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第16話:白衣の天使、あるいは夜勤明けの永眠
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『霊感(パイ)コメトリー・オブ・ザ・デッド』
第16話:白衣の天使、あるいは夜勤明けの永眠
1. 煩悩のカルマ、即日発送
「バ……バチ当たったぁぁぁ!!」
夕暮れの通学路、久我の情けない悲鳴が響き渡った。階段を踏み外して右足を盛大にひねった原因は、パンを落として屈んだ女子高生の胸元を、探偵特有の「観察眼」で凝視しすぎたことによる前方不注意。
「まったく……久我さん。下心のカルマが即日発送(プライム)で届くなんて、初めて見ましたよ」
隣でユウキが、冷めたコーヒーを飲むような温度感でため息をつき、救急車を呼んだ。
搬送された先は、異常なほど豪華で清潔な「私立聖霊(セイント)ホスピタル」。 そこで久我を待っていたのは、眼鏡の奥に知的な瞳を宿したクールビューティー、担当医の佐伯先生だった。
「大丈夫ですよ、久我さん。私がしっかり診てあげますからね」
佐伯先生は、驚くほど優しかった。彼女が患部を確認するために身を乗り出した瞬間、ふわりと石鹸のような清潔な香りが鼻をくすぐる。
「……あ」
診察の最中、彼女の豊かな胸元が、久我の腕にわずかに触れた。本来なら歓喜すべき瞬間。しかし、久我の脳裏に、説明のつかない「違和感」が走る。
(柔らかい……。でも、なんだろう。弾力はあるのに、生命の脈動が一切伝わってこない。まるでお風呂に一晩中浮かべていた『何か』のような不自然さだ……)
2. ブラックカードと「特別室」の誘い
「ユウキくん、ありがとう! 佐伯先生は綺麗で優しいし、ナースも天使だ。僕、もうこの病院なら一生入院していてもいい気がしてきたよ」
車椅子の上で鼻の下を伸ばす久我。すると、ユウキが立ち止まり、獲物を品定めするような冷たい目で問いかけた。
「……そうですか。久我さん、本気で彼女に恋しちゃいましたか。……どうしますか? このまま“天国”のままで行きますか? それとも、真実を知りますか?」
「……え? 真実って……?」
ユウキは懐から、禍々しく黒く光るカードキーを「スッ」と差し出した。
「では、カードを渡しますね。これは『特別室』への招待状であり、許可(ライセンス)です。……僕はいつもここを使っているんですよ、良い医者揃いですからね。さあ久我さん、その右手で、大好きな佐伯先生の『正体』を解診してみてください」
久我が震える手でその黒いカードを掲げた、その時だった。
廊下の向こうから歩いてきた佐伯先生が、そのカードを目にした瞬間、表情を一変させた。 理知的だった瞳は熱を帯びて潤み、頬が朱に染まる。彼女は唇を舌先で湿らせると、吐息が届く距離まで久我に詰め寄った。
「……あら、そのカード。それを持ってるってことは……。久我さん、あなたを『特別室』へ案内しなきゃいけないわね」
佐伯先生は、自らの白衣のボタンをゆっくりと指先で外していく。
「いいわよ久我さん。……触って。私に、『診察』してくれるんでしょう? 隅から隅まで……あなたのその指で、私の奥まで暴いてほしいの……」
彼女は久我の右手を取り、自らの豊かな胸元へと強引に導く。
「さあ、早く。我慢しなくていいのよ……?」
身を乗り出した彼女の胸が、久我の指先に押し付けられる。ニチャリ、という粘り気のある、ひどく艶めかしい音が久我の脳内だけで響いた。
(う、嘘だろ……。なんだこの色気は!? クールな先生が、急に……! ああ、でもこの感触、抗えない……!)
