どこまでも玩具

片桐瑠衣

文字の大きさ
65 / 222
剥がされた家庭

4

しおりを挟む

 夕方になる。
 夜が明ける。
 また、夜になる。
 昨日の朝から何も食べてない。
 なにもしてないな。
 ぼうっと寝転がって、携帯をたまにいじって。
 ただ、考えないで。
 色々、忘れようとして。
 意味なくアルバム取り出したり。
 よくわからない。
 美里から連絡はない。
 薄情だな。
 俺はどうでもいいのか。
 いや、多分違う。
 お互い余裕がないんだ。
 頭痛いし。
 金原とアカからメールは来ていた。
 だが、見る気がしない。
 返事打てないし。
 着信履歴も何件か。
 受験生の十一月半ばだ。
 色々心配されるだろうな。
 今は考えない。
 考えなくていいや。
 顔を枕に埋める。
 静か。
 家の中がいやに静かだ。
 誰もいない。
 誰も。
 気づけば泣いていた。
 声を上げて。
 母さん。
 父さん。
 たすけて。
 帰ってきて。
 美里。
 いなくなるなよ。
 誰か
 来て。

 ピンポーン。
「え……」
 鼻を啜って耳を澄ます。
 ピンポーン。
 やっぱり鳴ってる。
 誰だ。
 わざわざプリントでも届けに来たのか。
「はい」
 ドアを開ける。
 なんでインターホンで確認しなかったんだよ、俺。
「どうも」
 類沢がスーパーの袋を差し出す。
「ちゃんと食べてる?」
「……あんたの顔、今一番見たくない」
 だが、彼にその言葉は届かず、ぐいとドアを開かれる。
 類沢は家を見て眉をひそめた。
「空気、入れ替えて。それから掃除機。食器も洗ってないよね。こんなんじゃ病気になるよ」
 玄関に入ってきた類沢の両肩を掴む。
 でも、力が入らない。
「瑞希?」
「今更……教師面すんなっ」
 息を吸う。
「全部あんたが来るまで幸せに進んでたのに! 金原だって、アカだって。俺の家族もこうならなかったのに!」
 吐き出した後、抱き締められた。
 優しく。
 父さんかと錯覚するくらい。
「云いたいこと、みんな吐き出して」
 その声は、今まで聞いたことのない響きを帯びていた。
 だから、俺は震えながらしがみついたんだ。
「なんでだよ……なんで俺なんだよ、先生。こんなん……現実じゃない……一人になるなんて思わなかった」
 類沢のコートから、保健室の匂いがしたが、気にならなかった。
「今日だけ、手伝いさせてくれないかな」
 涙を擦ると、類沢の笑顔が見えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

告白ごっこ

みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。 ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。 更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。 テンプレの罰ゲーム告白ものです。 表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました! ムーンライトノベルズでも同時公開。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

青は藍より出でて藍より青し

フジキフジコ
BL
ヤクザの跡取りの高校生とその同級生の話。高校生からはじまり40代になるまで続きます。 【青は藍より出でて藍より青し】本編。高校時代。 【番外編/白い花の家・月を抱く】葉月と綾瀬が出会った頃の話。 【番外編/Tomorrow is another day ・Sweet little devil】綾瀬と高谷の高校時代の短いエピソード。 【朱に交われば赤くなる】本編「青は藍~」の続き。 【狭き門より入れ】本編「朱に交われば~」の続き。7年後のお話になります。 【番外編/BLEED】篤郎の事情 【三代目の結婚】本編「狭き門~」の続き。綾瀬の結婚問題。 【番外編/刺青】高谷×綾瀬のいちゃいちゃ 【瑠璃も玻璃も照らせば光る】本編「三代目の結婚」の続き。主役は篤郎です。エピローグに高谷×綾瀬のいちゃ。 【番外編/古傷】高谷×綾瀬のいちゃいちゃ 【番梅花は蕾めるに香あり 】本編「瑠璃も玻璃~」の続き。高谷と男子高校生の話。 【天に在らば比翼の鳥】本編の完結編。 他シリーズ『チェリークール』の【番外編】「東京ミスティ」「東京ミスティ2」「微笑みの行方」に綾瀬と高谷が出ています。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...