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終章・深い愛
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しおりを挟む「はー…疲れたぁ」
就寝前、ダイニングで菫はボヤく。
時短勤務にしてもらっているが体力的にキツく、行き届かない家事に不甲斐なさを感じている。
結婚から2度の産休と育休を経験して今に至る間に、菫と真澄は店舗間でトレードされた。
大きい本店と中規模な北店とでは、作業量にも差がある。
本店の菫が休むのなら穴埋めが欲しいと上同士が掛け合って、北店から真澄が本店へと異動したのだ。
そこで当初は粛々と事務をこなしていたのだが、元々の素養や能力を買われ、すぐに売り場に立つことになった。
ブランクはあったものの、見込み通り真澄は営業力を発揮した。
報奨金も付くのでお給料が以前よりアップし、忙しないが充実した日々を送れている。
菫は育休が明けたら比較的緩い北店にて、時短業務で仕事復帰を果たした。
追いやられたような寂しさはあったものの、作業量と責任の重さを考えれば順当な人事であった。
おかげで菫の気も楽になり、まぁなんとかこなせている状態である。
けれどキャパオーバー気味なところもあり、1日の終わりにはこうしてだらんと溶けてしまう。
「うん、菫ちゃん、お酒呑む?今日はグレフルサワー」
風呂上がりの真澄は冷蔵庫から缶チューハイを1本出し、伏せたグラスに手を掛けた。
「んー、5%?」
「うん。炭酸で割って半分こしよう」
真澄は飲みかけにしていた炭酸ジュースのペットボトルも取り出して、グラスに半分ずつ注ぐ。
「どうぞ」
「ありがとう」
シュワシュワと泡の立つグラスを受け取り、菫は卓上のプリントを片付けた。
家と保育園と会社の往復、そして学校行事と目まぐるしく1日が過ぎて行く。
参観日だ急病だと忙しなく、しかし段々と自分の時間を持てるようになってきている。
「…菫ちゃん、結婚記念日に乾杯」
「乾杯」
二人は静かにグラスを合わせた。
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