愛の議論は長々と—あなたには理屈じゃ敵わない—

茜琉ぴーたん

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5・欲と二人連れ

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「コンドームも、頼めるんですね…便利です」
「しかも番号でね。内線で翔に言わせたかったな、『コンドーム下さい』って」
「そういう羞恥系の虐げは好きではないですよ…」
 フロントにお願いした大きめのスキンが届き、翔は渋い顔でジッパーバッグを開封する。知識自体はあるのか、手早く裏表を確認してピリピリ開いた。
「…見ない方が良い?」
「すみません、格好悪いので…」
「うん」
ベッドに寝転び、私は私で潤滑剤を準備する。
 翔は私の裸体をチラチラ見ては、モノの強度を上げているらしかった。
 正常位で私を見下ろし、翔は頑張れるのか。やってみなければ分からない、だからしたい。
「そういえば、最近は鼻血出てないね」
「…そう、ですね…それも経験でしょうかね」
「(もしかして、毎晩の自慰電話で鍛えられて…?)」
「…付け焼き刃の知識で、申し訳ないのですが」
装着し終わった翔の真っ赤な顔が、視界を遮る。
「…うん、」
「失敗しても笑わないで下さい、早くても…嫌いにならないで下さい」
「ならないよ、さっきだってカッコ良かった」
「…ありがとうございます」
 翔は私の脚を担ぎ、間に体を入れる。
 改めて女性器を見て一瞬白目になって、しかし
「ここですよね…参ります、」
と先端の照準を合わせた。
「あッ」
潤滑剤を付け過ぎたか、一気に奥まで詰まって喉が締まるような感覚に陥る。
 みっちり、肉が胎に収まって身動きが取れない。
「すみません、勢い良く…痛く、ないですか…」
「だいじょぶ…翔くんは?平気?」
 今ひとつ表情の作り方を決めあぐねていると、引きった頬に大きな手が触れる。
「…平気です…お綺麗です、多香子さん…すみません、動くと出てしまいそうで…」
「うん、ゆっくり、しよ…」
 最初の対面座位は、突くという攻撃が無かったために静かに繋がっていられた。けれどあからさまなセックス、正常位は攻守がはっきりしていて私は後者なのだ。
「(おっき…)」
 正直、これで動かれたら内臓を破りそうで恐い。破る訳は無いのだが、子宮を押されて体が防御体勢を取ろうと筋肉が強張る。
 素直に快感に浸りたいが、無茶をされて体が壊れそうで恐い。
「…その困惑された顔、出逢った頃のようでゾクゾクしますね」
「へぇ…?」
「私を警戒している目、堪りません」
「勝手な解釈…ッ…はぁ…」
 じくじくじわじわ、馴染んだ所から快感が押し寄せて来る。
 少しなら動いて欲しい、でも恐い。私が動けば操作しやすいかも、でも翔も動いたら意図せぬ深さになって苦しいかも。
 奥をツンツンと突かれてムズムズする、余白無く詰め込まれた肉の存在感が増している気がする。
「多香子さんッ…好きです、愛しています、」
「…ふえ…」
「あー…締め過ぎです、多香子さんッ…」
「(翔くんのが大っきいの、やばぁ、みちみち、いっぱい…好き…)」
 本音を言うと、痛みと根源的な恐怖によってそこまで快感は無い。ビギナーだし、そんなものなのかもしれない。
 しかし恍惚に浸る翔の表情を見上げているだけで、幸福が押し寄せて堪らなくなる。
「す、きッ…翔くん、好きッ…」
「あ、多香子さ、んッ…あーもう、終わってしまう、嫌だ、まだ、」
「時間はあるから、」
「あッ…もぉッ……たか、こ、さ…ッ♡♡♡」
気持ち良さを知る前に、翔は果ててしまった。
 正味5分も経っていない気がする。

「…大丈夫?」
「抜き、ますから……もう、どうしてこうも…ポンコツなんでしょう、せっかく、せっかく多香子さんと…」
引き抜いてスキンを外し、翔はガラにもなくそれを床に叩き付けた。
 漏れてカーペットを汚してはいけない、私は慌てて起き上がりクタクタのスキンを拾う。
「翔くん、落ち着いて…頑張ったじゃない」
「こんな、こんな…情けないです、恥ずかしいです…」
「改善するかもしれないじゃん…他の人に知られることじゃないんだから、私しか知らないんだから良しとしようよ」
 翔が早漏であることは既知なので、今さら驚きも幻滅もしない。本人が悔しいのも分かるが、私としては予想通りで妥当というところだ。
「多香子さんに、知られるのが、嫌なんですよぉ…」
「大丈夫だよ、ほら、カップルの醍醐味ってセックスだけじゃないし…私もね、正直あんまり分かんないというか、セックスの楽しみ方って言うのかな、うん」
「それは私が、満足させられる程にたなかったからでぇ」
「だから、これからだって!その…知らないこと知れた、セックスはクリアで良いじゃん。知的好奇心が満たされた。ここから技を磨くでも良いし、他のことを試すでも良いし…始めたばっかなんだから」

 よしよしと慰めると、翔は私の腹に巻き付いてオイオイと泣いた。
 私としては、「こんなもんか」という拍子抜け感が否めない。
 でも体はともかく心は高揚していた、確かに濡れて心臓が締め付けられるように苦しかった。私は性行為というものに興味があり試してみたかった、それが叶って充分満足している。
 そもそもこれまで処女だったので過度に助平なタイプでもないだろう。翔に触れられたいと願ったことはあれど、セックスしてみたいと思ったことはあれど…気持ち良くなりたいとは欲していなかったと思う。
「(心は繋がれたから満足しちゃった…次は妊娠と出産だな)」
 元々が性行為に関心の薄い人間なのかも、自慰も数えるくらいしかしたことが無いし。

「多香子さん、必ず…」
「うん?」
「経験を積んで、多香子さんに至福の快楽を味合わせて差し上げますから…頑張りますから…」
ズビズビと鼻を啜って、翔が次なる目標を宣言する。
 えらく大きいことを目指すのだなぁ、私は彼の背中を摩って
「知らないことを知るの、ワクワクするね」
と、さりげない応援に留めるのだった。



つづく
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