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しおりを挟む「そこ狭いから、この車やと入られへんよ。駐車場探しとくから、先歩いて行ってきたら?」
「ハァ?使えんなぁ、ここ停めときゃええやんけ」
「警察きたらヤバいやろ。ほら垣内と行ってき、お嬢」
「…うん」
垣内は先に降りて小さく舌打ちをし、後ろのドアを開けて雅を降ろしてやる。
和久は車を出して、二つ先の十字路でパーキングを見つけたのか左折して行った。
「…お嬢、金持ってるか?」
「は?奢ってくれるんやないん?」
「いや、そのつもりやってんけど、洒落た菓子は高いねやろ…?小銭が…」
ポケットの小銭入れを振って音を聞き、垣内はなんとなくの残額を予測した…ドーナツ一個買えるかどうか、微妙なラインである。
「あ、あれやな」
メイン通りの中程にそのドーナツ屋はあり、注文カウンター前には2組ほど待っていた。
列の最後尾へ並び、これくらいならスイミングに間に合いそうだと垣内はその旨和久へメッセージを送る。
「電子マネー使えるやろか、聞いてみよ。わく兄のは何にする?ドーナツなら運転しながら食べられそう、」
店の壁面に貼ってあるメニュー表を見ながら、雅は懐を探る垣内へ尋ねる。
「あいつは食わへんやろ、お嬢は好きなの選びや。あ、よっしゃ!千円出てきたで、好きなんトッピングしや、」
「うん…」
にわかに活気付く垣内を横目で盗み見して、少女は顔を隠しクスリと笑った。
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