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めぐはめぐに負けない
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しおりを挟む「っ……あ、」
先端がハマると、萌がキュッと目を閉じて口を両手で押さえる。
「ごめん、痛いよね、」
「ら、いじょうぶ、」
「(焦らさない方が良いのかな)」
筋力に自信はあるので、腰の動きを力で制御するのは簡単だった。だから数ミリずつじわじわと侵攻していたのだが、一気に挿れた方が楽なのかもしれない。
しかしそれをこの状況で話し合うものなのか、分からなかった。萌の苦痛そうな顔も刺さるのだが、それを遥かに快感が上回っていたのだ。
「(なんっこれ、あったか…うわ、ぞわぞわする、ま◯こってこんな…やべ、出るって、これはヤバい、気持ち良い、)」
萌の口から悲痛な声が漏れるものの、止めるという選択肢は挙がらない。
いっそ早く済ませてしまえば良いのでは、と自分本位で動いてしまった。
「ふぐっ……ゔー…」
「あー…萌…」
「ゔー」
「…ごめん…結構入ったけど…どんな、感じ…?」
話に聞く処女膜は擦り切れたと思うが、萌の表情は晴れやかではない。
相性が悪いのだろうか、煮えた頭は色んなことを考えた。
「もぉ、痛いとこは、過ぎた感じ…」
「ん、ありがとう、萌…あの、好きだよ」
「うん…私も、好き」
ふにゃっと笑うその顔が、最高に可愛かった。凛々しく戦う姿ばかり見てきたが、こんなに色っぽく女性らしい顔をするなんて。
「萌、可愛い」
「あ、りがと…周も、カッコいいよ」
「(………あ、)」
ひとつになれて嬉しいな、しかし前のめりになり口付ける瞬間、萌は酷く辛そうな顔をした。やはり痛いのか、サアッと血の気が引いて、浅い所まで腰を戻す。
深い所は駄目だ、萌の様子からも実感する狭さからも、そう思った。
「…周?」
「…もうちょっとだから、」
「う、んッ…」
情けない、萌を気持ち良くしてやりたいのに叶わない。初めてだからなのか、僕が下手だからなのか。
悔しい、悔しいと思うのに腰は止められず…ついに決壊しそうになった。時間にすると短いと思う、けれどもう保たない。
「……あの、ごめん、その…もう終わっても良い…?」
「……あ、うん、初めてだもんね、そろそろ終わろっか」
すぐにでも射精しそう、という意味を萌は違うように捉えたと思う。「恋人としての責務は果たしたからもう良いだろう」、そう言われたように感じたのかもしれない。
ともかく初回の僕はその会話を最後に、ひっそり射精して引き抜いたのだった。
事後、ちゃかちゃかと服を着て昼食を摂った。昼過ぎには親たちが帰宅したので、早く済ませておいて良かったと思う。
恐らく、僕のセックスが淡白だと思われたのはこの初回が発端だ。
以降も僕は最大でも30分ほどしか気張らなかった。だって仕方ない、締まりが良いんだから数回擦れば果ててしまう。それを少しでも延長しようと、引き伸ばして気を散らして長持ちさせているのだ。
そして何より、深挿ししようとした時の萌の反応…「痛い」とは言わないが、体が反射的にガチっと強張るのが分かる。
なので僕は本当に根元まで挿れることが無いまま、あの日までヌルいセックスをしてしまった。なまじ筋力があるせいで、寸止め状態でのピストンも可能だったのだ。
セックス抜きでも僕はもちろん萌のことが大好きだし愛してるし他の女性は目にも入らないくらい大切なのだけど、長い人生だから性生活だって楽しめたら有り難いではないか。
だからあの日、ぼちぼち同棲を打診しようと考えていた時期に萌の方から指摘してくれて助かった。
萌は僕とのセックスに消極的なのだと思っていたから、僕を欲してくれていることが分かり本当に嬉しかった。
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