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第一章 お転婆娘
一妻多夫制
しおりを挟む「ジャスミンおはよー!また寝坊したのー?」
「おはようジャスミン。今日も美しいね」
「……遅かったな。おはよう」
心の中で文句を垂れていると、三者三様の挨拶が私を迎えてくれた。
「ルー、ファーレス、ゲイル。三人ともおはよう」
朝一だけでなく常に間延びした話し方のルーセント。
その口は花なのではないか……と錯覚してしまいそうな程、甘く蜜のような口説き文句ばかり言ってくるファーレス。
二人の声が大きいからか、眉間に皺を寄せながら挨拶するゲイル。
性格も態度もバラバラな私たち四人はなんと、
「ようやく夫婦全員揃いましたね。朝食にいたしましょう」
夫婦なのです。
私が住むこの国、イグニース王国は人口の約七割を男性が占めている。
イグニース王国が軍事大国の一つということもあり、その技術を一目見ようと集まる者もいれば、自国で活用できないか模索しにくる者、実際に力を肌で感じ身につけたいとやってくる者など、様々。
理由は多種多様だが、自然と男が集まってくる不思議な国。
気づいたら人口の割合が男性が七割、女性が三割となっていた。
その結果、男性陣が性に対し飢えることなく、平等に妻という存在を見つけられるようにと一妻多夫制が誕生したわけである。
一人の女性に対し、多数の男性が夫婦として一つ屋根の下で生活をする。
それがイグニース王国では当たり前なのだ。
「ジャスミーン。僕ね、庭の一角を任されたんだよー」
「あら、よかったわね!」
「俺、明後日から国境付近の警備に行くことになったんだ。数日ここを空けるけど、お利口で待っててくれよ?そうしたらご褒美をあげるからさ」
「結構です」
「書類、部屋に運んでおいたからいつも通り頼む」
「あまり多くないことを祈るわ……」
そして、家にいるときは必ず夫婦揃って朝食を摂ることも。
私達だけのルールではなく、これは法律で決まっている。
時に付き合いなどで外食することもあるだろうと、あえて夕食ではなく朝食に制定されていると聞いたことがある。
一日の始まりを夫婦で迎えることで、その日が素敵な一日になりますように、という願掛けの意味があるとも聞く。
正直な所、よくわからない。
制定したのは百年以上前のことだし、その頃を覚えている者は亡くなっており、この件に関して文献にも特に触れられていない為、憶測が飛び交っているのだ。
喧嘩をしても毎朝顔を合わせるのでトラブルも絶えないが、数日経てばそれすらも笑いに変わる。
いつ死ぬかわからない。
そう思えば喧嘩してる時間は少なく、楽しく過ごす時間を出来るだけ多く。
いつしかそう考えるようになってきたという。
軍人が多い国だからこその思考なのかもしれない。
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