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しおりを挟む「ありがとうございました、プラカード重かったですよね、すみません」
最後尾の客からプラカードを受け取り、真綾は愛想を振り撒く。
注文を取ったらヒサシに貼ってあるメニュー表を剥がし、幟を片付けに飛び出して行く。
疲れているだろうにフットワーク軽く、声を掛けられたらペコペコと頭を下げる。
「お待たせしました、ロコモコ丼です。ありがとうございました!」
和樹は最後の商品を提供したらすぐに『本日は終了しました』の看板を立てて、ヒサシを折り畳む。
「売り切れで残念がってるお客さんいたよ、申し訳ないね」
幟を担いで、真綾が車に戻って来た。
「ん、ごめんな、外の対応任せちゃって」
「ううん、平日営業のチラシ渡したから、また来てくれるかも」
「真綾…また名刺配りしたら、今度は自分の力で配り切れるんじゃないの?」
和樹はちょっと意地悪心でそう聞けば、
「んー、どうだろ。私、和樹くんのために頑張ってるところあるし。自分のためだとここまでしないかもね」
などと言う。
「そうか…頑張り屋だな」
「あはは、褒めて褒めてー」
軽口のつもりだったのだろう、真綾は和樹の反応を待たずに幟を車の端に寄せる。
そして他の作業は無かろうかと振り返り…すぐ後ろに立っていた和樹の広い胸にビクッと驚いた。
「ひゃっ」
「真綾、」
「あ、ごめん、そっちの片付け、他に…」
ただでさえ狭い車内、小柄な真綾でなければすれ違うのも難しい。
けれど和樹は端に寄りも避けもせず、脚を折り姿勢を低くした。
「真綾、さっき言ってたろ」
「うん?何、」
「…『俺が欲しい』って」
「…あ、あれ、緊張から来る冗談で…開店前の変なテンションで、冷静になったら恥ずかしくなっちゃって、あは、あはは…」
「やるよ、俺をやるから…俺にも真綾をくれ」
和樹は片膝を付き、真綾の腹に顔を埋める。
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