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しおりを挟む商店街は平日ということもあって人もまばらで、若者はここと数件先の喫茶店に居るくらい、あとは地元客が夕飯の買い出しに訪れているだけの人出の少なさだった。
「車、停めたから和久も向かってきてるわ……第二パーキングね」
「そう、じゃあ自分で買うやろか?でもはや兄よく知っとったね、ドーナツ屋さんができてるやなんて…」
少女は上目遣いで垣内を見つめ、男の女子学生並みの耳の速さに感心する。
「いやぁ、この前寝たお姉ちゃんから聞いてん。人気らしいよ、」
「…寝たって?」
「お泊りよ、……お子ちゃまには分からんやろ」
「…ふーん」
「なに、あかんかった?」
「別に…好きにすればええけど…」
「ん…あ、お嬢こっち、」
商店街の後方からフラフラと、咥え煙草の男が自転車で迫ってくるのに気付き、垣内は雅の肩を押して自分の腹の前に移動させた。
「なに?」
「轢かれたら危ないからな」
「轢かへんやろ…」
普段はおちゃらけているのに、たまにこうしてボディーガードのようなことをしてくれる、雅は照れて再びメニュー表を見上げる。
「わからへんよ…お、前詰めや」
「うん…」
肩に乗せられた垣内の手の感触にじんじんとこみ上げるものがある、雅は頬を染めはにかむも幸い彼からは見えない。
何を隠そう雅嬢は、この垣内にほんのりとした恋心を抱いているのだ。
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