受話器の向こうに、恋。—君の声は、重くて甘い—

茜琉ぴーたん

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「大丈夫?吐いたのにあんなに呑んじゃって」

無事に自宅へと真澄を連れ帰った菫は、半分呆れていた。

 2軒目のバーでは真澄はまた強めのアルコールを入れて、さらにベロンベロンになっていた。

 改めてお祝いしてもらい良い気分になり、友人の前で菫にキスするなどの暴挙もあった。

「…チューはやり過ぎたかな」

「うん。恥ずかしかったよ」

「ごめん…人前でするものじゃなかったね」

そう言って真澄は菫ににじり寄り、酒臭い息を首筋へと吹き付ける。

「…ねぇ、依子さんとは何も無かったの?学生の時」

「無い、ウザ絡みしてくる同級生って認識でしかなかったよ…それでも女子だから優しくはしたつもりだけど……ね、このままお風呂入ろう?」

「…うん」


 真澄は入浴しながら、今日集まってくれたメンバーとの思い出エピソードなどを話して聞かせた。

 友人や恋人に恵まれたリア充ライフだな、と菫はフムフム相槌を打つ。

「ヨリが言ってた、キャピキャピっていうのも…よく分からないんだけどね。若いとはしゃぐこともあるし」

「真澄くんの元カノさんたちが皆そうだったみたいな言い方してたけど」

「いや、そんな網羅されてるはずはないんだけど…それはさておき、自分で言うのもあれなんだけど、女の子は彼氏と居たらキャピキャピとなっちゃうんじゃないかな?楽しいだろうし」

「キラキラしてる感じかな、カップルってそう見えるよね、楽しそうで」

「そう、それが…ヨリは気に入らなかったのかな…今日久しぶりに会ったんだけど、すごい女感出しててビックリしちゃった」

 今夜の依子は女スナイパーのような、スポーティーかつセクシーなスタイルだった。

 何か突き詰めてそうなったのか、それとも虚勢なのか。

「依子さん、おっぱい大きかったね」

「…ね、見ちゃうよね」

「見たんだ」

「見るよ、男だもん…だから、不用意に露出すべきじゃないんだよ、危ないでしょ」

もにもに、真澄は菫の胸に触れて語るものだから説得力に欠ける。

「式では大人しめのドレスにするね」

「…そうしてくれると有り難いな…中身は僕にしか、見せないで欲しい」


 ちゃぷんと水面が揺れて、静かになる。

 はむはむと舌を喰み、吐息が行き交い、糸が引いてプツンと切れる。

「ぷは…私、キャピキャピしてないけど、良い?」

「ベッドでは結構高い声も出るよね」

「…そうかな」

「聴きたくなっちゃった」

 
 伏し目がちに菫は笑い、真澄を受け入れる。

 この夜はしっとりと、真澄をいたわり密着して愛し合った。

 本当は問いただしたいことがあったのだが菫は言えずに、いつか指摘できる日が来ればその時に…と胸に秘めるのだった。
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