胸に手を置かれたら、朋也くんのことしか考えられないじゃん。ー無気力系後輩がグイグイ来るのは想定外でしたー

茜琉ぴーたん

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5…胸が塞がる

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「最近、元宮さんを見る男の目が変わったと思うんすよ」

「そうなの?何で?」

「やっぱ、キレイになられたから」

「褒めても何も出ないよ?」

「…本気なんすけどね」


 今ひとつ理解できないが、「恋する女はキレイ」なことを言いたいらしい。

 そんなの迷信でしょ、と払い除けたいものだが…そうかもしれないと感じている部分もある。


 まず、彼氏がいるということで自分に自信が持てている。

 自分を選んでくれた人がいる、何があったって私には朋也くんがいる、という保険みたいなものだ。

 そして比較的落ち着いてはいるものの、恋するドキドキ感が楽しくて笑顔が増えたように思う。

 着替えもメイクも料理だって、朋也くんはどんな反応をくれるだろうかと考えを巡らせるのが楽しい。

 彼は、聞けば必ず自分の意見を言ってくれる。

 「ここ、敢えて焦がしたんすか?」などと返されることもあるが…おおむねポジティブな感想をくれる。

 そういえばメイク、愛されることによるのか、最近肌ツヤも化粧ノリも良くなっている。

 そもそもが塗らない派の私でも、ちょっと手を加えて華やかにしてみたり毛先を遊ばせてみたりと工夫するようになった。

 心身共に健康で自信に溢れて、これを美しい状態と評するのならそうなのかもしれない。


「……モテちゃうと、ジブンは困ります」

「分かったよ、でも自意識過剰女になりたくないから、複数人でのご飯は良いよね?」

「…ジブンも、呼んで下さい」

「呼べたらね」


 朋也くんは私を睨みながらもぐもぐとお弁当を平らげ、

「ご馳走さまでした…マジで、今夜、知らないっすからね」

 と不穏な言葉を残して廊下へと出て行った。

「(…夜のお誘いだ…うわ…)」

 会社で何やってんの、でもオフィスラブの醍醐味に胸がキュンキュンしてしまう。

 周りには変には見られてないからセーフ、火照る頬を隠しながら昼食を片付けた。
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