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第4話 現状確認
しおりを挟む「……もう朝か。この部屋じゃ時間もわからないや」
眠い瞼を擦り、硬いベッドから起き上がる。時計などはなく、明かり窓から入ってくる光だけが時の経過を知らせてくれていた。
あれから1夜明けた。
昨日とは明白に変わったことが2つある。
1つが自分一人だけ隔離されたことだ。
屋敷の端も端、薄暗く客室とも言い難い埃を被ったこの部屋に。
あの後両親が屋敷の上階に向かい、そのままついていこうとしたところを使い者に流されるままにこの部屋に入れられた。ベッドや本棚をはじめとした家具はあるものの、昨日いた部屋の水準より数段低いように感じる。所々塗装剥げてるし。
なんでこんなことになったのか。魔法が得られなかった為か、それとも神様との応対がまずかったのか。そのどちらもな気がするが、確証には至っていない。今確かなのはこの部屋、正確にはこの部屋周辺に行動が制限されたということだ。
ただ悲観することばかりでもない。
それがもう1つ──────記憶が戻ったこと。正確には正常になったことだ。
その為か混乱しそうな現状にも冷静に対応できている。
日本で平凡な生活を送り、ある日平凡な病で倒れる。
そうしてこの屋敷の3男として新たな生を受けた。ただ不可思議なのは転生前の記憶は昨日まで持ち合わせていなかったという点だ。
ズレが生じていたのも、転生前の記憶を断片的に持っていた為だろう。何故急に記憶が戻ったのかは定かではないが……一先ずズレの部分が解消されたことは好ましい。
「寝てばかりもつまらないし、本でも読もうかな」
ベッドから飛び降りると床に転がる本を手に取る。タイトルからして魔法の本だろうか。
当然日本語で書いてあるわけじゃないが、自然に「日本語に変換される」ため意味が分かるようだ。
所謂転生特典という奴だろうか。神に嫌われても最低保証はあるらしい。
この本を始め本棚にびっしりと並べられている本の数がこの部屋の唯一の評価ポイントと言える。
部屋にある本を読破することがしばらくの楽しみであり、すべきことになるだろう。
本を持ってベッドに戻ろうとしてあることに気付く。足の踏み場が無いということに。
本棚どころではない。部屋に入れられた時には既に光は差し込まなくなっていた為気付かなかったが、床のほとんどが本や書物で見えなくなっており、ベッドに戻る道さえなかった。
「読むより先に掃除しようかな……」
こうして隔離部屋での記念すべき1日目は掃除で終わったのだった。
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