胸に手を置かれたら、朋也くんのことしか考えられないじゃん。ー無気力系後輩がグイグイ来るのは想定外でしたー

茜琉ぴーたん

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1…胸に手を置く

矢向青年の苦悩

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「……くそ…良い匂いした…」

矢向やこう朋也ともや、想い人の部屋から帰った俺は服を脱ぎ捨てて布団へ入った。

 酔いに任せて酔った先輩・元宮もとみや美紀みのりを家まで送り、酔いに任せて泊まってしまった。

 狭い空間に二人きり、彼女の生活の匂いが満ちた部屋に無防備な想い人。

 紳士として襲わないと決めてはいたものの、モーションをかけて来られたら乗る意欲はあった。


「あー、天然かよ、」

 間近で胸を観察させてもらい、素顔を見せてもらい。

 風呂上がりの無垢な姿は美味しそうで、たまらずカーペットに倒れ込んだ。

 酔いが回っていたのも本当だし、頭痛が酷かったのも事実だった。

 でも、夢みたいな環境で興奮してしまっていたのも事実だ。

 だから自身の身体を鎮めるために、寝入ったフリをした。

 謝ればどうにかなるとタカを括っていたし、実際そのまま泊まらせてくれたので良かった。


「全然、意識してくれねぇ…」

 男がそこで寝ているというのに警戒せずスキンケアを始めて、ほかほかの体でスマートフォンをつついて。

 突然襲い掛かったらどうするんだ、そんなことを考えているうちに本当に意識が遠くなり…深い眠りについてしまった。


 そして翌朝、一段高いベッドには想い人が幸せそうな顔で眠っていた。

 こっそり起き上がり寝顔を観察、知的好奇心を満たす。

 彼女が起きそうになると再び寝たフリをして、良きタイミングで朝の挨拶をした。


 トイレ、風呂、彼女の生活の濃いところに入り込んでこれも興奮する。

 シャンプー、ボディソープ、銘柄を知るだけでドキドキできた。


 風呂上がり、さすがに彼女も起きてるかと思いきや、まだ布団の中で微睡んでいた。

 どうして危機感を覚えない、そんなに男として魅力が無いのか。

 そして俺は、思い切って彼女の弱点らしい小さな胸に触れた。


「あー、確かにジブン比だと小さい、でもそんなん問題じゃねぇよ…あー、もう、襲ってやりゃ良かった!」

彼女に触れた右手で、自身に触れる。

 手のひらに残る興奮を、自身へ移すかのように奮う。

「元宮、さんッ…こんなコーフンさせやがってぇ…あー、あの顔、照れろや、あんなに告白してんのにッ…くそ…それが可愛いーけど、んだけど、ん、元宮、さ、ん、んッ…あー、出る、出るッ………ぁー…もう、もう…鈍感、卑屈、でも好き、くそー…」


 俺は一晩の我慢と興奮を右手に出し切って、口の端だけフフンと笑うのだった。



おわり
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