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めぐはめぐに負けない
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しおりを挟む高3の現在、部活は夏の大会で仕舞いである。それが済んだら受験対策をせねばならない、いちゃいちゃしている余裕が無くなる。
僕は剣道は好きだけど、ストイックに日本一を目指すとか社会人になっても続けたいとか、高い志がある訳ではない。やるからには一所懸命に取り組むし稽古はやり甲斐があって楽しいが、それ一本に絞れるほど情熱は持っていない。
ちなみに萌も強い剣士だけど、どこか気持ちが切れている気がする。負けず嫌いな本人は決して口にはしないが、自分が全国選手の器か否かは自覚しているのではなかろうか。選手としての剣道を降りて、日々の稽古を楽しみたいのではないかと…僕は勝手に勘繰っている。
そんな訳で夏休み前の今、先んじて童貞を捨てることで雑念を払い、高校最後の試合と夏期講習に集中できるのではないかと考えている。
要は、面倒なことの前にお楽しみをしておいた方が生活に張りが出るのではないかと。
ぶっちゃけ萌を抱きたい、おっぱいを見たい、パンツが見たい。僕は皆が思うほど無骨な剣士ではない、エロいことが好きな男子高校生なのだ。本当は剣道着の萌を押し倒したい、戸惑う顔にキスをしたい。
「(道着、はだけて、おっぱい、匂い、舐めたい、)」
「…周?ボーッとし過ぎ、大丈夫?」
「…あ、うん…あのさ、萌」
僕がヤル気満々でも、萌を突然襲う訳にはいかない。しっかり同意を得て、彼女にも準備をしておいてもらわねばならない。
「…うん?」
きゅるんと揺れる瞳が可愛い、人並みを避けるために駅前の植え込みへと萌を引き寄せた。
「…萌、明日…弟の用事で親は出掛けるんだ」
「うん、」
「うちに…僕と萌だけになる」
繋いだ手を解き、彼女の細い人差し指をぐにぐにと摘んで揉む。
萌は呆気に取られるも、理解したのか
「うん…あ、うん、うん…」
と頬を染めた。
「試合と受験前に…萌と、」
「い、いちゃいちゃ、する、ってこと、かなぁ?違うかな、違ったらごめん、」
「違わない、だから、大丈夫なら、準備しておいて欲しい」
「うん…あの、ご期待に添えるか分かんないけど…うん、」
萌は空いた手も僕のそれに添えてくれ、むにむにと唇を波打たせる。
「かわい」
「えっ?」
「いや、また明日…気を付けてね」
名残惜しいが僕は萌の手を優しく離し、駅舎に背を向ける。
そして学校とも駅とも反対の方向へと走った。
「ばいばーい…」
間の抜けた萌の声を浴びて、カバンを揺らし走る。行き先は繁華街の中の商店街の一角にある薬局である。そこは飲み屋とピンク店の中にあるため、エログッズの品揃えが豊富なのだという。
誰から聞いたかって、剣道部のOBからである。
「(精力剤の幟の存在感が凄いな)」
部活帰りだけど防具は置いて来たし、下は制服だが上はTシャツなので学校はバレまい。
中に入ってみると普通のドラッグストアのようで、中央のカウンターには小柄なお爺さんが座っていた。
「いらっしゃい、何が欲しい?」
「え、っと」
「その年頃だとコンドーム?こっちだよ、そこの棚、」
「あ、はい」
目的がバレバレで恥ずかしいな、しかし萌の安全のために一時の恥は掻き捨てられる。
僕は指し示された棚の方へと回り、ドドンと並んだスキンの量に圧倒された。右隣にはラブグッズというのだろう、オナホールやギラギラしたローションなどが陳列してある。
「…わー」
「贔屓の銘柄は?」
お爺さん店員はカウンターから出て来て、お節介を始める。
「贔屓とかは無くて、あの、」
「……あー、ちょいと失礼」
「え、あ、あ♡」
僕より遥かに小さい老人の手によって、僕は身動きが取れなくなった。
彼は僕の緊張した股間を、小さな手でもぞもぞと触り始めたのだ。
「なるほど、これマックス?」
「え、あ、」
「おー、膨らむ…若いのぅ、ふむ、うちに置いてるのだと、この辺のメーカー、これしっくり来ると思うよ」
「ひゃ…じゃあ、これ、これにします、」
今の時代、インターネットで買えば良いものを、なかなか渋ってポチれなかった。
在庫処分みたいに古いものが届くかもしれないし、それで劣化して萌を危ない目に遭わせたくなかった。
だから現物を見て使用期限を確認してから買おうと思っただけなのに…サイズまで見てもらえるとは。
お爺さんはカウンターに戻り、ピッピッとスキャンして
「1100円ね」
とにこやかに笑う。
「はい、これで」
「はいよ、丁度ね…お兄さん、頑張んなよ」
「はい、お世話になりました…」
紙袋に収められたスキンを持って、そそくさと店を出る。
夕方だからなのか周囲には綺麗なお姉さんがちょろちょろ、腕を組んで歩くカップルも街の奥へと消えて行く。
「(手練れのお爺さんだったな…)」
僕はスキンをカバンの一番下に押し込んで、また駅まで走るのだった。
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