私は三人の夫に溺愛されている。

第一章 お転婆娘

恐怖の朝食

「あ、そうだ。私も明日、またミゼリーの所に行くことになったのでココを空けるから」
「えー！昨日までいたのにまた行くのー！？」


　ミゼリーとは、イグニース王国から少し離れた国とはいえないほど小さな村に住む、その村で唯一のお医者様。
　名をミゼリコルドといい、ミゼリ様やミゼリーと親しまれている。


「一人で切り盛りしてて大変なのよ。しかも国境で警備と言う名のいざこざがあるみたいだし？終わった後、怪我人が一時的に運び込まれてくるだろうから手伝いなさいって言われちゃったんだもん。仕方ないじゃない」


　最初は暇つぶしで遊びに行く程度だったのだが、いつしか私は薬草詰みや調合なども手伝うようになっていた。


「違う！何を聞いていたんだこの小娘が！」


　薬草を投げつけられ、散々怒鳴られた。
　だが、私にとっては全く苦ではなく、寧ろそれが心地よかった。
　今ではミゼリーの立派な右腕だ。
　そして誤解している人もいるかもしれないから最初に言っておく。
　私は決してドMではない。


「はははー。つまり、俺たち軍人のせいだね」
「そういうことです」


　ルーもゲイルも納得したのか、騒がしかった室内がようやく静かになった。


「静かになるまで一体何分かかっているのですか？いつ運べばいいのか頃合いが掴みづらくて仕方がありません。今度から私がキッチンで一分待つたびに指を一本ずつ切り落としてメイン料理としてお出し致しますのでそのつもりで」


　私達四人に向かって無表情で言ってのけるマナ。
　全身から血の気が引いていくのが分かる。
　一分待たせると指を切り落とされるだけでなく、指を切り落とされた本人達にメイン料理として食卓に並べ食べさせるという鬼畜な発言。
　全員の表情が凍りつく。
　視線を合わせ、無言で頷き合う。
　朝食が運ばれてくるまで静かに待とう。
　マナに逆らってはこの身がいくつあっても足りない。
　この場にいる全員がそう思ったに違いない。