恋を知らないセクレタリー・ドール…心が無くても雇っていただけますか？

14章…悪い人

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　産前産後は和臣さんの実家のお世話になり、奥さまをはじめお手伝いさんの手を借りて不安な時期もなんとか乗り越えられた。
　週末の度に和臣さんも伸夫先生も帰省して来て赤ん坊の世話を焼く、皆に望まれて生まれてきたこの子が誇らしくて愛しくて堪らない。
「聖良、辛くないか？」
「いえ、皆さんが助けて下さるのでちっとも」
「体もそうだが気持ちも…」
「愛せています、和臣さん。私はこの子を立派に育てて…和臣さんがご隠居さまの望みを叶えるのを見届けてみせますわ」
「そうか…頼もしい妻だな、さすが優秀な秘書だっただけはある」
　そうね、人の望みなんて知ったことではないけれど、私はこの子や家族のために残りの人生を費やしてやる。腕の中の息子は和臣さんや伸夫先生や奥さまの血を引いてきっと真っ直ぐ育ってくれる、そう信じるしそうなるよう努める。　
　人間の育ちは血には左右されない。ここに大きな矛盾が生じるけれど私は都合の良い方を信用することにした。
「和臣さんの実直さとお父さんの朗ほがらかさ、お母さんの穏やかなところと…私の努力家なところが似れば良いですわね」
　私がそう言えば、和臣さんも「そうだね」と頬を撫でて温かな口付けをくれた。