恋を知らないセクレタリー・ドール…心が無くても雇っていただけますか?

茜琉ぴーたん

文字の大きさ
22 / 51
7章…契約の不履行

22

しおりを挟む

 エレベーターで上階へ上がり部屋へと入れば、扉のオートロックの「カチン」という音が鳴ると同時に和臣さんの首元へと腕を絡めた。
 しっとりと悲恋系の展開も考えたが妻への不義理を看過できる人ではない、私の味を覚えさせたままずるずる決断を先延ばしにさせようかと思う。
 不倫をする人が何も悪人とは限らない、優柔不断だったり愛を潤沢に持っていたりするだけで本妻を蔑ろにする人ばかりでもない。一夫多妻でどうにかいけないだろうか、体を使って懐柔してみることにした。
「おい、聖良、なに…やめなさい、今は真剣な話を」
「そんな恐い顔をしていてはまとまる話もまとまりませんわ、一旦繋がって、お話し合いをしましょう」
「やめ、おい、やめないか!」
「和臣さま、強引な女がお好きでしょう?興奮してらっしゃる」
 上等なスーツがシワにならないよう脱ぎ落とさせてシャツとトランクスの惨めな姿に、私も半端にドレスを着崩して乳房をこぼす。そうよ貴方は私が好きなんですもの、私がまたがり可愛がってあげればつるんと私の中へと収まってくれるはず。
 この話し合いは騎乗位で決める、ベッドへ押し倒して馬乗りになれば彼の股間は更に盛り上がって…
「襲われるセックス、お好きですよね?」
と局部同士を擦り付ければ和臣さんは情けなくとろける表情で口を開けてしまった。
「あ、きよら」
「お好きでしょう?騎乗位」
「やめ、あ、聖良…あ、」
「女の私に抵抗なさらないんですもの…本当は、こうして強気に襲われるのがお好きなんですよね」
「なにを、言って、あ、あ、」
図星を突かれた和臣さんは耳まで真っ赤になって私を下ろそうと掴み掛かる。
 私が「あん」と嫌がればすごすごとその手を離してもどかしく指を擦り合わせる。
 冷静な議論なんて要らない、どちらに転んでも立場を失う危険があるならば楽な方を選ばせてもらおうか…そう思ったその時、
「きよ、ら、僕は、君が立場を気にして別れると言うなら…議員なんかならない、県議も諦める!」
と私の今後を左右する爆弾を投げつけられた。
「は、何を…」
「立場がどうとか、身分がどうとか、気にするなら僕は民間企業に就いてそんなもの関係無くしてやる、」
「えぇー…」
 それでは困る、和臣さんが何を経てでも国会議員になってもらわなければご隠居の望みが叶わないことになる。
 それは即ち契約の不履行に繋がる重大な問題、私が愛人になろうがなるまいが議員先生になってくれなければ私はお払い箱になり契約金を借金として負わされてしまう。
 これはまずい。和臣さん自身が議員を目指しているからそこは揺らがないと思っていたのに、たかだか恋人のために投げ打つなんて愚かなことをするなど想定外だった。

「何だその反応は、君は僕が議員にならなけりゃ無価値だと思っていたか?」
「そういう訳では…ないですが…」
 嘘です、無価値は言い過ぎですが議員先生になってくださらなければご隠居とのそもそもの契約の土台が崩れてしまうんです。ここの説明を端折はしょるのは難しい、いち秘書の私がここまで出馬にこだわるなんておかしいし。
「(国会議員になること前提の契約なんだもんな…民間だと愛人の世間体とかあんまり関係無いし…)」

 私も交際が長くなって油断が出ていたか、ぐるぐると考えに考えて、しかし騎乗はやめずむにょむにょと微動を繰り返しやっと口を開く。
「…和臣さま、実は私、ご隠居さまに頼まれて派遣された者なんです」
「…は、じいちゃんの?」
 ここに来て全く関係無いであろう祖父の登場に、私の陰部に挟まる和臣さんは少しだけ萎えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

処理中です...