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テ、テンプレだあ〜!
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しおりを挟む玄関でサッと靴を履き、ガラガラと力を入れて扉を開く。
彼母は暴力行為まではしないタイプなのか、ギャンギャン騒ぐだけで引き留めはしない。
彼はおずおずと私の後ろをついて来て、靴を履こうとしていた。
「え、貴方も帰るの?」
「か、帰るよ」
「宥めてあげなよ、近所迷惑だし」
「でも」
優しい人だと思っていたけど、典型的な『長いものに巻かれろ』な人だったみたいだ。
とりあえず彼母がうるさいので、二人玄関を出て扉を閉める。
「あのさ、あんなに意地悪されて、私はこの家を好きになれないよ」
「でも、俺の家族なんだよ」
「だから、あんなヒステリックババアのストレスを補って余りある愛が、貴方に感じられないの」
「なに、どういう意味?」
彼は間抜け面で、背後の母を気にしている。
落ち着いてすべき話だと思うが、場所と時を変えても結論が変わらないのでさっさと済ませたい。
「貴方と交際するメリットが無いってことだよ。別れよ」
「えっ…ちょっと決断が早過ぎない⁉︎あれだよ、更年期症状なんだ、今だけだよ、」
「お母さんの態度が軟化するまで私に辛抱しろっての?愛する人の母親なら我慢できるけど、貴方のこと愛してないからただの意地悪ババアにしか思えないよ。あの仕打ちに耐えることが嫁の責務だとか思ってる?私はそんな役割ご免だよ。大人しくサンドバッグになってくれる子がいれば良いね、バイバイ」
「ま、待って…」
玄関扉がゆっくり開いて、彼母の呪怨の叫びが漏れて来る。
恨みは貰いたくないので、スタコラと走って駅へ向かった。
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