした時には既に足は雲の上から離れ、身体は宙に浮いていた。
「悪いんだけどこのまま落ちぶれてくれ。お前みたいなのは邪魔なんだ」
神が手を下ろすと、身体は浮遊を止め地の底へと落ちていく。
「あーあ、時間の無駄だった。また次を探さないとなー」
「ちょ、待って‼‼」
落ち行く視界には宙に浮かぶ雲しか捉えれらず、掴もうとしても空を切るばかり。それでも無我夢中で振り回した腕が何かを掴む。
その何かを確認する前に意識は途絶えた。
「ッ‼」
暗黒を落ちる恐怖から現実世界へと意識が浮上し、目が開いた。正直そのまま死んでしまうかもと考えていたが、流石に大丈夫だったらしい。
「お疲れコート」
「神様に粗相はしなかった?」
「た、多分……」
神に愛想つかされ、突き落とされた。なんて言えるわけもなく両親に引きつった笑いを返す。
愛想つかすと言っても元々愛されてすらないだろうが。
「お疲れ様でした。ではこちらの水晶に手を当ててください」
「これでどんな魔法をいただいたかわかりますので。えーとコート様は……む?」
「どうかしましたか神官様。コートの魔法になにか?」
「い、いえ。水晶の調子が悪いようでして……もう一度お願いできますかな、コート様」
「わかりました」
神官の指示の元、再度水晶に手をかざす。神官に焦りの表情が見えるのは自分の気のせいだろうか。
もしかしたら自分と神との邂逅の一部始終を知っているのかも。神官のスタンスとしては難しいのかもしれないが、まぁ如何に対応が最悪だったからとは言え魔法を授与しないなんてことはないだろう。せいぜいグレードが低い魔法の授与、曲がりなりにも神ならばそんな神の風上にもおけないことはしないだろうさ。
「……」
「……あのー、どんな魔法なんでしょう。ランクとかグレードの高い魔法は期待していないので、気にせず言ってもらって大丈夫です」
「……そうですか。わかりました。では落ち着いてお聞きください。コート様、貴方の魔法は──────『ありません』。一生に一度のこの儀にて、何も授与されなかったのです」
そんなことはなかった。寛容な方とかいう触れ込みが嘘のようである。
料理の火起こし程度の生活を補助する魔法位は貰えるものだと思っていたものだから、そこそこショックだ。まぁ、ないものねだりしても仕方ない。
大人しく帰ろうとする自分とは対照的に、神官に異議申し立てを行ったのは儀を行った本人ではない両親だった。
「まさか! コートが魔法を授与されないなんてわけがない!」
「神官様‼ もう一度確認してくださいませ! コートが魔法無しだなんて……そんな」
「既に2度確認いたしました。そして今もう一度。それでも結果は変わりません」
何か周りの雰囲気が重い。お通夜にでも来たかのような暗さだ。
どうやら自分が思っていた以上に深刻な状況らしい。これもまた認識のズレなのだろうか。焦り、声を荒げる両親の姿を見てどこからともなく不安が押し寄せてくる。
「大丈夫だよお父様、お母様! 魔法の適性がなくったって仕事はできるよ!」
「コート……」
何でこんなに必死になってるのかはわからない。身体の震えと両親と思しき2人の血の退いた表情が不安を加速させる。
「一先ずお帰りを。ご家族でお話することがたくさんあるでしょう」
「……そうだな」
「……帰りましょうか」
話す話題があるからと帰らされた神託の儀。
屋敷に3人で帰ったこの日から、両親と話す機会は与えられなかった。
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