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2日目
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しおりを挟む昼前。
秋花はパーツ置き場の引き出しを開けて今し方取り出したばかりの部品を戻し、
「……あかん、」
とポツリ呟く。
資料も頭にしっかり入れているはずなのに、全く違う物を持ち出してしまったのだ。
朝から秋花は普段通りの業務をこなし、ただ視界の隅に車崎がチラつけば昨夜のメッセージのやりとりと夢のことを思い出し気になって仕方ない。
こんな凡ミスをついに起こしてしまい、なんと彼女は早めにこのお試しを辞退しようと考え始めていた。手元が疎かになれば大きな事故を起こしたり怪我をしかねないし、もし客の車のケアに手落ちがあればただのミスでは済まされない。
慣れ親しんだ仲なのにこんなに意識してしまうとは思わなかった、秋花は自分の弱さを情けなく感じると共に「好かれれば好きになる」というチョロい恋愛感覚を恥じる。
「あ、シンタローさん、コンビニ行くんすか?」
秋花は車崎と昼休みのタイミングを合わせ、帽子を脱いで出入り口へ向かう彼へと声を掛けた。
「うん、渡ったとこの方。シューカも行くか?」
「はい、お供します」
「ん、行こ、」
そして帽子を取って財布を握り、彼の背中を追う。
「何にしよかなー」
「今日は大きめの弁当あるといいっすねー…」
上手く二人きりになれた…ほくそ笑む秋花とは裏腹に、車崎は素直にプチデートを喜んでいた。終始ニコニコと糸目を見せては歯も覗かせる、無邪気で可愛げがあって、その体格とのギャップもまたそそられる。
「(……だんだん意識してる…くー…)」
しかしその感情が命取り、秋花はコンビニ側へ渡る信号が青になるとすぐに話を切り出す。
「あの、シンタローさん、交際のことなんすけどね、」
「うん?」
「その……し、正直気になってしゃーないんすわ、シンタローさんが、」
「うん?気になる、」
「い、意識して…その、」
「ほー、」
言葉だけだといい感じだが秋花の表情から察するにポジティブな話ではないな、車崎は緩んでいた口元を引き締めた。
「仕事中に、その……重大なミスとか起こす前に、キッパリ、その…」
「決断すんの?付き合うてくれる?」
「いえ、そっちじゃなくて…」
「……別れた方がええって言いたいんか?」
「あの…はい、」
別れるも何もこれといった実績もなく、交際しているという事実しかないのだが、車崎の中ではしっかりと秋花は恋人として捉えられているらしい。
「いらっしゃいませー!」
コンビニへ入って弁当売り場の前に立てば、しばし会話がストップした。
決して車崎のことが嫌いなわけではない。しかし意識しだした途端に普通の仕事も会話も困難になるなら良いことは無い。
「俺はこれ」
「私はこれにします」
それぞれに弁当を選んで会計へ、これはもちろん個別勘定である。
レジで車崎の後ろに並んでいると彼の背中の大きさにまた秋花は意識を取られ、隣のレジの店員に「2番目にお待ちのお客様、こちらへどうぞー」と声を掛けられても気が付かなかった。
「…おいシューカ、あっち呼ばれてんで」
「えっ、あ、はい」
あたふたと並び直す彼女をニマと見遣って、車崎は
「すいません、これも」
とレジ横に配置してあった小さなチョコレートを2つ取り追加で会計してもらう。
温めてもらった弁当とホットスナックに同梱しては溶けてしまうか、彼は
「テープでいいっすよ」
と断って作業着のポケットにチョコレートを収めた。
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