負けないふたり、勝てないふたり〜最強剣士の弱いとこ〜

茜琉ぴーたん

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1・負けず嫌いのめぐとめぐ

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 既に2発出している周はまだまだ元気で、回を追うごとに達するまでの時間が長くなることは私も知っている。
 稽古の鬼な周が途中で辞めないのは分かっていたので、私もどうにか終着点を作ってあげねばと試行錯誤する。
「周、あの、私、イけないだろうし、手とかで、」
「僕は充分イった、萌を悦くしたい…こういうのは?」
「ふぐッ」
脚を高々と担がれ、腹から情けない声が漏れた。
 突かれる場所が変わって、新たな波に翻弄される。潮吹きに似ている感触、膀胱が押されてむず痒い。
「ん、これ良いんだ?キツい」
「はわ、やらよ、また、れちゃう、」
「あー、良いよ、濡れても」
「私が、ヤなんだって、ば、ぁ、あ、」
 何かがちょろちょろ流れている感覚がして、シーツの冷たさが甦る。
 マットレスは洗えないのにどうしてくれるの、私が翌朝の心配をしていると付け込むように周は動く。
「ベッドの心配してるでしょ、だめ、僕に集中して、」
「らって、せんたく、」
「新しいベッド買おう、大っきいの、毎晩、一緒に寝よう、ッあー、最高…またイキそ、僕ばっかりダメなのに、萌、イカせたいよ、大好きだから、」
「(あ、)」
 鍛錬大好きで自己研鑽に余念の無い、周の見せる甘い顔。私を甘やかすことはあっても滅多に甘えて来ない彼の、自信なさげな眼差し。
 強者のよわよわな部分に、寝不足な私は簡単に呑まれてしまう。きゅうっと、下が締まるのが分かる。浅い所から深い所へ、誘い込もうと腰が振れる。
 周は当然、私の意図に気付いたようだった。
「めぐ、エッチ、かぁいい、マジで、好きだよ、ごめん、意地悪して、めちゃくちゃにして、ごめん、やめらんなくて、ごめんね、」
 私の脚を下ろして、抱き枕のように丸太のように厚い体が私を包む。彼の体に私がすっぽり収まっているみたい、取り込まれて生気を吸われている感覚だ。
 瞳はうるうるとして、厳つい眉尻は下がって。
 くたくたの両脚でしがみ付いて、彼の太い首に手を回す。
「大丈夫だよ、周、私も好きだよ、」
「力不足で、ごめんね、もォ、あー、クソ、」
 少年の頃みたいに口悪く、周は自身を貶める。
 これまで先に果てる姿は山ほど見て来たけれど、こんなに悔しさを表に出されることは初めてだ。きっと毎度我慢していたのだろう、彼の努力には頭が下がる。
 そして恐らく周も眠気と疲れがピークなのだ、でなければこんなに弱気にはなるまい。早寝早起きが信条の彼なので、夜通しのセックスなんてイレギュラーが過ぎるのだ。
「(こういうところも、可愛い)」
 強い弱いで語れる単純な関係などそうそう無く、強い彼にも弱い部分がある。
 強がりな私にも弱いところはあり、それは心の部分だったりこうして責められる点だったりする。
 強さも弱さも混在してるんだな、汗でびしゃびしゃの周と頬同士を合わせて吐息に耳を澄ませる。

「めぐ、あー、めぐ、めぐ」
「(なんだろ、あ、ポルチオ、と、奥ッ…)」
 シチュエーションとしては羽交締め、俯瞰で見た自分を想像する。激しく打ち込まれて抵抗せず、優しく受け止めているようで身動きは取れず。
「(受け止め合ってる、気持ち、いッ……あ、)」
 尻の冷たさにちょっぴりの嫌悪感を抱き、無意識に接地面積を減らそうと尻を浮かせる。そうすると当たるポイントが変わり、ピタッと合致するような新感覚に陥った。
 開いた股と脚とが噛み合っている、不都合なくこの角度が大正解とばかりにフィットする。外の良いポイントと中のそれが同時に満たされる、内側に周がピッタリ入って満ちていく。
「(奥、疼いて…感じてるのバレる、恥ずい、)」
「萌、あー、積極的なの、すげぇ良い、」
「どォしよ、周、なんか、変な、あの、あの、」
「ん、楽になりな、」
 上からの物言いに、どくん、と胸が高鳴る。経験も根拠も無いくせに、私を昇天させる自信を持って優位に立つ周。
 余裕の無さは様子から言葉からも歴然なのに、この人が言うなら確かなのだと信じたくなる。そうだ、私は昔からこの人のことを信頼している…剣道勝負こそ嘘をつかれていたけども。
 一定のリズムで打たれる中と外、色っぽい声。汗がポタポタと私に移って、シーツにシミを作る。
「周が、いっぱい、」
「んあ?」
「私の中、周で、いっぱい、」
「ん、全部呑み込んでくれて、嬉しいよ、萌…」
「(いっぱい、おちんちんで、いっぱい♡)」
 歯が当たりそうで恐いけれど、口付けたいと目で訴える。
 するとすぐに汲んでくれて、舌から先に、次に唇が触れ合った。
 喰み合う口は互いの一字違いの名を呼んで、愛の言葉に変える。
 好き、大好き、愛してる…高まってスパートをかけた周の腰が一層私に食い込んだ瞬間、ピリピリと耳の辺りが痺れた。
 慣れ親しんだ肌、いつもより強い力。
 溺れる頭には疑問符が並び、押し寄せる波に悲鳴があがる。
 そして
「ッッッあ、あ!」
腰が跳ねて、周の存在感が急激に強くなった。
 要は私の方が収縮して狭くなったからなのだが、私には大きい周が更に膨張したように感じた。
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