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しおりを挟む数日後、準備万端の和樹はスーツを着て角田の勤め先を訪ねた。
事前にアポイントは取っており、昼休みを利用して会うことになっている。
「行くか」
事務所に入り、和樹は応接室に通された。
事務職の女性から茶を出されるも、慣れない背広がむず痒く落ち着かない。
少し待っていると作業着の角田が入って来て、開口一番
「あ?真綾はどうしたんだよ」
と不服そうに吐く。
「関係ありませんから。代理人の萩原です。あ、今回の話し合いは録音させて頂いておりますのでご了承下さい……本日は、こちらをお持ちしたんです」
和樹はガラステーブルの上に、数枚の書類を広げる。
小難しい文言が並ぶ書面だが、和樹もテンプレートを写しただけなので芯から理解は出来ていない。
そして後から不備が見つかってもいけないので、あらゆる種類の書類を持って来た。
「何だよ、これ?」
「お世話になってる行政書士の先生にお手伝い頂いて、作成したものになります。角田さんは譲渡したバイクのお金を払えば白銀真綾さんから手を引くと仰いました。その条件はお変わりありませんよね?」
「あぁ?ね、無ぇよ」
「良かったです。そこでこれを…お確かめ下さい」
和樹はバッグから、封筒を取り出して書類の上に置く。
封筒には地元銀行のロゴが入っており、角田も当然それが何かはすぐに察したようだった。
「なん……おい、」
「100万と8000円あります。あのバイクの、新車購入時の代金です」
封筒の中身は大量のお札で、角田はぷるぷる手が震え出す。
やはり金銭の話は脅しだったのだろうか、自分で言い出したというのにえらく萎縮してしまっていた。
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