人間の俺は狼に抱かれている。

レイエンダ

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第一章 出会い

どうなる!?俺!

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「ご馳走様でした」


 一足先に食事を終えた俺は手を合せそう口にする。
 少し遅れて完食した二人は綺麗になった皿を一枚ずつテーブルの上に重ねて置き、フェリチタの元へと向かった。


「美味かった。礼を言う」
「お母さんありがとな!また作りに来てー」


 座っている椅子の両側からそれぞれ顔を覗かせ、頰や腕に自分の顔を擦り付けながら言う。
 俺へのお礼もそうだが、基本的に感謝の気持ちを言葉だけでなく行動でも表す性分なのかもしれない。
 硬直しながらも「こちらこそありがとうございます」と返していたフェリチタを見ながらそう思った。


「お二方は今後どうされるんですか?怪我も治っていますし、やはり住処すみかへ?」


 食器の片付けを終えたフェリチタが再びこちらに戻ってきて、椅子に腰掛けてから話を切り出す。
 テーブルの近くで伏せをしていた二人は体を起こし、互いに顔を見合わせてから向き直る。


「もし迷惑でなければ、しばらく此処に住まわせてもらえないだろうか?」


 直ぐに住処へと戻るのだろうという俺の予想に反し、オネストは俺達を見て申し訳なさそうに言った。


「俺達は今、個人的に興味があって各国を見て回っている最中でな。この国にも興味がある」

「この国の金は持ってないから宿代とかは払えねーけど、食費とか負担をかけないように森とかで食料調達はできるし……ダメか?」


 ここの家主である俺に訴えかけてくる二人。
 自分達の魅力がわかっているのか、つぶらな瞳でこれでもかと顔を近付けてくる。


「もちろんです!気の済むまでどうぞ!」


 詰め寄られている俺よりも先に、目をハートにしたフェリチタが返事をする。
 それぞれ「ありがとう」と口にする中、家主である俺は一人「……はぁ」とため息をつく。


「今度は実家の方にも遊びに来てくださいね!それではまた!」


 今日は近所の子供の面倒を見ると言っていたフェリチタは二人を存分に味わってから(撫でてから)帰っていった。


「ネロ。俺達がいては迷惑か?」
「お礼とか言って抱いたの怒ってる?嫌だった?」


 玄関で見送った後、慌てた様子で俺の真正面へと回り込んで腰を下ろす。
 どちらも両耳が垂れ下がっていて、生前実家で飼っていた愛犬達が悪さをして怒られた後の姿と重なる。
 急にどうしたのだと見つめたまま瞬きをしているとタキトゥスが「ため息、ついてたから」と恐る恐る口にし、オネストは静かに頷いた。

 目の前にいるのは本当に神獣なのか?と疑いそうになる。
 俺の想像していた神獣は高貴な存在で、俺のような普通の者とは全く別の世界に生きている者達だと思っていた。
 しかし目の前にいる二人はどうだ?
 俺のため息一つで不安になり、こんなにも耳を垂れ下げている。


「あれは二人に対してではありませんよ。家主よりも先に快諾するなんて母さんらしいなと呆れていただけです」

「本当か?」
「本当です」
「嫌じゃないの?」
「嫌じゃないですよ」


 目線を合せて笑いかければ、安心したのか耳が元の位置へと戻る。
 どうやらわかりやすいのは獣人も神獣も同じらしい。


「俺達に抱かれたのは?嫌だった?」


 可愛らしいなと微笑ましく見ているとタキトゥスが距離を詰めて問いかけてきた。
 “内緒です”と適当にあしらえばいいのにできないのは、こういった経験が乏しいのと変に真面目だからで、俺は視線を左右に彷徨わせて「えっと……その……」と狼狽える。


「教えてほしいなー?」


 目を細め、舌舐めずりをしながら見つめるタキトゥス。
 オネストも俺の返答を待っている。


「……っ、嫌じゃなかったです」


 やっとの思いで言葉を発した。
 声が震えていたのは恥ずかしさと緊張からであって、泣いているからではない。


「気持ちよかった?」


 さっきの言葉では足りないのか、タキトゥスは更に掘り下げてくる。
 初心者の俺にその手の話は厳しいんだって!と心の中で叫んでみるが効果はない。
 当たり前だ。
 声に出していないのだから。


「……気持ち、よかったです。もう勘弁してください」


 俺は両手で視界を遮り、真っ赤になっているであろう顔を隠した。
 恥ずかしくて今にも死にそうだというのに、二人は余裕そうな顔をしていて。
 上位怪狼族ハイフェンリルの姿だというのにかっこよく見えてしまうのは昨日見た人族ヒューマン姿の二人がチラつくからだろうか?


「もー!ネロちゃん可愛い過ぎるんだけど!」
「ちょ、跳びかからないでください!体格差考え……っ、うわっ!」
「ごめんごめーん。だって可愛いかったからさー」


 尻餅をついた俺に尻尾を振りながら抱きついてくるタキトゥス。


「愛くるしいというのはお前のような者を言うのだろうな」


 柔らかく微笑んだかと思えば、背後に回って頰を擦り付けてくるオネスト。


「……心臓がもたないっ!」


 そして今後のことを考えて半泣きになる俺。
 こんな序盤で口にしてはいけないと思うが、えて言おう。



 この二人に翻弄され続ける自信しかないんですが!!!
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