負けないふたり、勝てないふたり〜最強剣士の弱いとこ〜

茜琉ぴーたん

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1・負けず嫌いのめぐとめぐ

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「大丈夫?萌…」
くてっと天井を仰ぎ、周は私の頬を突っつく。
 私は腰が立たず、抜かれた状態のまま脚も閉じられない。
「らいじょーぶ……あの、周、すっごいんだね…」
「鍛錬の賜物だよね…でも僕は萌の体しか知らないから、そこだけ攻略対象にすれば良い訳だから効率が良い」
「…他の子が気になったりしない?」
 周はそこそこイケメンだし、高学歴で高身長だし実家も太い。私と交際していると周知だった学生時代にも、色んな女子からアプローチを受けている。
 今も受け持っている生徒の間では大人気だそうで、バレンタインには早熟な女子からのチョコレートを持ち帰ったりしていた。
 彼は私の初恋相手で、もちろん大切なパートナーだ。関係を長く続けていきたいが、私の身に余るような気もする。

「無い、僕は一途なタイプみたいだね」
 ようやく膝を閉じて倒したら、その太ももに頑丈な腕が乗る。
「…好きだよ、周」
「僕も好きだよ、萌…そろそろ、一緒に住まない?」
 彼からの申し出に、ぽかんと口が開く。
 私は職場からほど近い距離にアパートを借りており、周は学校横の教職員用社宅に住んでいる。附属校の敷地内には運動部員用の学生寮があり、練習に参加しやすいということで周は社宅住まいを決めた。
 一方私も社宅に住む資格はあったのだが、社宅を行き来するところを他の職員に見られるのもよろしくないので外部アパートにした。学校横だと生徒に見られるかもしれないし、身近な大人の素の生活部分を見てしまうと情緒が乱れる子もいるそうで、それは思春期の少年少女への配慮であった。
 まぁとにかく、プライベートは独立させたいということで離れて暮らしているのだ。

「…良いの?」
「独り暮らし飽きた。もし一緒に出入りするところを見られたとしても仕方ないよ…自分に制限かけるつもりでこうしてたけど、いよいよって感じかな」
「…何の制限よ」
「ん?んー…分かるでしょ」
 最初よりゆるゆるになった周の顔が、視界を塞ぐ。
 こんなに欲してくれる好意と情熱を隠していたなんて、勿体無くて狡くて憎らしい。
「…毎晩とかシそうで恐いなぁ」
「休み前夜は燃えるかもね」
「だんだん、奥も慣れて…味気なくなっちゃうのかな」
「どうだろうね…じゃあ緩急つけて、こってりの日とあっさりの日を作ろうか」
「計画的だね、さすが先生」
 「でしょ」と周はしたり顔で笑い、私をコロンとうつ伏せにさせた。
 そして2回戦目へ、正常位よりダイレクトに突かれる後背位は腰も脳も痺れた。


 3度目は乗らされて騎乗位、私は情けなく「無理ィ」と泣いてしまった。
「負けそう?」
「な、にィ?」
「ち◯ぽに負けそう、でしょ」
「負け、たくないィ…」
「そのメンタルが、好きなんだぁ、萌」
 彼は私の負けず嫌いで勝ちに拘るところが好きで、でも泣くところも好きらしい。
 でもでも他の人に負かされるところは見たくない、だから勝って欲しい…負かすのは自分だけで良いと歪んだ思考に辿り着いたようだ。
「まげ、ぢゃゔッ…」
「何にィ?」
「周の、大っきいの、に、負け、ちゃうッ…」
「あ?ちゃんと言って、先生に教えて、」
「ッ…急に、先生ぶらなッ…あ、らめ、突からいれッ」
 何のスイッチが入ったのか深夜テンションなのか、周は教師モードになって私を虐めだした。
 彼の一人称は"僕"だけど、学校では自身のことを"先生"と自称している。眠かったり判断力が鈍っている時にはうっかり「先生は…っと、僕は、」と言い直したりするのが面白い。
 周は国内最難関の大学を出ているし体格も大きいし剣を持てば強いしで、私が彼より優っている点は無い。
 けれど決して私を軽んじたり馬鹿にしたりはしないのだが、こと今夜のセックスに関しては私を下に見ている。蔑むではなく見下すでもなく、弄って良い対象としている。
 つまりは彼はSで、私もそれを受け入れている。
 私は元より負けず嫌いなので屈することはストレスなのだが…今夜の周の虐めは嫌じゃない。暴力的ではない、むしろ可愛がってくれている。
 強いて言うなら微Sとか、甘サドとか、そんなところだろうか。
 お互い好き同士のセックスなのにイチャラブ感が薄いのは、性格だから仕方あるまい。淡々とサラッと、しかし強情で熱心な周が私はやはり好きだ。

「突きは、萌は得意だよね?」
「ぞれは、わだしがッ、する方ッ…ばか、お願い、倒れちゃう、」
「だーめ、イくまでやめない」
「いじわる、ばか、」
「先生の竹刀、硬いでしょー」
「ばかッ!」
 くだらないジョークに冷めたり罵倒したり、いまひとつ集中し切れぬまま騎乗は続く。

 時計は深夜2時を回り、騎乗位が対面座位になり正常位に返され。
「(気持ち良いのがずっと、でも、イくのって分かんない、)」
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