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めぐはめぐに負けない
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しおりを挟む初めての時のことは、良く憶えている。
何って、萌との初セックスのことだ。
高校生の頃のこと。
僕らは美男美女だとか長身カップルだとか、周りからの羨望を受けていた。
「周と萌ちゃん、強くてカッコ良くて、お似合いだよな」
「ありがとう」
否定することは烏滸がましいからスルリといなして、過度な謙遜はしない。
「サラッとしたカップルだよね、二人きりの時はラブラブなの?」
「普通だよ」
そりゃ帰りに手を繋いだりもするさ、僕は萌に弱いところを見せたくないから甘えないけど。
まぁ、内心ではめちゃくちゃ触りたいし、ずっとキスしてたいし、合意の上でセックスもしたい。
そんなことを表には出さず、クールな高校生を気取っていた。
「どしたの、周?」
部活が終わって帰宅途中、萌がいつもの可愛い顔で僕を覗き込む。
夏だし滲んだ汗が額を流れる、それも輝いていて美しい。
「(あー、可愛い。萌、今日も可愛い)」
「調子悪い?」
「……ん、ボーッとしてただけ」
僕たちは決定的な告白もせずにカップルになった。何となくでキスをしたし、どさくさに紛れてハグも済ませた。
ふとした拍子に目が合ったらキスするのが定番で、だけど頻繁じゃない。二人きりじゃなければ出来ないし、そのチャンスはなかなか来ない。僕の家で勉強をして、その休憩中くらいだろうか。
バックハグをして雑談をするくらいにスキンシップは可能になったが…でもその先は、何となくでは進められない。
「疲れたもんね」
「…疲れてない」
「あっそう、強がりなんだから…ん、」
「ん、」
目配せひとつで手を繋ぐ、慣れたものだ。カップル歴は浅くとも、僕らは波長が合うのか行動のノリが読みやすかった。言葉少なでも分かり合える、分かってなくても納得できる。
まぁ分かったフリで寛容に見せる、若者なりの知ったかぶりも含まれていた気がする。萌の第一人者は僕だし、僕の第一人者は萌。
若造なりに人ひとりを所有したみたいな気持ちで、正直優越感があった。
「数学がね、どうも進まなくて」
「んー、見ようか」
「良いの?ありがと」
「ん…明日、部活休みだし…うちで良い?」
「うん、お弁当持って行くね」
「(可愛い)」
住んでいるのは隣町なので、僕らの下校は駅までだ。学校から一番近い駅まで歩きで、それぞれが反対方面行きの電車に乗る。だから彼女の家まで送る、なんてことが残念ながら出来ない。
距離にしてみればそうでもないのだが、勉学にも励まねばならず時間が足りないのだ。
うちは兄2人ともが東京の某有名国立大学に合格しており、上の兄は卒業して隣市でひとり暮らしをしている。次兄は在学中で、2人に倣って僕も、と期待されている。
強いられてはないがプレッシャーが半端ない、毎日吐きそうになりながら竹刀と鉛筆を握っている感じだ。
そんな僕の癒しは言わずもがなの彼女で…僕はそろそろ彼女と一線を超えたいと思っている。
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