受話器の向こうに、恋。—君の声は、重くて甘い—

茜琉ぴーたん

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 種々の準備をして、いざ迎えた挙式の日。

 ガチガチに緊張した菫の喉は、残念ながら絶不調だった。

「んっ…んー…ヤバい、いつもより低い気がする」

「そういうのあるの?」

「あるの、分かるの。自分で聞く声が、籠ってる感じする」

 早朝の二人はラフな格好で、駐車場から式場へと歩く。

 前撮りは済ませているので今日は純粋に式を楽しむだけだ。

 式には二人のキューピッドである上司の大牟田おおむたや、友人アキヤマ・ムラカミ・イシノも参列してもらう。

 ちなみに依子だが、その後イシノと会食を重ねているらしい。

 しかしイシノ曰く"人助け"で、恋愛のアレコレではないそうだ。


「無理させ過ぎちゃったかなぁ…夜」

「それは関係無いと…思う…いつものことだし…」

 昨夜は挙式前夜ということでそれなりに燃えた。

 しかし長時間裸でいたことや薄着で寝たことは毎度のことなので、喉のコンディションには関連は薄いと菫はモゴモゴ言い訳する。

 悲鳴に近い喘ぎ声を出させるのも、喉奥から勝手に漏れる声で痛めた可能性も、あまり関係は無い。

「僕には分からないなぁ…いつもの可愛い声、可愛い菫ちゃんだよ」

 ここ最近は信頼を失くしかけていた真澄だが、菫から求められた改善点を意識することで回復傾向にある。

 菫を大切に想う気持ちが根底にあることは変わらないし、もっと恣意しい的な行動を取ることによって更なるイイ男になりつつある。

 自然体かつ狙ってジェントルマンになろうとしている、その変遷を菫に観測させて証明しようとしている。

 夜の方は相変わらずねっとりとした長時間プレイだが、菫の加減を見ながら変則的なことも試したりしている。

 例えば、今夜が新婚初夜なのでそこがゴールになるように宣言してポリネシアンセックスを始めたのに、昨夜1日早く挿入までしてしまった。

 ペッティングまでだと気を抜いていた菫の驚く顔と、「ドレス着るんだからキスマーク付けないでぇ」というお願いに真澄は大層萌えた。
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