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ウズ編・瀬戸内ひとり旅
10(最終話)
しおりを挟む1年後。
全国区は無理でもせめて関西でメジャーになれたら良いな、そんな想いで練ったエピソードトークは存外に受けて好感度はだいぶん上がった。
恋人を大事にする芸人は女性受けも良い。今では俺たちネヤガワラのネタは以前とはまるっきり逆の路線…女性賛美みたいな方向へ走っている。
テレビではそんなことをして単独ライブではメタメタに下品なネタをして新規ファンが減って古参が喜ぶ、変わったようで変わっていない現状に俺たちは案外満足している。
名が売れて忙しくなってくると志保は「そこまで急激に売れてくれなくても良かったのに」なんてヘソを曲げたりもしたが、俺としては期限以内に約束を果たすために全力だったのでまぁまぁと宥めるしかない。
レギュラーも好調、たまに東京に行っては爪痕を残し帰って来る。
向こうに知り合いも多いしここまで燻っていたのも無駄ではなかったと思えた。
そしてとある吉日。
「ナリ、ネクタイ曲がってんで」
「ウズもな」
「おい志保のドレス見たか?べっぴん過ぎて目ぇ潰れるか思たわ」
「うちの鳴ちゃんのが可愛いわ」
「…あんなつるぺたチビによう欲情すんなぁ」
「あ?ろくに喘がへんマグロ女よりゃええ反応しますわ、」
「ロリコン」
「粗チン」
「ぁあ⁉︎見したろかコラ、俺のマグナムを」
「見たないわ、阿呆…おい、開くぞ」
教会の大きな扉がギィと開く。
式場のスタッフさんも「こんな演出は初めてです」と驚いていた。ダブル挙式さえ珍しいのに花嫁を待たせて『新郎入場』をするなんて。
けれど俺たちがただぼうっとステンドグラスを背に待ちぼうけしてる姿は手持ち無沙汰でみっともなく感じたのだ。
そしてこの大きな扉から相方と揃って登場できたらどんなネタ番組よりも気持ちが良いのではないかと…下見の時点で意思が通い合った。
「…緊張すんなぁ…ウズくんよ」
「スベらへんから平気やな…ほい、行こか、ナリくんよ」
さぁ一世一代の大舞台。
出囃子はいつもの曲ではないけれど…バージンロードの先に並ぶ花嫁2人目指して、俺たちは仲良く足を踏み出す。
おしまい
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