清純派彼女には秘密なんて無い、よね?

茜琉ぴーたん

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 翌朝。
「おはよ、空くん…」
すっかり出し切ったのか吸い切ったのか、寝起きの茉莉花は普段通りのゆるふわ女子に戻っていた。
 しっかりパジャマを着てお気に入りのシルクのナイトキャップを被り、俺の隣でむにゃむにゃ半目で笑っている。
「おはよ…茉莉花、昨日…」
「やだ、もう忘れて」
「憶えてんだ」
「酔った訳じゃないから憶えてる…ごめんね、いやらしいことしちゃって」
 それは歓迎だけど限度の問題だ。あの積極性を小出しにしてもらえれば良いだけなのだが伝わるだろうか。
 性に潔癖だと思っていたのに実は旺盛で、それを暴いて有り難がったのは俺だ。けれど昨夜の振り切った姿を思い出すと、これから彼女が性に奔放になるのではないかと心配になる。俺で満足しきれなくなって他を求めて、去って行くのではないかと。過去いち大切にしている恋人だけあって、失った時のショックは測り知れない。
「……」
「どうしたの?」
「ん、疲れただけ……起きようか」
「うん、空くんは遅番だよね、寝てて良いよ」
「ん、ありがと…」


 それから二度寝を満喫してアラームで起きれば茉莉花はもう出掛けた後で、用意してあった朝食を頂いて俺も出勤した。

『お疲れさま♡
 あのマカロンのお客さん、また来たの。
 私が全力ダッシュするのを見て、幻滅したんだって!
 失礼だよね!
 『僕は清楚な女性が好みなので、アナタは残念ですが失格です』
 って言って帰ってったの、なんで私がフラれたみたいになるの、ムカつく~!!
 もう来ないと思う!
 以上、報告でしたっ!
 空くんもお仕事頑張ってね♡』

「…ほぉ」
昼休憩、茉莉花からのメッセージに何とも言えない返事を吐く。
 マカロン男はカウンターの向こう側で話をはいはいと聞いてくれる純情そうで従順そうな茉莉花を好いていたんだな、分からなくもない。
 そして次のターゲットを決めて勘違いしてアタックするんだな、警察沙汰になる前に改心してくれれば良いのだが。そして精力剤の件はもう不問で良いのだろう、指紋すら残っていないのだし。

「清楚、ねぇ」
 マカロン男、お前の気持ちは数ミリ程度なら同意する。
 ぼんやり考えつつ茉莉花手製の弁当を摘む。
 ほどほどのエロさが良いなんてのは贅沢な要望なんだろうな、そんなワガママを言っていては茉莉花に逃げられてしまうか。ドーピングありの夜に味をしめて茉莉花が精力剤を買って来たらどうしよう。

 おれはそれこそ失礼な想像をしては休憩時間を消費するのだった。
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