3. 解診(サイコメトリー)と世界の崩壊
久我は本能に突き動かされ、カードを握りしめたまま、その膨らみを力強くホールドした。
ムニュッ。
「ふむ……やっぱり柔らかい。この完璧な形、これは間違いなく最高にエロい女性の――」
その瞬間、久我の脳内に「ドロリとした重油のような死臭」と「脳が凍りつくような冷気」が爆発的に流れ込んできた。
「――冷た……い……!?」
直後、世界が凄まじいノイズと共にバグを起こした。 白亜の壁は瞬時に剥がれ落ち、一面に真っ黒なカビと血の跡が浮き出る。眩しかった蛍光灯は割れ、チカチカと不気味な赤を放つ。
そして、目の前にいた「優しい佐伯先生」は――瞳が腐り落ち、美しい白衣は血膿に汚れ、所々から白骨が露出した凄惨な死体へと変貌していた。
「ひっ……!? 佐伯先生……!? いや、全員幽霊!! ゾンビ病院じゃないか!!」
視界に広がるのは、手足が欠けた患者や、内臓を抱えたまま廊下を徘徊する医師たちの姿。
カーテンの向こうで、ユウキが冷たく微笑んだ。
「ここは十年前に閉鎖された廃病院ですよ。……どうです久我さん、恋の熱は冷めましたか?」
4. 攻守逆転、揉まれる側の地獄
「退院させてくれ!!」と叫ぶ久我だったが、足は動かない。
「無理ですね。佐伯先生、執刀(マッサージ)準備を」
そこから、久我の地獄が始まった。普段は「揉む側」として邪気を排出してきた久我が、初めて「揉まれる側」として圧倒的な霊的暴力に晒されたのだ。
「あぐぁぁぁぁ!! そこは足じゃない!! 胸! 胸の骨が鳴ってる!!」
「久我さん……足の痛みは、心のコリから来るんですよ……。しっかり、ほぐして……あげますからね……」
青白い佐伯先生とナース霊たちによる、容赦ない「強制加療」。久我は自らの魂が指先で捏ねられ、内側から邪気が無理やり絞り出される無防備な快感と、死ぬほどの恐怖に絶叫した。
三日後、久我の足は驚異的なスピードで完治した。全身の肌はツヤツヤになり、体中の毒素が抜けきっていたが、久我の精神はボロボロだった。
5. ラスト:あまりに非情な種明かし
退院の日。病院の玄関先で、満足げに去っていく霊医師たちを見送った後、久我は震える声でユウキに尋ねた。
「ユウキくん……。君、いつもここを使ってるって言ったよね。……あんなグロい連中に、いつも揉みしだかれているのかい?」
ユウキは自らの黒いカードを指先で弄びながら、事も無げに言った。
「いえ? 僕はいつも『天国モード』で見てもらってますけど。 まさか、あの方達が本当はあんなにグロい姿をしていたなんて……正直ちょっと引いてます(笑)」
久我は、世界が静止したのを感じた。
「……え!? 選べたの!? 天国のままで、さっきみたいなエロい診察をしてもらう設定があったの!?」
「ええ、言ったじゃないですか。『天国で行きますか、真実を知りますか』って。あなたが真実を選んだんですよ。……さて、夜勤のナースが家で待ってますよ。帰りましょうか」
「ユウキくん……っ!! 君という男はぁぁぁぁ!!」
退院後も、久我の枕元には注射器を構えたナース霊が立ち続けている。
『――夜勤の時間、来ちゃいました♡』
第16話:白衣の天使、あるいは夜勤明けの永眠
1. 煩悩のカルマ、即日発送
「バ……バチ当たったぁぁぁ!!」
夕暮れの通学路、久我の情けない悲鳴が響き渡った。階段を踏み外して右足を盛大にひねった原因は、パンを落として屈んだ女子高生の胸元を、探偵特有の「観察眼」で凝視しすぎたことによる前方不注意。
「まったく……久我さん。下心のカルマが即日発送(プライム)で届くなんて、初めて見ましたよ」
隣でユウキが、冷めたコーヒーを飲むような温度感でため息をつき、救急車を呼んだ。
搬送された先は、異常なほど豪華で清潔な「私立聖霊(セイント)ホスピタル」。 そこで久我を待っていたのは、眼鏡の奥に知的な瞳を宿したクールビューティー、担当医の佐伯先生だった。
「大丈夫ですよ、久我さん。私がしっかり診てあげますからね」
佐伯先生は、驚くほど優しかった。彼女が患部を確認するために身を乗り出した瞬間、ふわりと石鹸のような清潔な香りが鼻をくすぐる。
「……あ」
診察の最中、彼女の豊かな胸元が、久我の腕にわずかに触れた。本来なら歓喜すべき瞬間。しかし、久我の脳裏に、説明のつかない「違和感」が走る。
(柔らかい……。でも、なんだろう。弾力はあるのに、生命の脈動が一切伝わってこない。まるでお風呂に一晩中浮かべていた『何か』のような不自然さだ……)
2. ブラックカードと「特別室」の誘い
「ユウキくん、ありがとう! 佐伯先生は綺麗で優しいし、ナースも天使だ。僕、もうこの病院なら一生入院していてもいい気がしてきたよ」
車椅子の上で鼻の下を伸ばす久我。すると、ユウキが立ち止まり、獲物を品定めするような冷たい目で問いかけた。
「……そうですか。久我さん、本気で彼女に恋しちゃいましたか。……どうしますか? このまま“天国”のままで行きますか? それとも、真実を知りますか?」
「……え? 真実って……?」
ユウキは懐から、禍々しく黒く光るカードキーを「スッ」と差し出した。
「では、カードを渡しますね。これは『特別室』への招待状であり、許可(ライセンス)です。……僕はいつもここを使っているんですよ、良い医者揃いですからね。さあ久我さん、その右手で、大好きな佐伯先生の『正体』を解診してみてください」
久我が震える手でその黒いカードを掲げた、その時だった。
廊下の向こうから歩いてきた佐伯先生が、そのカードを目にした瞬間、表情を一変させた。 理知的だった瞳は熱を帯びて潤み、頬が朱に染まる。彼女は唇を舌先で湿らせると、吐息が届く距離まで久我に詰め寄った。
「……あら、そのカード。それを持ってるってことは……。久我さん、あなたを『特別室』へ案内しなきゃいけないわね」
佐伯先生は、自らの白衣のボタンをゆっくりと指先で外していく。
「いいわよ久我さん。……触って。私に、『診察』してくれるんでしょう? 隅から隅まで……あなたのその指で、私の奥まで暴いてほしいの……」
彼女は久我の右手を取り、自らの豊かな胸元へと強引に導く。
「さあ、早く。我慢しなくていいのよ……?」
身を乗り出した彼女の胸が、久我の指先に押し付けられる。ニチャリ、という粘り気のある、ひどく艶めかしい音が久我の脳内だけで響いた。
(う、嘘だろ……。なんだこの色気は!? クールな先生が、急に……! ああ、でもこの感触、抗えない……!)
