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調査・皇路本店
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しおりを挟む「あらァ、お久しぶりです」
事務所にて声を掛けてくれたのは小笠原奈々(36)。
僕が言うのもなんだが、170センチを超える長身に爆弾サイズのバストを抱えた目立つPCフロア長だ。
彼女は関東からこちらへ単身赴任のバツイチ・シングルマザー、実家には17歳になる娘さんがいる。
軽く近況報告をして部門のスタッフの話を聞き取ったりして、僕は一応彼女にも娘のことを尋ねてみることにした。
「小笠原フロア長、ブランドの浜田くんって居たじゃない、何か…印象とかあったかな」
「浜田くんですか…?」
「良いこと、そうでないこと…どっちでも良い」
「……」
彼女はしばらく無言になって、長いまつ毛をゆっくり揺らして僕の方を真っ直ぐ見つめる。
「人として…品が無いとは思いました。勤務中に女性の品定めをして、お客さまに個人的に連絡を取り合っていたので…注意したことがあります」
「え、そんなことしてたのか⁉︎」
何ということだ、仕事中に交流していたなんて…つくづく僕は上辺しか見えていなかったということか。
勤務中にプライベートな連絡先を交換するなんて私的なことは控えるべきだ。店を背負ってナンパするなんてけしからんし前代未聞だ。
もし相手が気分を害し「ムラタは仕事中にナンパを推奨する企業なのか!」なんて声高に叫ばれた日にはもう…青ざめた僕に小笠原フロア長は続ける。
「気安いと言うか…その、同類というか軽そうな女性客に…アプローチしてたみたいです。なので苦情はまだ聞いてませんが…指摘したら態度は悪くなりましたね。何となく本性は見えてたので平気でしたけど」
「そうか…」
「すみません、ご報告すべきだとは考えたんですが…」
「いや、被害を防いでくれただけでもありがたいよ…」
彼女はきっと僕の娘が浜田の毒牙に掛かったことも知っているんだろう。僕が浜田を処分するにあたり私情が入ってしまうことも加味して黙っていてくれたのかもしれない。
結果的に浜田は関東へ転勤した訳だし、娘から離れたことで完結したならわざわざ掘り起こすことも無いと考えてくれたのだろう。
「…管理職の立場で言う事じゃありませんけど…あァいう男は、いずれ自爆します。広く浅くしか女性を大切にできないんですもの、自身もそれだけの愛しか貰えず淋しく死んでいきますよ」
「辛辣だね」
「ふふッ…バツイチの私が偉そうに言えませんけどォ」
少し胸のすく思いがした、自虐までして浜田を腐してくれる彼女は大人だ。
「そうか…ところで小笠原フロア長は、困った事なんかは無い?」
「特に…公私共に充実してますわ」
「そうか、もしご実家に戻りたいことがあれば相談してね、だいたい3年周期で転勤になるけどもうこっち長いじゃない?管理職はどこも不足してるからポストは向こうに掛け合って用意するよ」
「まァ、お気遣いありがとうございます」
見知らぬ土地に単身で飛び込んだ彼女も上手くやっているのか、それは良かったと笑顔で別れる。
慣れないことやストレスが重なると急にホームシックにかかったりするものだ。心身に異常をきたして離職した者はこれまで何人も見てきた。それを支えるのは家族だったり恋人だったり趣味だったりするのだが…やはり出身地や慣れた土地で働くのが最良なのかなと転勤制度自体へ疑問も浮かぶ。
「(まぁ、いちいち希望勤務地を聞いてたら人員のムラが出来るから難しいんだけどねー)」
喜んで転々とする者もいれば激戦区と呼ばれる大型店へ「是非」と挑戦したがる者もいる。売りたくない物を売るくらいなら転勤した方がマシという浜田みたいな者もいる。
もしかして浜田はこの周辺での女漁りに飽きたから転勤したのではないか、そんな説も無くはない。
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