35 / 61
12章
34きゅん
しおりを挟む「はい、大輝くん」
「…偶然の出逢いでここまで好きになってもらえて、本当に嬉しく思ってる。僕はカッコ良くもないしデカいだけで何も出来ないけ」
「え、カッコいいって」
「聞いてって……コホン、何も出来ないけど、真梨亜さんみたいなキレイな人に好きになってもらえて自信が付いた。真梨亜さんはいつも僕を過大評価してくれるから居た堪れなくてつい謙遜というか控えめになっちゃうんだけど、真梨亜さんと歩く時は胸を張って…君に見合う男になれたら…真梨亜さんが思う僕になれたらなと思えるようになってる」
共に歩むパートナーとしての責任感、まだまだ若輩だが大輝にもそんな気持ちが芽生えて育ってきている。
一目惚れは一時の気の迷いと本気にしなかったが、今でもこうして一緒に居てくれるなら彼女のお眼鏡は曇っていなかったということだ。
「うん…」
「真梨亜さんは純粋で、ころころ変わる表情が可愛いよ」
「…あわわ」
「緊張で小さくなってたりする時も、反対に慣れて親しみ易くなった時も…そのギャップも面白い」
「おもしろい?」
「うん。ノリが面白くて…いつも楽しそうで、きらきらしてて目が離せない。見た目のことを言うのは良くないかもしれないけど、僕は真梨亜さんのミルクティーみたいな色のこの髪も好きだよ。きょろきょろ動く青い目もキレイで…うん、思えば出逢った時から目が離せなかった」
「うん…」
「よく知らないうちから好いてくれて…もう4ヶ月、これは知り合って告白するには充分な期間が取れたと思う……真梨亜さん、」
尻尾を振ってついて来る真梨亜に応える誠意。
いつになく真剣な面持ちで名前を呼べば、真梨亜の震える唇は
「ひゃいっ」
と間抜けな声をあげる。
「ぷっ…」
「わ、笑わないで…もう1回呼んで、」
「うん、真梨亜さん」
「はい、大輝くん」
「好きです。僕とお付き合いしてくれませんか」
2ヶ月を経て関係性を育んでの愛の告白に真梨亜はきゅんきゅんと胸を打たれ、答えなど分かっているだろうに疑問系で聞いてくる彼が愛しくて、
「ふぁい…」
と返事をしたらつぅと涎が垂れた。
「あ」
「やっ、やだ、あたしったら」
「ふふ、ごめんね、こんな堅苦しくしちゃって。真梨亜さんはもっとラフなノリが良いのかとも思ってたんだけど…きちんとしたかったから」
「うん…そういう大輝くんが好き…」
「ありがとう……ごはん、食べちゃおうか」
「うん……あ、あの…後で、kiss…していい?」
真梨亜はハンカチでぽんぽんと口元とスーツを拭いて、もじもじと出来たばかりの彼氏へ尋ねる。
できれば彼からして欲しいのだがそうもいくまい。
けれど許可さえ得てしまえば約束は守ってくれるし押しにも弱いのだから提案した者勝ちみたいなところもある。
「後でね」
「…動じない大輝くん…男らしくて好きぃ…」
「あはは、これでも緊張してるんだよ」
そう言った大輝は深く掛け直してくいくいとネクタイを緩めた。
そして残りのメロンパンを食べようとする真梨亜の金色の尻尾を優しく掴み寄せて、ちゅっと軽い軽い口付けをしてさらと放す。
「仲良くしようね」
「うん…」
髪の毛へのキスは愛しさの現れ、大輝はそんなことは知らないし真梨亜を構成するパーツの中で最もハードルが低かったから髪を選んだに過ぎない。
しかし美しいと称賛されたそれへの口付けは直接体に唇を付けられるほどに興奮したし恥ずかしさが噴いた。
「(なんなの、大輝くん、エッチ、なんでそこにkissできちゃうの)」
「さて…とりあえずは就職を決めないとな…内定貰ってから告白するつもりだったから順番が前後しちゃったけど…これも良いモチベーションになるかもね」
「あ、うんうん」
「真梨亜さんと一緒に働けるように、頑張るよ」
「あの、一緒じゃなくても良いの、ちゃんと…dateしたり出来るなら…県外とかでなければ良いの」
「うん、分かった」
もしこの先上手くいかなくなって別れてしまったら?なんてことは考えない。二人は長くこの関係が続くと信じているし、何より目先の幸福に浸るくらい誰に責められることでもない。
真梨亜がメロンパンを食べ切ってお茶を飲み込んだら、
「よろしくね」
と大輝は彼女の視界を独占した。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
独占欲全開の肉食ドクターに溺愛されて極甘懐妊しました
せいとも
恋愛
旧題:ドクターと救急救命士は天敵⁈~最悪の出会いは最高の出逢い~
救急救命士として働く雫石月は、勤務明けに乗っていたバスで事故に遭う。
どうやら、バスの運転手が体調不良になったようだ。
乗客にAEDを探してきてもらうように頼み、救助活動をしているとボサボサ頭のマスク姿の男がAEDを持ってバスに乗り込んできた。
受け取ろうとすると邪魔だと言われる。
そして、月のことを『チビ団子』と呼んだのだ。
医療従事者と思われるボサボサマスク男は運転手の処置をして、月が文句を言う間もなく、救急車に同乗して去ってしまった。
最悪の出会いをし、二度と会いたくない相手の正体は⁇
作品はフィクションです。
本来の仕事内容とは異なる描写があると思います。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?
藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。
結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの?
もう、みんな、うるさい!
私は私。好きに生きさせてよね。
この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。
彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。
私の人生に彩りをくれる、その人。
その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。
⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。
⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。
包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる