45 / 54
7・思う仲に口さすな
45
しかし私たちの背後から茂木の最後っ屁が投げ付けられた。
「なによぉ!勉強しかしてないT大のモテない同士がくっ付いただけで、こんなに騒いじゃってさ!どうせ他に相手がいなかったんでしょ、だからガリ勉同士でくっ付いただけでしょ、狭い世界でカワイソ、惨めだなぁ、選べないって!私だったら沢山の相手の中から一番良い人を選べるんだからぁ!」
「…しつこいですね」
言葉こそ強いが、見上げた翔はもう怒ってはいなかった。
そして私も、茂木の意見には概ね同意だ。私は翔の手に手を重ねて、茂木へと振り返る。
可愛い顔がくしゃくしゃになって可哀想だ、私たちの反論次第ではもっと荒れるのかもしれない。
でもどうせなら見てみようか、翔を手で制止して口を開く。
「…茂木さん、悪口のつもりで言ったんだろうけど、それって事実だから痛手にはならないよ」
「は?………はぁ?」
茂木は肩を別の職員さんに押さえられ、振り乱したのか髪飾りがプランと耳の横まで垂れている。
「いや、私がガリ勉でモテないのもその通りで、訂正するとすれば翔くんはそうじゃないってことくらいで。翔くんは秀才だしモテるから」
「……」
「告白されたの初めてだし、選ぶも何も私には翔くんしか知らない訳で。選べる幸せは分かるけど、他を知らないからお互いがベストな相手なんだよ。私としては見初めてもらえてラッキー、だね」
自分がモテないことも敷居が高いと敬遠されていることも知っている、でも私が良いと選んでくれた人がいる。その人を差し置いて他の誰かを探しに出ることに意味は無い、私にはその筋の探究心が無いのだ。
「大学っていう狭いコミュニティで出逢ったからおっしゃる通りだし、でもおかげで話が合うから…可哀想っていうのは違うかな。茂木さん、恋愛体質じゃない人間もいるんだよ、モテたいとかばっかり考えて生きてない人間って。だから茂木さんも色んな経験をしてさ、自分とは違う価値観とか知ってみるのが良いんじゃないかな…じゃ、楽しんで行ってね」
翔が当初私に言った「知的レベルが合わないと会話が通じずストレスが生まれる」という趣旨を角を取って丸くして伝えたつもりだ。私も意識していなかったが、茂木と接していて感じるこのストレスは知的指数の差によるものなのかなと…断定するのは性格が悪過ぎるだろうか。
唖然とする茂木に理学部の面々が注意をし、総務課の管理職も渋い顔をしている。
ともあれ私はドレスの裾を翻し、再び茂木に背を向ける。
「学歴を鼻に掛けるのは品が無いと思って抑えたつもりなんですが…下品だったでしょうか」
小声で囁いた翔はいたずらっ子みたいに唇を尖らせて、しかし目を泳がせる。
穏やかで人に怒ったりしない人だから、割と労力を消費したし後悔もあるみたいだ。
「でも話が合わないでしょ?学力だけじゃない、学んできたことと見てきたもの、接したコミュニティが違う…悪いことじゃないよ、自然に住み分けしてるだけ」
「ですよねぇ、私は茂木さんを差別したりはしませんから…ただ、一緒に居て話は弾みませんし、多香子さんを貶めることを言うのでイラっとしましたね。あと、私のスペックに釣られているのが見え見えで…苦手なタイプです」
「うん…庇ってくれてありがとね、帰ったらいっぱい褒めてあげるから」
「…はい♡」
実際、学歴から算出した偏差値で見ると、世間のほとんどの人より私たちは優れている。でも何に役立つか未知数な研究をする私よりも、目に見えるモノづくりをしている人の方が多くの人の役に立っているとも思う。
そんな私をつまらない人と指摘するのは簡単で、でもこの知能から偉大な発見や発明が生まれるかもしれないから仕事になっている訳で。
比べることがナンセンスで、それは可愛さも然りだ。茂木を可愛いと思う男性もいるのだから、そちらでチヤホヤしてもらえば良いのだ。
「(第一印象が悪くても最終的に結婚しちゃうカップルがここにいるから、脈無しでもアタックするのは大事なことなんだけどね)」
でも茂木の相手は翔じゃないの、それが伝わっていれば良い。
そこから私たちは別のコミュニティへ移動、祝福の言葉を浴びて心が浄化されるようだった。
あなたにおすすめの小説
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
悪女と呼ばれた王妃
アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。
処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。
まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。
私一人処刑すれば済む話なのに。
それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。
目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。
私はただ、
貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。
貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、
ただ護りたかっただけ…。
だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ ゆるい設定です。
❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。
貴方の腕に囚われて
鏡野ゆう
恋愛
限られた予算の中で頭を悩ませながら隊員達の為に食事を作るのは、陸上自衛隊駐屯地業務隊の補給科糧食班。
その班員である音無美景は少しばかり変った心意気で入隊した変わり種。そんな彼女の前に現れたのは新しくやってきた新任幹部森永二尉だった。
世界最強の料理人を目指す彼女と、そんな彼女をとっ捕まえたと思った彼のお話。
奈緒と信吾さんの息子、渉君のお話です。さすがカエルの子はカエル?!
※修正中なので、渉君の階級が前後エピソードで違っている箇所があります。
フッてくれてありがとう
nanahi
恋愛
【25th Anniversary CUP】にて、最終ランキング3位に入りました。投票してくださった皆様、読んでくださった皆様、ありがとうございました!
「子どもができたんだ」
ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。
「誰の」
私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。
でも私は知っている。
大学生時代の元カノだ。
「じゃあ。元気で」
彼からは謝罪の一言さえなかった。
下を向き、私はひたすら涙を流した。
それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。
過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──
「職場では隙のない完璧な先輩が、家ではゆるニットで甘えてくる。それでも彼女は、まだ俺の恋人じゃない」
まさき
恋愛
会社では完璧で、誰も近づけない先輩。
そんな彼女と、俺は同じ部屋で暮らしている。
「…おかえり」
ゆるニット姿の彼女は、家でだけ甘い声を出す。
近い。甘い。それでも――
「ちゃんと付き合ってから」
彼女は知っている。自分が好きになりすぎることを。
嫌われるのが怖くて、迷惑になるのが怖くて。
だから一歩手前で、いつも笑って止まる。
最初から好きなくせに、言えない彼女と。
気づいているのに、待っている俺の話。
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
ズボラ上司の甘い罠
松田丹子(まつだにこ)
恋愛
小松春菜の上司、小野田は、無精髭に瓶底眼鏡、乱れた髪にゆるいネクタイ。
仕事はできる人なのに、あまりにももったいない!
かと思えば、イメチェンして来た課長はタイプど真ん中。
やばい。見惚れる。一体これで仕事になるのか?
上司の魅力から逃れようとしながら逃れきれず溺愛される、自分に自信のないフツーの女子の話。になる予定。