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しおりを挟む「ただいまー」
そう挨拶せども、今夜の彼女の返事は素っ気ない。
「…おかえり」
俺から目線を逸らすどころかまともにこちらを向いてもくれず、ショートボブの後頭部がスススと動いて行く。
何かあったのかな、そう思いつつ弁当箱をシンクへ広げる。
俺・智久と有紀は同棲してもうすぐ1年の社会人カップルである。
交際は3年近く、良いところも悪いところも程々に披露し合って、互いの理解を深めつつ将来を考えている最中だ。
まぁ、そんな難しいことを意識している訳ではなくて、ただ好きで別れる理由が無いから交際を続けている。
これは冷えきっているとかドライなことではなく、トキメキも一周して落ち着いた時期だということだ。
記念日はお祝いするしイベントにはご馳走を食べる。
色っぽいなと感じればムラムラするし、当然夜の生活もそれなりにある。
ちょっとしたことで機嫌を窺ったりオロオロしたりしないというだけ、「一緒に暮らしている」という事実は二人にとって「当たり前に愛し合っている」証明なのだ。
彼女はサラッとした性格で、明るく気立の良い女だ。
意見をはっきり主張するタイプだから察してちゃんではないし、諍いはとことん話し合いで解決していく。
ロックバンドが好きで、辛いものが好きで、酒は強いしどちらかと言えばボーイッシュなのかもしれない。
美人なのに化粧っ気が無くて、服装なんかもこだわりが無いそうだ。
俺への態度もサラッとしていて、あまりデレたりしないしセックス中もそこまで乱れない。
比較対象がアダルトビデオと元カノだから参考にならないとは思うが、要するに甘ったるく俺を求めたりしないということだ。
マグロかと言えばそうでもない、誘って拒まれたことは無いし好きな体位は聞けば教えてくれる。
興醒めするような淡白さでもないし、下品な喘ぎ声も出さない。
もっと求めてくれよと思わんでもないが、適度なエロさに概ね満足している。
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