負けないふたり、勝てないふたり〜最強剣士の弱いとこ〜

茜琉ぴーたん

文字の大きさ
23 / 27
めぐはめぐに負けない

1

しおりを挟む

 初めての時のことは、良く憶えている。
 何って、めぐむとの初セックスのことだ。

 高校生の頃のこと。
 僕らは美男美女だとか長身カップルだとか、周りからの羨望を受けていた。
めぐると萌ちゃん、強くてカッコ良くて、お似合いだよな」
「ありがとう」
否定することは烏滸おこがましいからスルリといなして、過度な謙遜はしない。
「サラッとしたカップルだよね、二人きりの時はラブラブなの?」
「普通だよ」
そりゃ帰りに手を繋いだりもするさ、僕は萌に弱いところを見せたくないから甘えないけど。
 まぁ、内心ではめちゃくちゃ触りたいし、ずっとキスしてたいし、合意の上でセックスもしたい。
 そんなことを表には出さず、クールな高校生を気取っていた。


「どしたの、周?」
部活が終わって帰宅途中、萌がいつもの可愛い顔で僕を覗き込む。
 夏だし滲んだ汗が額を流れる、それも輝いていて美しい。
「(あー、可愛い。萌、今日も可愛い)」
「調子悪い?」
「……ん、ボーッとしてただけ」
 僕たちは決定的な告白もせずにカップルになった。何となくでキスをしたし、どさくさに紛れてハグも済ませた。
 ふとした拍子に目が合ったらキスするのが定番で、だけど頻繁じゃない。二人きりじゃなければ出来ないし、そのチャンスはなかなか来ない。僕の家で勉強をして、その休憩中くらいだろうか。
 バックハグをして雑談をするくらいにスキンシップは可能になったが…でもその先は、何となくでは進められない。
「疲れたもんね」
「…疲れてない」
「あっそう、強がりなんだから…ん、」
「ん、」
 目配せひとつで手を繋ぐ、慣れたものだ。カップル歴は浅くとも、僕らは波長が合うのか行動のノリが読みやすかった。言葉少なでも分かり合える、分かってなくても納得できる。
 まぁ分かったフリで寛容に見せる、若者なりの知ったかぶりも含まれていた気がする。萌の第一人者は僕だし、僕の第一人者は萌。
 若造なりに人ひとりを所有したみたいな気持ちで、正直優越感があった。

「数学がね、どうも進まなくて」
「んー、見ようか」
「良いの?ありがと」
「ん…明日、部活休みだし…うちで良い?」
「うん、お弁当持って行くね」
「(可愛い)」
 住んでいるのは隣町なので、僕らの下校は駅までだ。学校から一番近い駅まで歩きで、それぞれが反対方面行きの電車に乗る。だから彼女の家まで送る、なんてことが残念ながら出来ない。
 距離にしてみればそうでもないのだが、勉学にも励まねばならず時間が足りないのだ。
 うちは兄2人ともが東京の某有名国立大学に合格しており、上の兄は卒業して隣市でひとり暮らしをしている。次兄は在学中で、2人に倣って僕も、と期待されている。
 強いられてはないがプレッシャーが半端ない、毎日吐きそうになりながら竹刀と鉛筆を握っている感じだ。
 そんな僕の癒しは言わずもがなの彼女で…僕はそろそろ彼女と一線を超えたいと思っている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

つかまえた 〜ヤンデレからは逃げられない〜

りん
恋愛
狩谷和兎には、三年前に別れた恋人がいる。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

6年分の遠回り~いまなら好きって言えるかも~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
私の身体を揺らす彼を、下から見ていた。 まさかあの彼と、こんな関係になるなんて思いもしない。 今日は同期飲み会だった。 後輩のミスで行けたのは本当に最後。 飲み足りないという私に彼は付き合ってくれた。 彼とは入社当時、部署は違ったが同じ仕事に携わっていた。 きっとあの頃のわたしは、彼が好きだったんだと思う。 けれど仕事で負けたくないなんて私のちっぽけなプライドのせいで、その一線は越えられなかった。 でも、あれから変わった私なら……。 ****** 2021/05/29 公開 ****** 表紙 いもこは妹pixivID:11163077

私と彼の恋愛攻防戦

真麻一花
恋愛
大好きな彼に告白し続けて一ヶ月。 「好きです」「だが断る」相変わらず彼は素っ気ない。 でもめげない。嫌われてはいないと思っていたから。 だから鬱陶しいと邪険にされても気にせずアタックし続けた。 彼がほんとに私の事が嫌いだったと知るまでは……。嫌われていないなんて言うのは私の思い込みでしかなかった。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない

絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。

処理中です...