人間の俺は狼に抱かれている。

レイエンダ

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第三章 いざ、ロピック国へ

小さな一歩

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「一歩前進ですね」


 肩に戻って来たのを確認してから指先で撫でてやると、子犬のような可愛らしい声で鳴いた。もっと、と催促してくるので自然と口角が上がってしまう。


「ネロ、俺も」


 気持ち良さそうに声を漏らしているのを見て羨ましくなったのか、首筋を何回か触ってから頭を擦り付けてくる。


「ネロちゃん絶対ダメ!おい、お前何もしてねーだろ!」


 オネストを撫でようと反対の手をあげた所で頭の後ろを叩かれてしまった。手足は俺の肩に置かれているから、恐らく尻尾を使ったのだと思う。


「ネロは何もしてなくても撫でてくれる」
「そうだけど今はダメなの!」
「なぜだ」
「今は俺のご褒美タイムなんですー!」


 話に割って入ろうと思ったが、お互い間髪入れずに言い返すので口を挟む隙が無い。
 オネストの言う通り何もなくても撫でているはずなのに、何故だか今はダメらしい。小さな独占欲というか、自分だけという特別感が欲しいという所かな?


「……ネロ」


 消え入りそうな声で俺の名前を呼ぶ。どうやら何を言ってもタキトゥスに拒否されてしまうようだ。


「猫撫で声で呼んでもダメだかんね!」
「俺は猫じゃないぞ」
「そんなの知ってるし!」


 収集がつかなそうなので、撫でるのは諦めて無視をすることにした。タキトゥスの意識が他の物に移ったらこっそり撫でればいい。
 噴水の前で立ち止まっていた俺は方向転換して歩き出す。意図に気付いたエヴァンが横に並んだ。


「何かわかるといいですね」


 小さく頷くだけでそれ以上何も言ってこなかった。
 居場所がわかった訳ではないけれど、探し人の情報を得られる可能性は出てきたのが嬉しい反面、気に入らないのだろう。それが自分ではなく、嫌いな相手がもたらしたものだから。
 その証拠に、今も言い争っているタキトゥスを射殺しそうな顔で睨んでいる。
 殺気に近いそれは、決して気分の良いものではなかった。恋人に向けられていると思うと、尚更。
 仲良くしろとは言わないが、少しでいいから歩み寄ってほしいものだ。


「今日はパトリオット様にいい報告ができますね」


 空気を変えようと大好きな彼の話を振る。すると般若のような顔から一変して笑顔になる。
 パトリオットが大好きなのだろう。タキトゥス達に劣らぬわかりやすさだ。特定の人物限定というのが彼らにそっくりとも言える。


「過程は気に入りませんが、今夜しっかりと報告いたします」
「お願いします。宿の夜ご飯まで時間はありますし、もう少し聞き込みしましょうか」


 エヴァンは進捗がなくても毎日パトリオットに報告をしているらしく、離れていてもやり取りできる物があるらしい。
 オネストに聞いてみると、似たような魔法があるから本人が使っているか、魔法陣か何かを刻んでいるのでは?と推測していた。
 さすが異世界だなーと感じたのは記憶に新しい。


「ネロちゃん、あそこのお肉食べたい」
「もうすぐ夜ご飯ですよ?」
「大丈夫!食べれるから!」


 オネストとの喧嘩……というより戯れ合いのようなものが終わったらしく、匂いに釣られたタキトゥスが俺の頬を力強く押した。そのせいで頬の肉が内側に食い込み気味である。
 この国に来てからというもの、タキトゥスの食欲が上がっていて体重というかお腹が心配だ。


「元々俺達は体が大きい。消化も早いから体型というか、パフォーマンスには何の影響もない」
「そーそー。食べなくてもいいっちゃいいんだけど、パトリオットの財布から出るなら食えるだけ食わないとなー」


 つまりはあれだ。パトリオットのお金だから遠慮なく気になった物を食べているということか。
 相手が国王だということを忘れている気がしてならない。
 フェンリルである彼らにはあまり関係ないのかもしれないけど、人間である自分はヒヤヒヤしてしまう。


「程々にしてくださいね。……俺も一本食べちゃお」
「食べよ食べよー!」
「俺はこの塩味が食べたい」


 今夜の報告が楽しみなのか浮かれた様子のエヴァンを横目に、小さく呟く。
 注文しながらも店主にオースティンの事を知っているか聞くのも忘れない。食べるだけでなく聞き込みもしているのだから、これも歴とした仕事である。


「エヴァン様はタレにしますか?」
「あ、あぁ」


 仲間外れは良くないなと思い、エヴァンにも串焼きを渡す。機嫌がいいのか、また食べて……と文句は言われなかった。一安心だ。








☆☆☆

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レイエンダ

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