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第三章 いざ、ロピック国へ
仕返し
しおりを挟む「てかさー、入国審査って何すんの?」
並び始めて数十分経ち、ようやく機嫌が戻ったタキトゥス。肩にいるのが飽きたのか、頭の上に移動しながら聞いてきた。
“そんなことも知らないんですか?”と言いかけたエヴァンの口を慌てて塞ぐ。不服そうな顔をしている目の前の男に、首を振って黙っているように伝える。
まだ中に入ってすらいないというのに、解除魔法が使えるオースティンを探すよりも二人の間を取り持つ方が大変な気がした。これが二か月続くと思うと気が遠くなりそうだ。
「国で発行している身分証を提示して荷物検査と身体検査をするだけです。人によっては幾つか質問されることもあるみたいですよ」
「そっかそっかー」
頭の上で足を伸ばしているのか、前足のせいで俺の前髪は潰れて目にかかっている。その上、頭頂部には何やら柔らかいものが当たっていた。後頭部寄りには芯があって、僅かに固い。
それが何なのか。実家で犬を飼っていた俺は容易に想像できた。飼っていなくても、ある程度予想は出来るだろう。
「俺達は身分証など持っていないぞ」
「パトリオット様が特別に発行して下さいました。手前まできたら渡しますね」
「そうか。ありがとう」
頬を摺り寄せてくるオネスト。
天気がいいからか、毛が普段よりも温かくて気持ちがいい。仄かにお日様の香りがした。
「タキトゥス様。それ、止めてもらえますか?」
「んー?何がー?」
オネストの頭を撫でながら呆れたように言えば、間延びした声が返ってくる。
「当たってるんですよ」
「だから何がー?」
「わかっててやってますよね?もういいです」
溜息をつき、自分から話を振ったというのに強制終了させた。タキトゥスは後ろ足を伸ばしているようだが、左右に揺れている尻尾に下半身が連動していた。
傍から見ているだけならなんとも思わないだろう。これは当事者にしかわからないこと。ハッキリ言ってしまえば当たっているのだ。俺の後頭部に、タキトゥスの股間が。
「……はぁ」
一般的に獣種は服を好まず全裸で生活している。毛や鱗が服のようなものだろうから全裸という表現は適切ではない気もするが、細かいことはこの際置いておこう。
タキトゥスは現在進行形で自分の股間を俺の頭頂部に擦り付けているというわけだ。日本であれば犯罪で、当然の如く刑罰が下される。だが、相手は獣。そしてここは異世界。何も言えないのが現状だ。
惚けているのではなく、本当に意識していないのかもしれない。俺が過剰に反応しているだけで。そう思うようにすれば、股間を擦りつけられても気にならないだろう。全ては意識の問題だ。
「すー……はー……」
深呼吸をしてから意識を別の物に向けようとする。しかし、その度にワザと左右に腰を振ってくる。溜息をつきながら項垂れる俺を、タキトゥスは愉快そうに笑っていた。
そして俺は気付く。これは尻尾を引っ張ったし返しだということに。
溜め息をつく俺に気付いたオネストが心配そうに声を掛けてくれるが、傍から見て分かることでは無いし、説明するのも面倒なので静かに頷くだけに留めた。
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