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5・欲と二人連れ
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しおりを挟む「翔くん、モテるんだね」
「…一方的に言い寄られているだけですよ」
「あと、同じ課の女性とも…楽しそうにお話してた」
「そりゃ、職務上会話することも」
そこは「すみません、そんなつもりじゃ」と否定して欲しかった。
仕事だし社会人なんだから好き嫌いに関わらず人に接しなければならない、当たり前に分かっている。それなのにモヤモヤが治らない、私以外と喋らないでなんて無茶を言いそうになる。
目が霞む、頭が割れそうに痛い。瞼が重い、最高にイライラする。
「…翔、」
呼び捨てにすると、翔の顔に緊張が走る。私にはどちらの顔も見せてくれるんだ、優越感に口が緩む。
「翔、お出かけするよ」
「は、い…」
私は彼の手を引き、到着したばかりの鷹丸市方面行きの電車に乗り込んだ。
手を繋いでいるのにラブラブな雰囲気ではない、これは犬を引くリード代わりだ。
「(二人きりになれるとこ、やっぱりあそこしか)」
ひと駅乗れば、郊外のラブホテルが近い。駅から歩けない距離じゃないし、着替えも持っていないがどうでも良かった。
「次で降りるよ」
「…はい」
「行き先とか聞かないの?」
「多香子さんが行きたいなら、どこへでもお供しますよ」
うっとりとした顔、これは私にしか見せない。
他の表情だって私にしか見せて欲しくないな、軽く相槌だけ打って揺れに身を任せる。
翔はどこに行くか検討が付いているのだろうか。今夜が童貞最後の夜かもしれないのに、えらく余裕だ。翔はこれも私にリードさせる気か、私だって未経験の処女だというのに。
体調不良と生理前のイライラと嫉妬のムカムカが、私の考える力を奪う。投げやりになる、諦めてしまう。
「…降りるよ」
電車が駅に着いたら真っ先にホームに降りた。
どこも湿度が高くて嫌になる。
そして記憶を頼りに道を行く、電飾が喧しい高い建物に足がフラフラと吸い込まれる。
「た、多香子さん、これ、ホテルでは」
「そう、色々と考えちゃって」
「何をですか、」
「んー、翔くんとのこと。どうもダメなの、翔くんからアプローチされて付き合ってさ、愛されてる自覚も自信もあるの、でも段々……入るよ」
玄関口に着いたので、話を切り上げてエントランスへと進む。
煌びやかな部屋のパネル、適当に3階の部屋を選んでボタンを押すと右の壁に付けられたエレベーターの扉が開いた。
「多香子さん、もしかして、私からの愛情を疑ってますか?薄まってますか?」
「…それもあるけど、そういうんじゃなくて」
話は部屋に入ってからで良い、エレベーターに乗り込んだら自動的に3階が選択されており扉が閉まる。
浮遊感を少しの間感じてすぐに3階へ到着、目的の部屋のドアの上に設置されたランプが赤く点滅していて分かりやすかった。
「……」
「…そこ寝て、」
部屋に入ると靴を脱いで、存在感しか無いベッドに寝るよう翔に指示する。
彼は黙って上着を脱ぎ、大きなベッドに横たわった。
私も荷物を下ろして深呼吸して、あの茂木に馬鹿にされた無地のカットソーから頭を抜く。
翔は脱衣していく私をアワアワと見つめており、でも寝るよう言われているので動かない。
「翔、抱いてあげる」
下着姿で彼の脚に跨り、ベルトに手を掛ける。
私も処女なのに何を言ってるんだろう、文字通り上位に居るだけで抱いたことになるのだろうか…自分で自分にツッコミを入れる。
「ッ…う、嬉しいですが、その、多香子さんも初めてで、」
「うん、初めて同士…でも私が抱くの。誰にもあげない」
「……多香子さん…?」
スラックスをずらして、ボクサーをずらして。衣類がそのまま拘束具になるから便利で良い。
翔は口では困惑しているようだが下半身は正直に反応している。
「うわ、パンパンじゃん」
見慣れてはいるが強そうなソレに、必死に強がって見せる。
私は翔をリードせねばならない、余裕が無ければならない、怖気付いてはいけない。
「…多香子さんが積極的なので、興奮してしまって…」
「そろそろ良いでしょ…いい歳だし」
「…妥協はいけませんよ、理由があるなら説明を…」
「何だろうね、他のコミュニティに属してる翔くんを見ちゃって、嫉妬してる…が正解かな。あと体調不良でもイライラしてる」
ぺちん、ぺちんと翔のモノを叩く。
ぴくぴくと反応する翔は困り顔で、それでも頬は紅潮しているし逃げやしない。
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