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いざ復讐・横浜

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「…その子は、どんな子だった?」

僕は相槌をやめて、あおいについて掘り下げる。

 「良い子だった」とか「可愛かった」とか、ポジティブなワードが出て来ればまだマシかと思えた。

 もっとも、名前が出た番手を考えれば、そこまで思い出深い相手でもなさそうだが。


 浜田はまだはまた「うーん」と眉をしかめて、

「特に…何の特徴も無い子です」

と苦笑しやがった、その瞬間。

 これまでの家族の時間や触れ合いや、娘が生まれた日の朝食のことなんかがフラッシュみたいにパパパッと脳裏をよぎり。


「てめぇコラ、」

僕は浜田の胸倉を掴んでいた。

 マリアさんのお父さまがしたのと同じように、力は足りないがショーケースが無い分体と顔を目一杯近付けて。

 そしてお国なまりを添えて。


「えっ」

「うちの葵が、なんも無い?えらいいちびってくれとんな。そもそもが人んのムスメを何呼び捨てにしてくれとんねん、敬称付けんかい、アホンダラァ!」

「ヒッ」

浜田は雰囲気の変わった僕にひるむ。

 宮前みやまえくんも僕の関西弁は聞いたことが無かったから、僕を止めながらも物珍しそうに見つめて来ている。


 悲しいな、葵は、うちの娘は本当に使い捨てみたいに遊ばれたのだ。

 記憶にも残ってない、刀のサビにもされてない。

 そして浜田は女性を肩書きと下の名前で管理しているのだろう、苗字ははなから憶えないらしい。


「ほんなら、その葵ちゃんの苗字は憶えてるか?どないや?」

「お、憶えてないです」

「しやろなぁ…うん…教えたろ、あの子なぁ、『嬉野うれしの葵』、ワシと同じ苗字や…分かるか?」

「は、い……あ、」

ここで浜田も僕と葵の関係が予想できたらしい。

 だから何だという話だが、傷物にした女の父親が出て来れば、こんな軽薄な浜田でも気まずさは感じるみたいだ。

 たぶん、慰謝料とか賠償とか、事態を大きく捉え始めたのかもしれない。
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