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3◆ディラン視点

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俺は勇者ディラン。

ある日、国一番の美しい姫と間違われて拐われた勇者だ。

間違った理由が、一番美しい人が姫だと思って美しい人を拐ったら、それがまさかの俺だったわけだ。

そんな理由で拐われて、はっきり言って姫に合わせる顔がないんだが………。

魔王は俺をどうするべきか悩んだ結果、ひとまず捕えておくつもりらしい。

しかし、俺としてもどうするべきか悩んでいたりする。

勇者なのだから、俺は魔王と戦うべきだろうか?

だが、捕えられている以上激しい抵抗はちょっと無理だろう。

………しばらく様子を見てから考えるのも一興だろうな。



「勇者よ、とりあえず自己紹介と挨拶しないか?」

「あぁ、そうだな」

魔王は、ひとまず歩み寄りから始めるようだ。

なかなか礼儀正しいんだな。

魔王に対する好感度がちょっと上がったよ。

「はじめまして、私は魔王ラピスラズリ。ラピスと呼べ」

「はじめまして、俺は勇者ディラン。俺のことはディランと呼んでくれ」

ラピスのアメジストの瞳が美しく輝く。

全体的に可愛らしい見た目の少年だ。

天使のような笑顔で魔王しているんだから、世の中わからないことはいっぱいあるものだね。



「ディラン、良かったら食べてくれ。姫に食べさせる気だった私の手作りケーキだ」

「え……?」

目の前にメイドが用意したのは、黒い……全体的に黒いケーキだった。

スポンジもクリームも果実も黒い。

材料が何か知るのが怖い………!!

しかし、怖いものみたさでちょっと聞いてみた。

「ざ…材料は何かな?」

「果実はブラックストロベリーで、スポンジに使った砂糖は暗黒糖、クリームは闇ミルクでできている」

ブラックストロベリーとは、真っ黒なイチゴのことだ。

味は赤いイチゴと変わらない。

暗黒糖とは、真っ黒な砂糖のことだ。

あり得ない程黒いが、ちゃんと甘い。

闇ミルクとは、真っ黒なミルクのことだ。

意外に栄養があるし美味しいけど、見た目で嫌がられていたりする。

「何で黒で統一したの!?」

「栄養があって、美味しいから?」

真っ黒なケーキは、きっと美味しいだろうけど不気味なオーラを放っている。

ちょっと………彩りは大事なんだと教えてあげたくなったよ。
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