行き遅れなのでお飾りも務まりません。プロポーズは真に受けないでくださいね。

有沢真尋

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 努力をしたという痕跡さえあればいい。
 何もしなかったのではなく、やることはやった。それで駄目だった。
 婚活撤退の根拠としては、十分だ。

 アンナは八年越しの夜会への参加を決意した。
 最初で最後の婚活のためだ。

 そして、事前情報の通り「難攻不落の社交界最後の砦」「女遊びは派手だが結婚には否定的で冷酷非道な毒舌家」という異色の噂を持つウォーレン・ミッドフォード侯爵にプロポーズしたのである。

(普段はかなり遊び歩いているのに、独身主義者で絶対に結婚には応じず冷酷に女性を捨てる。何故結婚しないのかは謎に包まれているそうだけど、私にはそういう方がいいわ。私のプロポーズを真に受けて検討されたり、その結果申し訳なさそうに断られてもいたたまれない)

 成功など、まったく期待していない。
 最低最悪ダサすぎるとされる普段通りのメガネと髪型で、申し訳程度に夜会仕様のドレスを身に着けたその場しのぎにもならない姿で、まるで道を聞きたい迷子のように近づき、声をかけてみた。

「そこの背の高い方。そう、あなたです。ウォーレン・ミッドフォード侯爵でいらっしゃいますね。私と結婚してくれませんか」

 絹糸のようなプラチナブロンドにけぶる青の瞳、彫りが深い美貌で王宮庭園の彫刻に混ざってもわからないほど完璧なプロポーションの冷徹侯爵様は、無言でアンナを見下ろしてきた。
 視線がぶつかると軽く眉をひそめ、形の良い唇を開いた。

「わかった。結婚しよう」

 そこはわからないで欲しかった。
 後の祭りである。

 * * *

 
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