跳ね馬の恩返し—元ヤン娘は商店街の華になる

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「しんしゃ…」

「私、バイクには疎うといので調べました。知り合いのバイク屋さんにも協力してもらって…貴方、プレミアと仰ってましたけど、量産品なので順当に値下がりしてました。さらに言うと、白銀さんがバイクを譲り受けた時点で新車価格より下がってます。さらにさらに言えば、貴方があのバイクを新車で入手していたのかどうかも不明です。高校生でなくとも100万円は大金ですし…白銀さんが譲り受けた時の、バイクの時価は分かりませんでした。だったら、と…メーカー希望価格の、つまりは新車発売時の価格を、ご用意させて頂きました」

「え、あ、」

「白銀さんにとっては痛い出費ですよ、しかしこれで縁が切れるならと…頑張ってくれました。ダラダラと交渉を続ける気が無いんです。分かりますよね、終わらせたいんです。良く分かりもせずバイクを貰ってしまった白銀さんにも非はあるでしょう、しかし彼女はまだ若かったんです。大人になった今、高価なものを簡単に譲り受けてしまったことを後悔してますし、是非に支払いたいとのことで…文句を付けられないよう、この金額をご用意頂きました」

「……」


　卓上の金は、言わずもがな和樹の貯金から出ている。

　真綾に言えば心配するだろうし、本人にもそこまで蓄えが無いと踏んでいた。

　なので差し出がましいとは思いながらも、和樹は自分の金を使うことにしたのだ。

　交際したばかりの女性にここまで貢ぐなんておかしいだろう、それも分かっている。

　友人が同じことをしようとすれば「考え直せ」と止めるだろうし、説得するだろう。

　けれど純真な真綾の笑顔と生活を守りたく、和樹は決断したのだ。

　これを払うことで真綾は和樹に頭が上がらなくなるだろう。

　ご両親だって、申し訳なく感じるだろう。

　まるで身請けのようだ、金で真綾の自由を買い取るみたいに感じる。

　けれど自分を慕って尻尾しっぽ振って付いて来る真綾の一大事を、他人事と見過ごせない。

　ぼんやり創って来た繋がりが絆に変わった、綺麗事で言えばそんなところだった。

　まだキスしかしてない清い仲、しかし和樹は真綾への責任を持ちたいのだ。

　駅前で声を掛けて関わってしまった、それだけで自分を慕い敬ってくれる真綾に報いたいのだ。

　馬鹿みたいに「恩返し」を繰り返す女性を守りたい、この気持ちを愛だと信じることにしたのだ。