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しおりを挟む「…悪いことだとは思わなかった。呼ばれたら嬉しかったし…毎回じゃなくてね、抜け出して遊ぶ日とお部屋デートの日があったっていうだけで…男らしさにドキドキしてた。でも卒業するからサヨナラ言われて、ゴネたらバイクくれて…でも名義変更とかあるじゃない?あれも書類とか人を介してやり取りしたの。よほど、私に顔合わせたくないんだって思った」
「ふむ」
「…今考えたらね、カッコつけな人だったなって思う。漫画の中のツッパリを演じてるみたいな、変にキザな感じ」
「それも分かるなぁ、典型的な古いタイプのヤンキーを演じてる感じした」
角田はオールドスタイルのツッパリに憧れがあるのだろう。
物言いや服装も含めて、模して満足している感があった。
それが逆に滑稽というか、大人ぶった子供のように思えて和樹には思い出しうすら笑いの対象になりつつある。
「…別れる時もね、『俺にはお前を幸せにはしてやれねぇ、新しい男見つけな、あばよ!』って、グッドラックポーズって言うの?こう、して、バイクで駆けてった」
真綾は右手人差し指と中指を立ててクロスさせ、顳顬に付けてピッと手首を倒す。
クールガイのイメージなのか、そこから角田は音沙汰無かったらしい。
「ふふ…うん、うん…あ、少年院ってのは?」
「中学の時みたい。度重なる補導の末って聞いた」
「罪状は何なんだろうな…真綾は、それについてはどう思う?今は」
「…嫌だ。私、学校が嫌で中学不登校になって、不良に憧れて…こんな感じになっちゃったけど、今は…人を傷付けてカッコつけてるのは最高にカッコ悪いと思ってる」
下を見て、真綾はバツ悪そうに唇を噛む。
若かりし日々を悔いているなら良し、どうせやり直せる訳もない。
和樹はふにふにと真綾の頬を揉んで、
「そう思ってるなら良い。過ぎたことは仕方ないしな、これから社会に恩返ししていこう」
と再度抱き締めた。
「…私、萩原家の重荷になっちゃうかなぁ?」
「ならない、不登校から持ち直してちゃんと働いてんだから」
「ありがとう、和樹くんに出逢えて、本当に良かったぁ…恩人だよ、本当に…」
和樹の肩は真綾の涙でぐしょぐしょになり、しばらく冷たかった。
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