3. 解診(サイコメトリー)と世界の崩壊
久我は本能に突き動かされ、カードを握りしめたまま、その膨らみを力強くホールドした。
ムニュッ。
「ふむ……やっぱり柔らかい。この完璧な形、これは間違いなく最高にエロい女性の――」
その瞬間、久我の脳内に「ドロリとした重油のような死臭」と「脳が凍りつくような冷気」が爆発的に流れ込んできた。
「――冷た……い……!?」
直後、世界が凄まじいノイズと共にバグを起こした。 白亜の壁は瞬時に剥がれ落ち、一面に真っ黒なカビと血の跡が浮き出る。眩しかった蛍光灯は割れ、チカチカと不気味な赤を放つ。
そして、目の前にいた「優しい佐伯先生」は――瞳が腐り落ち、美しい白衣は血膿に汚れ、所々から白骨が露出した凄惨な死体へと変貌していた。
「ひっ……!? 佐伯先生……!? いや、全員幽霊!! ゾンビ病院じゃないか!!」
視界に広がるのは、手足が欠けた患者や、内臓を抱えたまま廊下を徘徊する医師たちの姿。
カーテンの向こうで、ユウキが冷たく微笑んだ。
「ここは十年前に閉鎖された廃病院ですよ。……どうです久我さん、恋の熱は冷めましたか?」
4. 攻守逆転、揉まれる側の地獄
「退院させてくれ!!」と叫ぶ久我だったが、足は動かない。
「無理ですね。佐伯先生、執刀(マッサージ)準備を」
そこから、久我の地獄が始まった。普段は「揉む側」として邪気を排出してきた久我が、初めて「揉まれる側」として圧倒的な霊的暴力に晒されたのだ。
「あぐぁぁぁぁ!! そこは足じゃない!! 胸! 胸の骨が鳴ってる!!」
「久我さん……足の痛みは、心のコリから来るんですよ……。しっかり、ほぐして……あげますからね……」
青白い佐伯先生とナース霊たちによる、容赦ない「強制加療」。久我は自らの魂が指先で捏ねられ、内側から邪気が無理やり絞り出される無防備な快感と、死ぬほどの恐怖に絶叫した。
三日後、久我の足は驚異的なスピードで完治した。全身の肌はツヤツヤになり、体中の毒素が抜けきっていたが、久我の精神はボロボロだった。
5. ラスト:あまりに非情な種明かし
退院の日。病院の玄関先で、満足げに去っていく霊医師たちを見送った後、久我は震える声でユウキに尋ねた。
「ユウキくん……。君、いつもここを使ってるって言ったよね。……あんなグロい連中に、いつも揉みしだかれているのかい?」
ユウキは自らの黒いカードを指先で弄びながら、事も無げに言った。
「いえ? 僕はいつも『天国モード』で見てもらってますけど。 まさか、あの方達が本当はあんなにグロい姿をしていたなんて……正直ちょっと引いてます(笑)」
久我は、世界が静止したのを感じた。
「……え!? 選べたの!? 天国のままで、さっきみたいなエロい診察をしてもらう設定があったの!?」
「ええ、言ったじゃないですか。『天国で行きますか、真実を知りますか』って。あなたが真実を選んだんですよ。……さて、夜勤のナースが家で待ってますよ。帰りましょうか」
「ユウキくん……っ!! 君という男はぁぁぁぁ!!」
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