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しおりを挟むしかし薫は
「ある、わよぉ…でも1回だけ、昔、」
と清純と手練れの間を取ったつもりでまた嘘を重ねてしまう。
「(嘘だろうな…ガチガチに緊張してるじゃん…ゆっくりしてあげよう)」
「(未経験だと全くモテなかったみたいで癪じゃない…)」
「そっか、準備するから待ってね」
「ほ、本当よ、」
「うんうん」
これくらいの嘘なら騙されてあげよう、聡太はニマニマを抑えつつ物入れからスキンを取り出して改めて服を脱いだ。
「薫ちゃん、起きて…脱ごう」
「う、ん…」
ラフなシャツを剥がして下着も聡太のリアクションを待たず外してしまって、内心バクバクなのに薫は良い女風にあくまでクールに脱ぎ落としたそれらを床へ無造作に落とす。
「キレイだね」
「…そ、お、」
「触るね」
「いちいち、聞かなくても……ひゃんッ」
ごつごつの男らしさが胸を掴む。神経を撫でられているみたいにぞわぞわと背筋を快感が走る。
「(反応、可愛い…)」
「(変な声、出ちゃったぁ…)」
聡太においては数年ぶりの女体、かつて交際した女性は若い盛りだったからアラサーの薫と単純に比べる訳にもいかないのだが…
「(僕がたぶん初めてなんだ、そう思うと一層…愛おしくなっちゃうな)」
手付かずの大地に踏み込む先駆者の気持ち、不思議な優越感を覚えた。
そして嫌な思いはさせたくないという心配も大きい。念のためと購入していた潤滑剤も見えないところにスタンバイさせる。
「薫ちゃん、可愛い」
「そんな、お世辞ッ」
「本音だよ、交際を始めてから、どんどん好きになってる」
「…本当?」
「本当だよ、不思議だね、会社では何も知らなかったのに…僕さ、最初はめちゃくちゃなきっかけだったけどさ、こういう気持ちになれて、勘違いかもしれないけど両想いになれて?さ、」
「うん」
「嬉しいって…本気で感じてるんだ、だから今夜、こうなれて嬉しいよ」
それは薫にとっては何よりの告白で賛辞で罪悪感の槍。
誠実な聡太へなんとも言えぬ表情で対峙する。
醒めていく酔いを捕まえて脳を呆けさせて、
「うん、私も嬉しい」
とそこは本音で逞しい体を抱いた。
「力抜いてね、ふー…」
「……わ、ぁ、」
「数年経ってると、処女膜って再生するって聞いたよ」
「…なら…そうなってるかも…しれないわねー…」
「(こう言っておけば、痛さを我慢しなくて済むよね)」
「(そういうことにしておけば、痛がっても不自然じゃないよね)」
稚拙な嘘と寛容な心で二人は事に及び…ついにこの夜、結ばれた。
薫は素で痛がったし泣いてしまったし、聡太はよしよしと励ましてなんとか貫通の儀を終える。
あまりに彼女が喚くので聡太は最後までイキはしなかったが、くったりと上気した顔で横たわる薫を見れば「また今度でいいか」と思えるのだった。
「(血は…出なかったみたいだな…寝てるし、シャワーしとこ……あ、)」
冷房温度を調整して薫に布団を掛けて、聡太が風呂場へ行こうと立ち上がった同じタイミングで座卓の上の彼女のスマートフォンにメッセージの通知が入る。
別に見るつもりは無かったが本能的に目で追ってしまっただけ、メルマガやアプリの通知とは異なる印象的なアイコンの色に目を引かれただけなのだ。
根の真面目さで本文は読んじゃいない、けれど角に書かれた差出人の名称に聡太は意識を取られた。
「(『お兄ちゃん』…薫ちゃん、ひとりっ子じゃ…?)」
湧き上がる不信感。
そこで寝ている女のついた嘘に触れてしまった聡太は、疑いの気を紛らわせようといつもより高温のシャワーを頭から浴びる。
そして最初からこれまでの辻褄や矛盾を探り始めると黒い気持ちが抑えられず、ついには薫が処女であったことさえも嘘だったのではと疑ってしまい…風呂から上がってもベッドには触れず、床で夜を越した。
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