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しおりを挟む「もう、その人達と付き合いは無いけど…非常識な行動してたんだよね、私…」
「そこは俺が裁けるもんじゃないから…白銀さんが反省してるんなら良いんじゃない?大きなケガもしてないみたいだし」
「うん…危ないことはあったけど、そのスリルとかも楽しんでて」
「…親御さんとは、関係は悪いの?」
無垢な子が悪に染まっただけなのか、家庭環境に難があるのかと和樹は斬り込む。
「ううん、むしろ学校に行って、友達ができて…外の世界に出られたから喜んでた。まぁ、授業出ずに留年して5年も高校通っちゃったんだけど」
「今は?」
「関係は良いよ。妹も良い子でね、大学生になって…私はお手本にはなれないけど、姉妹仲も良いんだよ」
それが全て真実かは不明だが、屈託の無い笑顔に和樹は父性を刺激された。
和樹にも妹がいて、高校卒業後は都心へ出ていて滅多に会わない。
兄に甘えたりする子ではなかったから、真綾の構ってな態度が新鮮で可愛らしく感じた。
不良問題がある程度消化されたから、心のつかえが取れたようで余計にだった。
「そう…なんか、俺、白銀さんのこと…過剰に避けてたわ。ごめん」
「…あ、まぁ、ヤンキーアピっちゃったし、当然だよ」
真綾はもじもじと、諦めたように笑う。
昼に避けていることを認識した上に、さらにおかわりをされたから居た堪れなかった。
しかし和樹はゆっくり立ち上がって、
「また、食べにおいでよ」
と真綾の頭にポンと触れて、玄関扉を開く。
「……」
「あ、ごめん、つい」
「ううん、気にしない…」
「白銀さん、雨上がりそうだよ。少し晴れて来た」
「あ、そう…」
和樹に倣い空を見上げて、真綾も玄関を出て停めてあるバイクの側へと歩く。
「白銀さんはロコモコ、好きなの?」
「うん、萩原さんの作ったロコモコ丼、美味しいし…」
例えそれが牛丼だろうがカツ丼だろうが、買いに行くし…真綾は脳内で呟いて、和樹の鈍さを少し恨んだ。
「そうか、親父のこと、ほんとありがとうな。またコロッケ買ってやってよ」
「うん…お、お大事に」
真綾は横髪を耳にかけて、鮮やかなフルフェイスのヘルメットを被る。
「(お、)」
白い指が黒髪の間を滑る仕草が妙にセクシーで、和樹はしばし固まった。
パチンとバックルをはめて、真綾は颯爽とシートに跨る。
そして一気にエンジンをブォンと蒸して、和樹をビビらせた。
「うるさいよね、ごめんね」
「いや…カッコいいな」
「えへへ…ちょっとカッコつけちゃった」
シールドを開いて、照れたように真綾は笑う。
不良アピールだったりヘルメットの柄だったり、厨二病を長引かせているとも取れる。
でもそれを恥じたり反省したり出来るのだから、これから良い子になるのだろうと…和樹は教師みたいな気持ちで見守った。
「気を付けてな」
「うん、またね」
「うん」
真綾は左右を確認して、ゆっくり市道へと出て行った。
長閑な商店街に似つかわしくない轟音が段々と遠ざかる。
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