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7・思う仲に口さすな
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しおりを挟むしかし私たちの背後から茂木の最後っ屁が投げ付けられた。
「なによぉ!勉強しかしてないT大のモテない同士がくっ付いただけで、こんなに騒いじゃってさ!どうせ他に相手がいなかったんでしょ、だからガリ勉同士でくっ付いただけでしょ、狭い世界でカワイソ、惨めだなぁ、選べないって!私だったら沢山の相手の中から一番良い人を選べるんだからぁ!」
「…しつこいですね」
言葉こそ強いが、見上げた翔はもう怒ってはいなかった。
そして私も、茂木の意見には概ね同意だ。私は翔の手に手を重ねて、茂木へと振り返る。
可愛い顔がくしゃくしゃになって可哀想だ、私たちの反論次第ではもっと荒れるのかもしれない。
でもどうせなら見てみようか、翔を手で制止して口を開く。
「…茂木さん、悪口のつもりで言ったんだろうけど、それって事実だから痛手にはならないよ」
「は?………はぁ?」
茂木は肩を別の職員さんに押さえられ、振り乱したのか髪飾りがプランと耳の横まで垂れている。
「いや、私がガリ勉でモテないのもその通りで、訂正するとすれば翔くんはそうじゃないってことくらいで。翔くんは秀才だしモテるから」
「……」
「告白されたの初めてだし、選ぶも何も私には翔くんしか知らない訳で。選べる幸せは分かるけど、他を知らないからお互いがベストな相手なんだよ。私としては見初めてもらえてラッキー、だね」
自分がモテないことも敷居が高いと敬遠されていることも知っている、でも私が良いと選んでくれた人がいる。その人を差し置いて他の誰かを探しに出ることに意味は無い、私にはその筋の探究心が無いのだ。
「大学っていう狭いコミュニティで出逢ったからおっしゃる通りだし、でもおかげで話が合うから…可哀想っていうのは違うかな。茂木さん、恋愛体質じゃない人間もいるんだよ、モテたいとかばっかり考えて生きてない人間って。だから茂木さんも色んな経験をしてさ、自分とは違う価値観とか知ってみるのが良いんじゃないかな…じゃ、楽しんで行ってね」
翔が当初私に言った「知的レベルが合わないと会話が通じずストレスが生まれる」という趣旨を角を取って丸くして伝えたつもりだ。私も意識していなかったが、茂木と接していて感じるこのストレスは知的指数の差によるものなのかなと…断定するのは性格が悪過ぎるだろうか。
唖然とする茂木に理学部の面々が注意をし、総務課の管理職も渋い顔をしている。
ともあれ私はドレスの裾を翻し、再び茂木に背を向ける。
「学歴を鼻に掛けるのは品が無いと思って抑えたつもりなんですが…下品だったでしょうか」
小声で囁いた翔はいたずらっ子みたいに唇を尖らせて、しかし目を泳がせる。
穏やかで人に怒ったりしない人だから、割と労力を消費したし後悔もあるみたいだ。
「でも話が合わないでしょ?学力だけじゃない、学んできたことと見てきたもの、接したコミュニティが違う…悪いことじゃないよ、自然に住み分けしてるだけ」
「ですよねぇ、私は茂木さんを差別したりはしませんから…ただ、一緒に居て話は弾みませんし、多香子さんを貶めることを言うのでイラっとしましたね。あと、私のスペックに釣られているのが見え見えで…苦手なタイプです」
「うん…庇ってくれてありがとね、帰ったらいっぱい褒めてあげるから」
「…はい♡」
実際、学歴から算出した偏差値で見ると、世間のほとんどの人より私たちは優れている。でも何に役立つか未知数な研究をする私よりも、目に見えるモノづくりをしている人の方が多くの人の役に立っているとも思う。
そんな私をつまらない人と指摘するのは簡単で、でもこの知能から偉大な発見や発明が生まれるかもしれないから仕事になっている訳で。
比べることがナンセンスで、それは可愛さも然りだ。茂木を可愛いと思う男性もいるのだから、そちらでチヤホヤしてもらえば良いのだ。
「(第一印象が悪くても最終的に結婚しちゃうカップルがここにいるから、脈無しでもアタックするのは大事なことなんだけどね)」
でも茂木の相手は翔じゃないの、それが伝わっていれば良い。
そこから私たちは別のコミュニティへ移動、祝福の言葉を浴びて心が浄化されるようだった。
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