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剥がされた家庭
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しおりを挟む夕方になる。
夜が明ける。
また、夜になる。
昨日の朝から何も食べてない。
なにもしてないな。
ぼうっと寝転がって、携帯をたまにいじって。
ただ、考えないで。
色々、忘れようとして。
意味なくアルバム取り出したり。
よくわからない。
美里から連絡はない。
薄情だな。
俺はどうでもいいのか。
いや、多分違う。
お互い余裕がないんだ。
頭痛いし。
金原とアカからメールは来ていた。
だが、見る気がしない。
返事打てないし。
着信履歴も何件か。
受験生の十一月半ばだ。
色々心配されるだろうな。
今は考えない。
考えなくていいや。
顔を枕に埋める。
静か。
家の中がいやに静かだ。
誰もいない。
誰も。
気づけば泣いていた。
声を上げて。
母さん。
父さん。
たすけて。
帰ってきて。
美里。
いなくなるなよ。
誰か
来て。
ピンポーン。
「え……」
鼻を啜って耳を澄ます。
ピンポーン。
やっぱり鳴ってる。
誰だ。
わざわざプリントでも届けに来たのか。
「はい」
ドアを開ける。
なんでインターホンで確認しなかったんだよ、俺。
「どうも」
類沢がスーパーの袋を差し出す。
「ちゃんと食べてる?」
「……あんたの顔、今一番見たくない」
だが、彼にその言葉は届かず、ぐいとドアを開かれる。
類沢は家を見て眉をひそめた。
「空気、入れ替えて。それから掃除機。食器も洗ってないよね。こんなんじゃ病気になるよ」
玄関に入ってきた類沢の両肩を掴む。
でも、力が入らない。
「瑞希?」
「今更……教師面すんなっ」
息を吸う。
「全部あんたが来るまで幸せに進んでたのに! 金原だって、アカだって。俺の家族もこうならなかったのに!」
吐き出した後、抱き締められた。
優しく。
父さんかと錯覚するくらい。
「云いたいこと、みんな吐き出して」
その声は、今まで聞いたことのない響きを帯びていた。
だから、俺は震えながらしがみついたんだ。
「なんでだよ……なんで俺なんだよ、先生。こんなん……現実じゃない……一人になるなんて思わなかった」
類沢のコートから、保健室の匂いがしたが、気にならなかった。
「今日だけ、手伝いさせてくれないかな」
涙を擦ると、類沢の笑顔が見えた。
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