愛の議論は長々と—あなたには理屈じゃ敵わない—

茜琉ぴーたん

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5・欲と二人連れ

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「嫉妬は有り難いんですが、えっと…電話で言っていた体調不良ですか?病院にかかって下さいと言っているのに…薬は?」
「鎮痛剤が効かないの。でもただの頭痛と熱っ気と眠気とイライラするだけ。やってられない程じゃない」
「だから満身創痍じゃないですか…多香子さん、それを私にぶつけるのは良くないです。ご自身の身体を労わらなければ」
 なによ良い子ぶっちゃって…
「…翔くんばっかり、大人にならないで」
素直に告げると、翔は「へ?」と眉尻を下げる。
「学生時代はあんなにワンワン懐いてたくせに、今じゃ私の方がワガママ言ってる。私のことが好きだって言うなら抱いてくれたら良いのに、全然だし…清い関係とか、そんなの…臆病なだけでしょ、早漏だってバレてんだから、清々しく抱いてくれたら良いじゃん!」
「カッコつけてる訳じゃないです、自分だけの問題ではないから自制してるんです」
「ヘタレ、バカ、変態なんだから暴走しなよ、なんで、翔くんが好きになったくせに、私からアプローチしなきゃなんないの、なんでこんなに好きになんなきゃいけないの、理屈が分かんない、あーもう、頭痛い!」
 つーっと私の頬に涙が流れると、翔はがばと起き上がり私を抱き締めた。彼の腹は少し冷えていて、でも肌を合わせるとすぐに温かくなる。
「…すみません、そこまで思い詰めてらっしゃるとは…」
「私だって、翔くんと、仲良くしたい、でも、リードしなきゃ、でも結婚するまでシないとか言うし、襲ったら説教してくるし、もぉ、解釈通りなんて出来ない、勝手に惚れたくせに解釈押し付けないでよ!私だって甘えたい、強い女なんかじゃないい!」
「すみません、私が日和ひよっているから…でも、一線は越えられません、ポリシーなので」
 ぐだぐだと煩い、私のショーツに当たったままガチガチのくせに。しょりしょりと腰を揺らせば、翔は時折白目になる。
「素股未満でも、こんななってるじゃん」
「生理現象です…動かないで下さい…」
「手コキも太ももコキもして来てるのに、一線も何も無いでしょ。むしろ生殖に関係無いことの方が不純だと思うけど?」
「…ぐうの音も出ませんよ、でも、」
 もうイライラはピークである。下着姿で乗ってやってるというのに喜びを見せないし、褒めてくれもしない。シンプルがどうとか言っていたが、私は着衣のままが最も艶やかさを発揮するのだろうか。
「(もう、良いや…幻滅されても)」
 翔に嫌われても他に候補はいないし、だったら幸せになる可能性が高いこの人に初めてをあげたい。
 いや、彼の初めてを貰うのか、どっちでも良いかと翔の腕を剥がして胸をトンと押す。
「え、」
「寝て?翔、目も瞑って…あ、メガネ取るね」
「あ、はい…あの、し、シませんからね、」
「(そう思うなら私を力尽くで退かせば良いのに)」
 奪った眼鏡はベッドサイドに置くことにする、膝立ちになるとマットレスが沈む。
 こんな夜になると思っていなかったから、勝負下着でもない…その普段使いのショーツを、膝立ちついでにズラし右脚から抜く。
 目を閉じた翔は私の体勢の変化に怯えつつも、言いつけを守って動かない。
「(投げやりで良くないね、でも…初めてを棄てて、思い出に残れば…お互い忘れられない人になれるね)」

 ぴんと天井に向けて立つ翔のモノに、ピタッと剥き身の股を合わせる。
「あッ…⁉︎多香子さ、」
「ステイよ、翔」
「あの、いけません、私、せめてコンドームを、」
「やめてとは言わないんだ?ちょっとは楽しみたいんだよね?翔も」
 小さく声にならない声で言い訳を唱えて、翔は首を横に振る。
 ずり、ずり、と擦れば私の方から体液が滲んできて、摩擦が少なく滑らかになる。
「あッ…いけませ、ん…」
「腰、振れてるよ」
「そんな、ことッ…」
 言葉責めは品位を落とさぬように、礼を欠かぬように。翔が好きなように攻めてあげたい、翔が好きな私を見せてあげたい。
「(でもね、私も人形じゃないから)」
 吹っ切れて頭のネジが飛んだ私を、もう止められない。
 どうせ嫌われるのならお土産くらい貰っておきたい、経験という名の独りでは得難いお土産を。
「…多香子さん…?」
私が静かになると、挙動を怪しんで翔の手が私を探しに来る。
 手首を掴ませてやると少し安心して、でもベッドのきしみと視界の暗さに翔も静かになった。
「翔、好きだよ」
「わ、私もです…」
「目は開けないでね、近眼だから見えないだろうけど」
「……あ、」
先端にちょん、と湿りが当たったものだから、翔の身体がガチンと強張る。
 中腰で翔を迎え入れようと私は少しずつ屈んで、その痛みに微かな悲鳴をあげた。ここくらいから処女膜と呼ばれるヒダに当たるのか、知識と経験が合致していく感覚は何時でも楽しいものだ。
 馬乗りにされた翔はアワアワと、
「多香子さん、いけません、避妊を、あの、着けていませんから、」
とまだ私の身体を心配している。
 たぶん、全て入ったらその快感で早漏な翔はすぐに果ててしまう。だから避妊をしなければ、と喚いているのだ。
 こっちだって分かっている、たった一度の性行為で子を成した人の話だって聞いたことがある。それでも良い、と覚悟を決めているのだ。
 湿気と体調不良とイライラと嫉妬と…甲斐性のない翔を打破したい、思考もモラルも飛ばして極端な方法で楽になりたい。
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