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6(最終章)
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しおりを挟むさて、その後なのだが。
私は相変わらず同じ店舗で働き、航介さんも担当を交代することなくこのエリアを受け持っている。
変わったことといえば、航介さんが巡店して来る時のにこやかさがひと回りふた回りもアップしたことくらいか。
カウンターのだいぶん向こうから私を見つけると小走りになって、明らかに私情を挟んだ挨拶で私を呆れさせる。
それは今日だって。
「御幸浜さん、お仕事、変わりは無いでしょうか。暖かくなってきたとはいえ、朝晩はまだまだ寒いですね、お腹を出して寝ていませんか?」
「…大丈夫です」
貴方が抱き着いて離さないから冷える隙も無いです…なんて言えるはずもなく、半端な愛想笑いで返した。
あれからお泊まりは日常化しており、航介さんは「引っ越して来て下さいよ」と毎日のように繰り返している。
夜の方もお盛んで、私の何がそこまで気に入っているのか毎度毎度ヘトヘトになるまで抱き倒す。
「(愛が重い…)」
言えば哀しい顔になるんだろうな、だから言えない。
もっとサラッとした付き合いで充分なのに、交際初日で体を許したもんだから偉そうなことは言えやしない。
「(忠犬みたい…)」
愛してくれて部分的に激しさを見せてくれるなんて女子の理想なんじゃないの、これに慣れてしまってはもう他の男性では満足できないだろう。
「御幸浜さん、困ったことはありませんか?ムラタの方と上手くやれているでしょうか」
「そうですね、問題ありません」
「そうですか、何かあれば連絡して下さいね」
まるでお姫さま扱い、過保護な航介さんはニコニコと芯からの笑みを放って胸ポケットから手帳を取り出す。
そして月間スケジュールのページをパッと開いて、
「定期面談、この日で良いですか?」
としれっと今日の日付を指差した。
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