跳ね馬の恩返し—元ヤン娘は商店街の華になる

茜琉ぴーたん

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「……」

「恩返しで萩原さんのキッチンカーに通って、話題も無いから昔の話して…武勇伝とも思ってないけど、ありがちなヤンチャアピールしちゃって。萩原さんに会えなくなってから、自分のことを振り返った時に…なんか痛々しいこと言っちゃったなって思って…あは、そりゃ、関わりたくないよね、ごめんね」

 思っていたそのままを言われて、和樹は小さく繰り返し頷いた。

「うん…」

「私、名刺も配れない根暗で、肝は据わってると思うんだけど対人関係ヘタクソで。挽回しようとそういう話しちゃって…変だったよね、ごめんなさい」

「とりあえず…思ってた不良よりはソフトで助かったよ」

和樹は真綾を安心させるように、きちんと彼女へ向いて安堵のため息を吐いた。

「そう?」

「うん…ここの商店街さ、車とバイクは業者以外は乗り入れ禁止なのな。それを深夜に暴走する奴らがいてさ、落書きとかも。何年も前から、取り締まってもらってんだけど…年々やからが生み出されてんだろうな、減りゃしない」

 この商店街はほとんどが個人営業で、夕方の5時には閉まってしまう。

 酒を提供する飲食店は夜間も営業するが、11時には営業を終えて通りはシャッター街に変わる。

 そのシャッターにスプレーで落書きをしたり、頼んでないアートを描いたり。

 人気の無い直線は気持ちが良いのだろう、猛スピードでバイクを走らせて騒音も酷かった。

 和樹はそんな身近な不良の所業を知っているだけに、真綾への抵抗が強かったのだ。

「それ、私が高校生の時も話には聞いてた。『良いコースがある』って、聞いたらこの商店街で…私は地元だし、嫌だから行かなかったけど」

「地元じゃなかったら行ってた?」

「どうだろ…分かんない」

「そっか」

 最低限の倫理観はあるのだろうが、暴走行為そのものを否定しなかった辺り和樹とは価値観が違う。

 地元を汚したくないポリシーは、まさに不良の持つ『都合の良い正義感』だと感じた。

 そして、真綾がやたら「恩」と口にするのは不良が持ちがちな義理堅さの現れなのかと納得できた。
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